春を待つ君に 咲き急ぐ幼き蕾(1) 彩吹の言葉を合図に、舞菜はサイドテーブルの引き出しへと手を伸ばし、予備の吸引機を立てて置く。その一連の動作を見ながら、彩吹は緊張に喉を鳴らした。 折り重なるように身体を伏せて、まるでその存在を確かめるかのように、瞼に。頬に。唇に。何度も何度も、キスを降らせた。 「彩吹・・・ボタン、外すね?」 耳元で甘く囁いて、縦に連なる寝巻きのボタンに、舞菜の手がゆっくりと降りてく。 ひとつ、ふたつ、とそれに手を掛けては、硬直する小さな身体から緊張を解そうと、耳朶をそっと噛んでやる。 「んっ」と、一瞬。 堪らない声を上げて、ボタンを外すその手を一層急(せ)かした。 「─────やッ!あっ、・・・んんっ」 両手ではだけた寝巻きを押しやると同時に、前触れもなく、露(あら)わになった乳首の先端を舌で舐め上げてく。次に、丹念に濡れたそれで弧を描(えが)くように転がしてやると、口内で厭(いや)らしく形を変えていくのがわかった。 呼吸のリズムで軽く上下する胸元。 緊張のせいか、いつもより呼吸が速い。 「苦しい?少し、休憩しようか」 スッと体温が離れていく感覚に、舞菜の服の裾を強く引っ張った。 「彩吹・・・」 もう、これ以上離れていかないで。 どこにも行かないで。 そばにいるのに泣きたくなって、唇を噛締めたままに彼を見上げた。 意地を張るのも、優しさだけを受け止めるのも、もうイヤなんだ。 「あ〜、泣かないで。どこにも行かないから」 舞菜が困ったように笑って、ぼくの両手を自分のそれで包み込む。 伸ばしてきた手が優しく頬を撫でて、ゆっくりと顔が近づいてきた。 そのキスに応えるように、彩吹も降りてきた唇と自分のそれを重ねてく。 離れる際、枕元にひとつだけ残る淡いオレンジの光の中で、透明な糸が引かれた。 直後、舞菜の手元が再び降りてくのが視界の隅に映り込む。 触れられて、ビクンと腰が跳ねたのが自分でもわかった。 こんなみっともない姿を舞菜に見られてる。 そう思うだけで、じっと見下ろす舞菜の視線に耐え切れなくなって、恥ずかしさに顔を覆った。 「んっ・・・、っ」 身体に優しく触れ、キスを落とし、その緊張を解(ほど)くようにそこに触れてく。 腰に。下腹部に。太腿(ふともも)に。 徐々に降りてく指先が内腿(うちもも)を撫でた瞬間、今までにない緊張が全身を駆け巡った。 「な、に・・・ッ?・・・やあっ、ンン─────ッ!」 [*前へ][次へ#] |