姫と執事の話
2
少しすると、ずっとしゃがみこんで見つめていたために、足が痺れてきてしまった。
仕方がないから座ろうとふと視線を下に向けると、中心部分が赤く染まっている、白い花を見つけた。
「…………」
手に取って、ジッと眺める。
そしてそれを、サンジェスの左耳の上に挿してみる。
そっと手を離すが、花は落ちる様子がない。
やった、と顔を綻ばせた瞬間、
「なにをやってるんですか。姫」
サンジェスの黒い瞳と目が合った。
「うひゃ!?」
思わず尻餅をついてしまった。
先に立ち上がったサンジェスが、眉をひそめながらも、大丈夫ですか? と手を差し出す。
「だいじょうぶだ。少し驚いただけだから」
「そうですか」
ふう、とサンジェスはかるく息をついた。
「あの……サンジェス」
「なんですか?」
「……いや、その……なんでもない」
「そういえば姫。今はお勉強の時間だったはずでは?」
「……そうだが」
「でしたら、早くお部屋に戻って下さい」
「……わかった……」
言いながらも、チラチラと、サンジェスの耳元から目が離せない。
それを何度か続けていると、いよいよサンジェスの眉根が不機嫌に寄ってきたので、慌てて部屋に戻るために走りだした。
……まぁサンジェスのことだ。
きっと、すぐに気が付くことだろう。
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