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第一章 異端の力
其の2

「難しい話は、苦手だ。こういうことは任せる。頭を使う問題を、体力派の人間に質問するのが間違っている」

 カディオは笑いながらそのように言うと、並べられて料理に手を付ける。それは、肉料理。ボリュームたっぷりの料理に、ソラは苦笑いを浮かべてしまう。相変わらず、カディオは大食漢であった。

 これらの料理は今では当たり前となった自動調理ではなく、店の店主が作っている。ひとつひとつ手作りされた料理は懐かしの味と言ってよいだろう、この店が繁盛している影にはこのような理由も隠されている。

 何より、経営している老夫婦の人柄も良いからだ。暖かい持て成し――それが多くの客を呼ぶ。

「お前らしいな」

「お互い様だ」

「それはさて置き、最近どうなっているんだ?」

 カディオは急に、的外れの質問をしてくる。どうなっていると聞かれたところで、全く検討がつかない。ソラは質問の意図が掴めないらしく腕を組み悩んでいると、質問の意味を改めて言った。しかしその質問は、ソラを驚かせた。と同時に、渋い表情を浮かべることになる。

「鈍いな〜。幼馴染との関係を言っているのだよ。仲良くやっているのだろ? どうなんだ」

「そのことか。別に、普通だけど」

「いや、俺が聞きたいのはそのようなことじゃない。付き合っているのかどうか、それを知りたい。だから、お前を呼んだ。で、どうなんだ? 付き合っているのなら、隠さずに教えてほしい」

「はあ? 何だよ」

「迎えに行くということは、仲がいいという証拠だぞ。お前の性格を考えると、素直に行くということはおかしい。車を借りに来たということを考えると、そのような結論になるんだよ」

 カディオの唐突な質問に、ソラの時間が止まってしまう。そして見る見るうちに頬が赤く染まっていき、しどろもどろになってしまう。今まで、イリアを恋愛対象としては見ていなかった。いくつになっても“幼馴染であり友人関係”というものであった。それしか、考えられない。

 しかしカディオにこのようにハッキリと質問をされると、どのように思っているのか考えてしまう。確かに、イリアは可愛いと思える部分がある。だが、思ったら突っ走るタイプ。それに、向こうもソラを恋愛対象と見ているか怪しい。一部の噂では、イリアは好きな人物がいるという。

「イリアは、幼馴染みだよ。恋愛対象ではない」

「だが、見ていると恋人同士に思える。おっと、怒るな。友達以上恋人未満ということでいいだろ?」

「あまり変わらない気が……」

「なら、お前の好きなタイプを教えてほしいものだ。恋愛に興味がないお前だ。情報として価値がある」

「タイプね……敢えて上げるとしたら、大人しい子かな。家事全般が上手いなら、更にいいけど」

 顔を真っ赤に染めながら、ソラは女性のタイプを述べていく。恋に奥手と言われているソラから聞きだした答えに、カディオはニヤニヤと笑い出す。カディオにしてみれば、恋は先手必勝。ゆっくりと構えているのは、嫌いであった。それに性格を考えれば、何かを仕出かすに違いない。

「いいことを聞いたぞ。お前って、平凡な女性が好みなんだな。早速、イリアちゃんに報告だ」

「何故、此処でイリアの名前が出てくる。それにカディオ、ひとつだけ言っておくことがある。どのようなことがあろうとも、オレはイリアと付き合うことはできない。付き合っては、いけないんだ。それにそのような関係になったら、イリアに重荷を背負わしてしまう」


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あきゅろす。
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