「……お腹、すいてんのか?」
平和島静雄が聞いてきた。もちろん私は全否定した。
「……いや、そんな事はない」
「でもさっき、鳴ったよな?」
「気のせいです」
「いや、お前のお腹だろ?」
「違います」
「俺にも聞こえたぞ」
何故かトムと呼ばれたレッドヘアーが参戦してきた。
「…………」
「遠慮すんな。ガキは大人に奢られて当然だしな」
「…………」
「恥ずかしい事じゃないしな。じゃあ、ここいらで昼飯にすっか」
「うっす。ほら、いくぞ」
私の意見は総無視ですか。そうですか。
「……この中年から金取ったの?」
「あぁ、取った」
トムと呼ばれたレッドヘアーはいつの間にか、巾着袋を持っていた。
「…………」
まさかの時間稼ぎ失敗。
「ほら、さっさと行くぞ。腹減ってんだよ、俺」
平和島静雄が私に左手を差し出す。いつかと同じように。何となく、それを自らの右手で握ってみる。
……どうして彼は、手を差し出したのだろう?
昔の事を連想させながらも、握る。それはあの時と同じように、暖かかった。
あの時と同じで、私にはない、暖かさがあった。
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