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CrossRoad
突き刺す言葉

約一週間に一度の電話――。


ほんとは毎日でも千晴と話したいけど親の視線が恐くて出来ない……。



会いたい……。


ゴールデンウィークに会ってからまだ二ヶ月近くしか経ってない。

夏休みになったら玖珠に戻ってくるって言ってくれたけど……長い……。


淋しいよ……。



それにどうしても気になる事が一つある。


まだめぐは何も言ってくれない。

それどころか確実に避けられてる。


何か絶対隠してる――。


信じられなくて待つ事がもう出来なかった――。






「めぐ……。ちょっと話したい事があるんだけど……。」


部活も終わって、片付けが始まったのを見計らってめぐに声をかける。


部活が終わったら声をかける間もなく帰ってしまう。


「……今度じゃ駄目?私…今日早く帰らなくちゃいけないの……。」


目を合わせない……。

嫌そうな顔をしてる……。


やっと聞こうって決心したんだもの、ここで引き下がれない。


「少しでいいんだから。終わったら教室に来て。……お願い。」


「……分かったわ。片付けたら行く……。」



やっと話せる……。

でもこれからが本番と思い直して気を引き締める――。





「……話って何?」


教室に入って来ても何も言わなかったから、めぐから切り出してきた。


「……あのね……、めぐ、私に何か隠し事してない?」


なんて聞こうか迷ってたから直接聞く事が出来ない。


「……何も隠してなんかないわよ。」


少し笑う様にさらっと流した感じで言う。


そんな訳ないじゃない。


心の中だけに留めて、違う言葉を投げ掛ける。


「最近のめぐおかしいもんっ。私の事だって避けてるでしょ?」


めぐの顔が少し強張った気がした。


「別に避けてはないでしょっ。今だってこうして普通に話してるじゃない。」


「それは私が話したいって言ったからじゃないっ。……逃げようとしたでしょ?」


なるべく感情が表に出ないように気をつけながら言う。


「逃げようとなんてしてないわっ。何でそんな風に思うのよ。……由依の方がおかしいじゃない。」


めぐが少し感情的になる。


「めぐでしょっ、おかしいのは。隠してる事あるしっ。完全に避けてるじゃないっ。」


これだけ言ってもまだしらをきるめぐに苛立ちを覚えて、つい感情が表に出る。


「避けてないっ。隠してなんかないわよっ。」


「嘘っ。」


「嘘なんかついてないわっ。」


「じゃあ何で千晴に手紙出した事黙ってるのよっ。」


めぐの顔がはっとする――。


「……いいじゃない言わなくたって。」

しんとした空間にめぐの小さくなった声が響く。


その言葉に少なからず怒りを覚えた。


「言ってくれてもいいでしょっ。」

声が大きくなる。


「……何でよ。」


「何でって……。千晴は私の彼氏だもんっ。」



「由依の彼氏だったら断りをいれなきゃいけないの?」


「そんな訳じゃないけど隠す事なんてないじゃないっ。」


そんな風に思ってるなんて……。

悔しい――。


「ならいいじゃない。手紙書こうが……電話しようが……私の勝手でしょ?」


電話――。


「……千晴と……電話してるの?」


そうかもしれないと思いながらも、そんな事ないと思いたかった。


「……いいでしょ。電話してたって。」


千晴は何も言ってなかった。


何で……?


「よくないよっ。千晴は私の彼氏なんだからっ。私の知らない所で勝手な事しないでっ。」


めぐが言ってくれてたらそんな風には思わなかったと思う。


ただ、今までに溜めに溜めた我慢が嫉妬になって爆発した。

信じてた千晴にも電話があった事を言ってくれなかったのに憤りを覚える。


「彼氏彼氏って何よっ。一人だけ幸せそうな顔して……。」


「幸せ……?離れてるのにそんな訳ないじゃないっ。」


どうやったらそんな風に見えるんだろう。

こんなに辛いのに……。


「ゴールデンウィークに会ったって……物凄い嬉しそうだったじゃないっ。」


「そんな前の事、今関係ないでしょっ。」


「あるわよっ。そんな顔されたらむかつくんだもんっ。私だって会いたいものっ。」


言った後にめぐがはっとする。

聞き間違いじゃない。


「今何て……?」



「……私だってずっと千晴くんの事好きだったのっ。」


ショックだった――。


「嘘……?」

言葉が続かない。


「……ほんとよ……。千晴くん優しいんだもの。なんで由依なの?ってずっと思ってたわ。……でももういいの。」


千晴が優しいのは私が一番知ってる。


「……もういいって……?」

最後の言葉がなんとなく気になった。


「私千晴くんと付き合う事になったから……。」



何言ってるの……?

千晴は私と付き合ってる。


「嘘よっ。」


「嘘じゃないわっ。」


「嘘っ嘘っ嘘っ。私達別れてなんかないものっ。嘘言わないでっ。」


「ならそう思ってればいいじゃない。」

めぐの目が潤んでいる。



頭の中が真っ白になった――。



昨日電話した時の千晴はいつもと何も変わらなかった。


私の事を大切に思ってくれてる。

そう思えた――。

そうとしか思えない――。

好きって言ってくれる――。



でもめぐの言葉が突き刺さって胸をえぐる。



信じてたものが音をたてて崩れていくような気がした。



感情が押さえられなくなって、溢れ出した涙が頬を伝って落ちていく。



「……千晴は……私の彼氏……だもん……。」


かろうじて言葉を絞りだす。



「……もういいでしょ。私、帰るわ……。」


鞄を手に取ると走って教室を出ていく――。



「嘘ばっか言わないでよーっ。」

一人取り残された教室で声を上げた。



膝から崩れ落ちると、止まらない涙がスカートを濡らしていく――。


「大嫌い……。……ぐすっ………めぐなんて大嫌いよ……。」


親友だと思ってたのに……。


あんな嘘……。



嘘……だよね。

頭の中に千晴の顔を思い浮かべる。


笑って好きだって言ってくれた姿を思い出す。



「会いたい……。…ぐすっ……会いたいよ……。千晴……。」




涙がとめどなく溢れては目からこぼれていく。


何がなんだか分からなかった――。



夕日が差し込む教室で、涙が枯れるまでただただ泣いた―――――。



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