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SoulCalibur's Novel
No Way,No LineU
「何処の国のモンだか知らねぇが、俺が祖国の敵だって?何かの間違いじゃねぇのか?」
「――…国を守るのが私の役目。だが、私は貴様の乗った船に返り討ちにあったのだ。忘れたとは言わせん」
「――…………」
男さ怒りの炎で燃え上がっていた。それは真実だ、と真喜志は思った。仕方なく、彼は男を刺激しないよう言った。
「…本当に覚えていないんだ。俺はある化け物を倒すために旅をしている。以前化け物の野郎を殺してやると思った矢先に、何かにやられてこのザマだ。俺の頭ン中だって、何処かすっぽ抜けてるらしい」
「本当に…何も覚えてないのか?」
「…あぁ」
「――…そうか…」
男は再び席に着いた。そして思いついたように、こちらに振り返った。
「お前、名は真喜志といったな」
「?そうだが――…」
「キリクくんとシャンファという女の子がお前のことを探している。もし二人に会えたなら…」
男は一旦、言葉を区切る。
「いや、その二人はお前のことをよく知っている。この街に居るはずだ。…奇遇にもつながりがあるとは思わなかったからな」
「――…………」
真喜志は立てた肘、手掌に顎を乗せ黙り込んだ。――その二人が俺のことを覚えている。しかし、俺の記憶は……。
「…なぁ」
「ん?」
「俺ははお前からしたら敵なんだろ?何でそこまでして――」
「お前の為じゃない。……あの二人の為だ」
男はそう言って断言した。
「分かった」
真喜志は立ち上がった。
「お前には、借りが出来ちまったな」
「あの二人を想っただけだ。――次に会う時は決着を着けよう。名は名乗っておく……私の名は黄星京(ファン・ソンギョン)だ」
「黄…か。次に会う時は楽しみにしてるぜ」
キリクとシャンファの服装を教えてもらいながら、注文した酒を喉へ流し込む。一緒に運ばれてきた食事を終えると、真喜志は食堂を出た。


印度の街を出来る限り探してみたものの、二人の姿を見つけることは出来なかった。歩き続けると、やがて船の停留所に出ていた事に気付く。嫌な思い出の場所であるとともに波音が響いて少し頭痛がした。自由に動ける身体を手に入れる為に支払った代償…記憶を手放したとはいえ、忌々しい出来事は忘れられないものらしい。…もっとも仲間たちの仇を討つ、その日までは。
「喜屋武…来たぜ」
停留所の端っこに、ぽつんと小さな石が幾重にも積み重ねられている。そして、それらは大きな石を形成していた。これが、死んだ喜屋武たちの墓。
彼は花を供えて、手を合わせる。真喜志が立ち上がろうとしたその時だった。
「あ……」
後方から聞き慣れない声。彼は立ち上がりながら、振り返る――その青年に。
青年の赤茶けた前髪が風に揺れた。少し無造作に束ねた髪も一緒に。赤を基調とした服に、凛とした双眸。左目の下には『V』の字に似た傷があった。そして、その青年の手には色とりどりの花束。

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あきゅろす。
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