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SoulCalibur's Novel
No Way,No Line
鉛色の海が波音をかすかに奏でた。空はどんよりと曇り、雨を連れてくるような雰囲気を漂わせる。雲もまた海と同じ色を浮かべていた。それでも船に乗り、街と海とを行き来する人間は多い。船は世界を繋ぐ橋のようなものだから。
其処は印度(インド)の港街だった。港の船の停留所には何隻もの船が停まり、人々が乗り降りしている。世界を旅する商人、観光として訪れる者、伝説を求めて渡り歩く戦士などなど…様々な人であふれ返っていた。それは彼――真喜志も例外ではなかった。琉球の波に乗り、海賊として仲間を連れて彼はこの印度へやってきた。かつて、真喜志の父親の「家に縛られ、世界を目の前にしながら後悔するような男になるな」という遺言を胸に故郷を旅立ったのはもう4年前のことだった。あらゆる海を旅し、新しい旅路を求めてたどり着いたのが此処だった。
しかし、この灰色の海は嫌な記憶を呼び起こしてくる。
何故なら、其処で彼の仲間が一夜にして殺されてしまったからだ。
彼らが初めて印度にたどり着いた夜、この世界に伝説をもたらしたとされる邪剣――ソウルエッジと呼ばれている――から産み落とされし化け物が、真喜志の船を襲撃した。そして、彼の仲間や義兄弟が灰色の海の底に沈んだ。
そして、彼は復讐のために義兄弟たちが残した武器を手にした。そこから真喜志の旅は始まった。忘却の果てに、二人の旅の同行者を置き去りにしたまま――。


生ぬるい風が吹きつけて、雨の降るにおいがした。空を見上げれば、墨汁をたらしたような暗雲が覆っている。耳をすませると、遠くで雷鳴が聞こえた。やがて、雨粒が真喜志の肩に、髪に、次第に全身を叩きつけるように降ってきた。
「……こりゃまずいな」
腕をかざして、真喜志は走った。そうしているうちに、雨は強さを増していく。やがて一つの店を見つけた。灯りがかすかに灯っていることから店は営業中。中に飛び込むようにして、扉に手をかけた。
店内は様々な匂いに満ちていた。壁には食べ物のメニューだろうか、名前とそれに準ずる値段が羅列していた。どうやら、其処は食堂であることに気付く。崩れそうな特徴のある髪型を気にしつつ、6つ空いているカウンター席のうち1つを選んだ。
「隣、失礼するぜ」
カウンター席に男が一人、既に座っているのを見、声をかけた。その男は逆立ちした髪にバンダナ、上は袖のない青の服に下は白いズボンを履いていた。ズボンの脛部からは茶色いラインの装飾が施されていた。裾が擦り切れているように見えるのも長い旅をしてきた証なのだと思った。
「………!」
ちら、と男がこちらへ目をやると即座に席を立った。顔も険しい表情のそれになっている。
「貴様は――…」
「あん?」
「我が祖国の敵…!」
「ちょ、ちょっと待て!」
真喜志は両手で制した。

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