僕の初恋の初恋。
出逢いたくなかった彼へ(1)
あまり使われていない屋上まで階段を上っていき、途中、トイレに寄ってハンカチで顔を押さえておく。
明日には腫(は)れも少し治るかな・・・。
さすがに今日の今日は部活には行けないけれど。きっと明日にはもう癒(い)えてるだろう。
一応美術部に入ってはいるけれど、別に部活に行きたい訳じゃない。絵を描くのも、そこに色を重ねていくのも苦手だ。
美術部に入ろうと思った唯一のきっかけは、サッカーの練習風景を見るには美術室が最適な場所だって気づいたから。ただそれだけの理由なんだ。
それはヒリヒリと痛む頬を押さえながら、最上階へと繋がる踊り場まで足を踏み出した瞬間だった。
窓から差す光を避けるように重なり合う二人の姿がそこにあった。
一度目に焼き付いてしまったそのあまりの光景に、一瞬足がすくむ。
─────敢(あ)えて後悔することがあるとすれば、それは二つほど。
一つ、気を緩めて彼の斜め後ろに座ってしまったこと。
二つ、思い焦がれていた彼の、こんな恐ろしい姿を見てしまったこと。
気がついたら僕は、その場から離れることに無我夢中で走り出していた。
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