十六夜月の秘密 3 「お前の名は?」 「僕はカイル。カイル=サファ=ヴォーエストル。この国の王子だよ」 カイルは名乗り、手をクロに差し出す。 クロはそれを一瞥しただけで手を差し出すことはなかった。 殺されなくはなったが。警戒されている、というよりは、不機嫌にみえる。 「これからどうするのクロ?」 「知らんっ」 「お金に困ってる?」 「困ってない」 「宝はいらないの?」 「いらん」 「...僕を殺したい?」 「――ああ」 質問をすれば、素っ気なくではあったが、答えてくれた。 「殺せばいいのに...」 ため息混じりに、カイルは呟いた。 「今のお前は嫌だ。それより、そんなに死にたいのか?」 「死にたい、というか...。今の生活から抜け出せるなら、なんでも」 味気ないてつまらないのだ。 刺激が欲しいのだ。 しかし、城から出ることを許されない自分では、何をやろうと気持ちは変わらないと思う。 これならば、死んでいるも同然ではないか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |