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十六夜月の秘密


「お前の名は?」
「僕はカイル。カイル=サファ=ヴォーエストル。この国の王子だよ」

カイルは名乗り、手をクロに差し出す。

クロはそれを一瞥しただけで手を差し出すことはなかった。

殺されなくはなったが。警戒されている、というよりは、不機嫌にみえる。

「これからどうするのクロ?」
「知らんっ」
「お金に困ってる?」
「困ってない」
「宝はいらないの?」
「いらん」
「...僕を殺したい?」
「――ああ」

質問をすれば、素っ気なくではあったが、答えてくれた。

「殺せばいいのに...」
ため息混じりに、カイルは呟いた。

「今のお前は嫌だ。それより、そんなに死にたいのか?」
「死にたい、というか...。今の生活から抜け出せるなら、なんでも」

味気ないてつまらないのだ。
刺激が欲しいのだ。

しかし、城から出ることを許されない自分では、何をやろうと気持ちは変わらないと思う。

これならば、死んでいるも同然ではないか。



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