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SoulCalibur's Novel
追憶の讃美歌V
「大切な事……」
最後の言葉は、強くなれ。だけど、どう強く在るべきなのか、強くなったところでどうすればいいのか、分からない。
「…君は、剣を使っているね」
神父の言葉で、はっとする。
「身体つきで何となく分かったよ。私は剣に詳しくないが、これだけは言える。剣は人を守る役割を持つ分、人を傷つける」
「………どういう意味だ?」
神父は真ん中の通路を進みながら言った。
「剣は人を選べない。だが人は剣を持つことで様々な目的が持てる。要は、剣をどう扱うか、だ」
「……………」
「私には、今君が剣を正しいことに使っているとは思えないんだ」
「――間違ってなんか!!」
ジークは声を荒げた。間違ってなんかない、と言いたいのに言えずに。
「もう一度、考え直してほしい。剣を復讐のために使うか、別の目的のために使うのか。そして、正しい道にたどり着いた時――、その時こそ、本当の意味が分かると思うよ」
「――………」
「私が言えるのは此処までだ。これから先どうするかは、君が決めることだ。さぁ、行きなさい」
彼は神父に背を向ける。無言で、教会の扉を開き、その向こうへとジークは消えた。
――扉の音が止み、静寂に包まれる。様々な色彩を奏でるステンドグラスを見上げながら、言った。
「フレデリック……。君の子は、この先波乱に満ちた道を進んでいくだろう。だが、あの子はきっと何かを成し遂げる。その日まで見守ってやろうじゃないか…」
ステンドグラスから差し込む光が静かに揺れた。


「――くぅ……」
教会を出た後、ジークは来た道に戻り、歩いていた。双方の碧眼には、うっすらと涙が浮いている。ジークは木の幹に額を押し当てた。
「父上……」
彼の中の叫びが、かすかに唇から零れた。
「――…俺は、どうすればいい…?」
風が木々の間をすり抜け、木の葉を揺らす。葉の擦れ合う音が、彼の嗚咽をかき消した。溢れてくる涙は、彼自身の力では止められない。
「父上……!!」


――あれから、どのくらい泣き続けていたのだろうか。涙腺から流れ続けていた涙は、次第に治まりつつあった。自分の手で涙を拭っていると、其処へ
「おーい、ジーク!」
遠くで、声がした。うつむいていた顔を上げると、仲間の一人がいた。ジークの姿を確認すると、此方へ走ってきた。
彼の元へ駆け付けると、呼吸を落ち着かせながら、言った。
「なかなか戻ってこないから探したぞ……ん?」
ジークの少し充血した瞳を見て。
「お前…泣いていたのか?」
「――何でも…ねぇよ」
「ふぅん…。とにかく戻るぞ。皆お前のこと探してたからな」
「あぁ…」
肩を並べて、二人はかつて宴が開かれた場所へと戻っていく。様々な会話を交わしながら、歩いていった。
遠く、かすかにパイプオルガンの音が森中に響いていく。

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あきゅろす。
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