第一章 異端の力
其の1
ソラはバイクで、街中を走っていた。あの後検査と長話の所為で、帰りが夕方になってしまった。しかし、約束には間に合いそうであった。しかし女はどうして話し好きなのかと、ソラは嘆いてしまう。
タツキは、昔から世話になっている。それにあのように話すことは、気分転換になっていい。ソラの生活は何かとストレスが溜まるので、その発散にもなった。そして数十分後、一軒の店の前に到着する。
そこは、繁華街の奥に建てられた馴染みの店。安い値段でありながら味は良く、隠れた穴場となっている。店内はシンプルで落ち着いたデザイン印象的で、大半は女性客が占めていた。
「あれ? 何処だ」
先に到着しているはずの友人の姿が、見当たらない。用事ができたというのなら、連絡があってもいいものだ。しかしそのような連絡がなかったので、先に店に入っていると思われる。
そう確信したソラは、店の中に入って行く。案の定、予想は的中した。何と友人は、先に食事をしていた。
「何だ、先に食べていたんだ」
「腹が減っていたんだ。悪い」
「いいよ。それくらい」
女性が多い店内で、男性の客は目立ってしまう。よって、友人が使用しているテーブルはすぐに発見できた。ソラは適当に遅れた理由を話すと、椅子に腰掛け友人が食べている物に視線を移す。
狐色に焼かれたパン。それに、彩が美しい野菜。どうやら、セットメニューを注文したようだ。
「お前が暇で、助かったよ」
「変な言い方だな」
「こう見えて、忙しい」
「自分で言うと、おかしいな」
「気にするな」
彼の名前は、カディオ・ブリジッド。古くから付き合う、一種の親友のような関係である。だが、彼はソラのような力は持っていない。しかし普通の人間のように接し、決して特別扱いはしない。
カディオはタツキほどではないが、能力者が置かれている現状を理解している。だからこそ、ソラとは良い関係を築くことができていた。能力者は怖い。多少なりともそのような感情を持っているが、差別までには到らない。それは、大らかであり大雑把な性格が関係していた。
「まあ、いいじゃないか」
「お前らしい」
「それが、俺の性格だからな」
「そのくらいは、わかっているよ。お前との付き合いは、長いからね。大体の性格は、把握しているよ」
そこまで言うとメニュー表を手に取ると、どの料理を食べようかと選んでいく。ソラは胃に溜まるような料理は好んで食べず、どちらかというと簡単に食べることのできる料理を好んだ。ソラは適当に料理を選ぶとウエイターを呼び、注文をした。そして、中断した会話を再開させる。
するとカディオが、ある日の出来事について質問を投げ掛けてきた。それは、互いの仕事に関係していた。
「この前の任務、どうだった?」
「大変では、なかったよ。あれは警察がシッカリと警備をしていれば、起こらなかった事件だと思う」
「手厳しいな」
「そうでもないよ。事実を言っただけだし。それにしても、最近似たような事件多いと思わないか?」
「何かが起こる……そう言いたいのか?」
「そう考えるしか、説明がつかない」
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