姫と執事の話 4 それから一時間ほどたってから、リーシャの部屋に呼ばれことの一部始終を聞いた、アリアと同じくリーシャ王女付きで執事のサンジェスは、眉間のしわをこくしたままで口を開いた。 「それで、何か俺に出来ることはあるのか?」 「いいえ。とくには。しかしご安心下さい。調べたところ、危険なものは見当たりませんでした」 レイの言葉に、ゆっくりと肩の力を抜く。 「解毒の薬も作れないこともありませんが、完成する前に元の姿に戻られるでしょう」 「時間はどれくらいかかるんだ?」 そうですね、と窓の外に目を向け、太陽の位置を確認する。 「月が一番高くにくる頃には戻られるかと思います」 「そうか」 サンジェスの眉間にしわがなくなったのを見て、アリアがポン、と手をうった。 「というわけでサンジェスさま。後はお任せいたしますっ」 「……はっ?」 「そうですね。少々心苦しいですが、私は姫ぎみのお側を離れられませんし……」 「ザンネンながら、わたしは今日やることが多くて……」 「だからってなぜ俺が……!?」 「サンジェスさまの仕事は部屋で出来るものばかりですから」 だが……! と詰め寄ると、アリアは笑みを崩さぬままに声を低くした。 「アナタ。姫を一人にするっていうの? お体が小さくなって“心細い思いをなさっている”姫を」 それには返す言葉もみつからず、ふいとリーシャに視線を向けると、その目が不安そうにゆらめいて見えた。 「――……わかった。ただしお前の仕事が終わるまでだからな」 [*前へ][次へ#] [戻る] |