SoulCalibur's Novel ★僕のパートナー 「――ねぇ、ジーク…待ってよ」 「早くしろ。置いてくぞ」 自分の身の丈ほどある巨大な剣を背負いながら青年――ジークフリート・シュタウフェンという――は足早に岩肌の剥き出しになった道を歩いていた。左右を見渡せば、切り立った崖が聳え立っている。空を見上げれば厚い雲が覆い、かすかに薄暗い。少し冷たい風が吹き付けた。 時折背負い直しながら彼が背負っている剣――魂を喰らうと云われている邪剣・ソウルエッジがジークの歩調に合わせて揺れる。首筋が隠れる程度に伸びた金髪もまた同じだった。 ジークの後ろを歩く少年もまた、彼の歩調に合わせるように歩いていた。紅と蒼の異なる色の瞳、前髪を後頭へと流した銀の髪。ジークと同年代の風変わりな青年だった。 「はぁ、はぁ……ジーク、そんなに急いでも周りを見落とすだけだよ」 「……………」 「僕は君のパートナーとして言っているんだ。それに、ジークとは喧嘩もしたくないからね」 「それは言われなくても分かっている。――それより」 「…何?」 ジークは背負っている邪剣の柄を握った。引き抜いて、ゆっくりと構える。 「お前は気付かなかったのか?俺たちはもう――囲まれている」 「――………え?」 イスカが振り返ると、其処には大量の敵がいた。皆、ごつごつとした鱗を纏い、のっぺりとした頭、手にはそれぞれ盾と剣を持っていた。鱗は一体ごとに様々な色を持ち、殿部から足元にかけて長い尻尾があった。言葉にならない声で声を発し、ジークを警戒している。…それは『とかげ』だった。俗にリザードマンと呼ばれる生き物がが剣と盾を持って、二人の周りを囲っていた。 「こいつら、一体…?」 イスカが驚愕しながら半歩引き下がる。ジークは背の剣の柄を掴んだ。 「この邪剣を狙ってるバケモンだろ。イスカ、お前は下がれ」 「う、うん」 彼は二、三歩下がり、ジークは邪剣ソウルエッジを引き抜いた。その瞬間、無数のリザードマンたちが襲いかかってくる――! …しかし、そんなリザードマンたちもジークの振るう邪剣の一太刀で屍と化していった。 ――何時しか彼の前には大量の体液を流したリザードマンの死体が山のように積み重なっていった。ジークはそれに目もくれず、邪剣を収めた。彼は言った。 「――行くぞ」 「…あぁ」 イスカも彼の後を追った。 ――厚い雲の隙間から太陽の光が射す。湿った空気が肌にまとわりついて少し蒸し暑い感じがした。雨の通りすぎた大地は少しのぬかるみを残しながらも、徐々に太陽に照らされて乾いていくのだろう。二人はなだらかな、やや増水川したのほとりにたどり着いた。 そこで彼らは少し戦いの疲れを癒すことにした。 「ねぇジーク、聞いてもいい?」 地面から突き出た大きな岩に寄りかかりながら、イスカは言った。 「――…なんだ?」 「ジークはあの時、あいつらが僕らの後をつけていたの、何時から分かってたの?」 硝子のビンに入っている飲み水を一口飲んだあと、ジークは言った。 〜前へ〜〜次へ〜 [戻る] |