灰色チャックの愛しいやつ
木の葉も枯れ落ちて、すっかり冬の町並みになった。冬は只でさえ欝になるってゆうのに試験中なんてさらに気分が下がる。悴む指で堪えながら明日の科目のプリントを両手で持った。今朝は急いでいてマフラーも手袋も忘れたからわたしの頼りは携帯用のカイロだけだった。横にいる退の有り余ったマフラーが風になびいてわたしにピシピシと当たるのがとても腹立たしかった。今日は試験だけで学校がおわったからまだ昼の1時で、退とわたしの帰り道にはわたしたち以外に誰もいなかった。道沿いの木から茶色の葉がひらひらと冷たい風に運ばれては視界を横切った。耳とかもう痛いくらい冷たくなったし、指先も真っ赤だイライラする!これに加えて勉強もしなきゃいけないだなんて!わたしは不機嫌になる一方だった。
「1878年…1878年…」
「ベルリン会議?」
「……1822年…18に…」
「三国同盟?」
「もー退言わないでよ!わたしだって解ってるんだからね、先に言わないで」
「あーごめんごめん」
ちっと舌打ちをしてやったら苦笑いされた!またわたしの不機嫌度が高まった。コイツわたしを見下してるだろう!ちくしょう絶対おまえよりいい点数とってやるとわたしは呟いてもう手が寒さに耐えれなくなったのでプリントを鞄にしまって、今出来る精一杯の手を暖める方法(腕を組む)をした。また退の灰色のチェック(マフラー)はぴしぴしとわたしを叩いた。
「早く試験おわらないかな…心底思う」
「わたしだって心底思ってる」
「うん、本当にね」
「なによ、その顔は」
「いやあ、試験がおわってくんないとなまえ!の機嫌も治らないしなあ」
うるせーよ!本当に鈍いやつね、あんたは!わたしが試験だけでこんなに機嫌が悪くなるわけないでしょう!今だに叩いてくる退の灰色の憎いやつ(マフラー)をわたしは睨み付けた。彼女が寒がっているのがわからないのかな、退くんは!
「さむい!」
「え?」
「さむいさむいさむい、わたしカイロしかないのよ」
「カイロ…あったかいじゃんいいじゃん」
「あのさ、彼女が寒がってんのよ」
「うん?」
「マフラー貸してくれたりしないわけ」
退は口を尖らせてえー、だって寒いもんと言った。気持ち悪いな、おまえは女か!また冷たい風が吹いて枯葉やら放ったらかしてた前髪が視界を邪魔した。(なんて苛立つんだ!)
「もういいよわたしなんて風邪ひいてそんで試験で全部赤点とればいいんだそうだろう」
「あれ、なまえ!怒ってんの?」
「怒ってません〜」
そう言ったあと、わたしは歩幅を合わせて歩いていたけど少し早めて退の1歩前を歩いた。でも男のほうがやはり歩幅は大きいのですぐに追い付かれた。そしてごめんねって言ってマフラーのあまった部分をわたしにの首に巻いてくれた。そして睨みつけたらまた苦笑いされた。
灰色チェックの愛しいやつ
そうよ、それを望んでいたの
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まえつぎ
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