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僕の初恋の初恋。
出逢いたくなかった彼へ(3)


あの神崎くんが僕と一緒に昼食をとっている。
その噂(うわさ)は、一週間も経たないうちにクラス中に広まっていた。特に女子の間では少々誤解もされているようで。
あぁ・・・視線が痛い。



「─────い、おーい」
「・・・ぁっ、はい!」
「あ、はい。じゃなくてさぁ、さっきから全然話聞いてないじゃん。俺の話、そんなにつまんなかった?」
メロンパンにかじりつくその横顔が、呆れたふうに僕から視線を外す。

あんなに聞きたかった彼からの言葉なのに、何でだろう。
全然頭に入ってこない・・・。

「てるとしくんもなんか言ってぇ。さっきから俺一人で喋(しゃべ)ってる気がするんですけどぉ」
不満気に口を尖(とが)らせて、残りをパクリと頬張(ほおば)った。

「・・・」
「え、何て?」
「僕の名前・・・あき、とも・・・」
「そう、あきともくんね・・・覚えておくよ」

あぁ、初めてかも。
家族以外の人に、名前で呼んでもらったの。



輝く智と書いて、輝智。
ひらがなで『あきとも』と書く。
明るく賢い子に育ってほしいという親の願いに似ても似つかない僕のこの根暗さ。輝く要素が一体どこにあるって言うんだ。
名前に負けてる・・・。
もういっそのこと、『てるとし』でも良かったのに。



名前を伝えてからというもの、彼はやたらと僕に絡んでくるようになった。
そのせいで最近、新しい発見もしてしまった。



「チッ、あの女。先週は向こうから誘ってきたくせに既読スルーとか、マジないよな」

そう。
実は彼は性格がなんというか・・・悪い。しかもかなりだ。
どうしよう。返す言葉が見つからない・・・。

ケータイをいじって、隠すことなく僕に共感を求めて過去のメッセージの数々を見せてくれる。
ろくに人と話さない僕に、どんな返しを求めているのやら・・・。



「そっちは何かないの?」
「・・・ぇ」
「だから〜、彼女とかいないの?
・・・て、いないか」

そりゃあ・・・まぁ。
ろくに友達もできない僕に彼女なんているわけないじゃないか。

「まぁ、いいんじゃない?でも一つ覚えといて。女の嫉妬より男の嫉妬の方が酷いってこと」



ふと、先週のあの光景が頭を過(よ)ぎった。
肩の上の悪魔が囁(ささや)く。
勘違いするな。彼はただあのことを言われたくないだけなんだ。自惚(うぬぼ)れるな、と。

わかってる。わかってるよ、そんなこと。
それを証明するかのように、今では周りから煙たがれる毎日だ。

もう・・・散々だ。



「い、言わないですよ?僕・・・」
ケータイをいじるその綺麗な指先が動きを止めた。
一瞬、シンとなった空気に慌てて俯(うつむ)く。



「ん?何のこと?」
「・・・」
そう、だよね。
「・・・な、なんでもないです」
やっぱり、そうなるよね・・・。

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