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アカい実破裂2

もうすぐ夏休みを迎える学校は、皆何処か浮足立っている。
だが、俺こと鈴木颯太はそんな雰囲気には程遠い所にいた。
期末試験が赤だらけという、どうしてこうなった?的なアレに陥っていたためだ。

担任からは呆れたような溜息をつかれたあと、来週再テストをする旨通告を受けた。
でもって放課後教室に残っているようにと念押しされたため、留年したくない俺は不服ながらも指示に従い、現在自席で待機中なのであった。

「ダリぃなあ」

きっちりとボタンが留められたシャツを眺めながら今後の展開にげんなりする。
きっと来週のテストまで毎日のように課題を出されるに違いない。
そもそも何が分からないかも分からない訳で、勉強するにもどこから始めりゃいーの?って感じの俺にどうしろっつーのよ。

「おう、ちゃんと待ってたか」

担任が束になったプリントを抱えて教室に入ってきた。

は?まさかそれを全部俺にやれと!?

「ちょ、センセー、それさあ…」
「もちろん、全部やれよ?」

にっこりと有無を言わさずに課題を押し付けられ、目眩を起こしそうになる。

「無理無理無理!出来るわけねーし!」
「ばか、諦めたらそこで試合終了だぞ」
「…」

…センセー、漫画好きなん?

「ま、俺も鈴木が一人で全部こなせるとは思ってないから、対策はしてある」
「あ?どんなよ」
「特別講師を派遣するから、みっちりしごいてもらえ?あ、ちなみに講師は鮫島ね」

は、

「はあああー!?なんでだよ!意味わかんねーし!」
「いや、わかるだろ。あいつの成績学年トップクラスだぞ」
「じゃなくて!つーかアンタがやれよ!この怠慢教師がっ」
「えー、やだよ、かったるいじゃん」
「…それ、本気で言ってる?」

まじでなんなんだ。
ありえん。
鮫島に勉強を教わるなんて!奴には弱みを見せたくねーんだよ。

「いや、休み前だし俺ってばとっても忙しいわけよ。で、ダメもとで鮫島に頼んだらあっさり承諾もらえて超ラッキー☆」
「超ラッキー、じゃねぇよ!」

食って掛かる俺になんでそんなに嫌がるんだ?と担任に訝しげな表情をされるが、奴に借りを作りたくないんだから仕方ないだろ!

「なんだよ、遠慮すんなよ。お前ら付き合ってんだろ?」
「…誰と誰が付き合ってんだよ」
「お前と鮫島」
「おい、正気か?」
「え、違うの?」
「…」

ほんとやだ。
なんでこんなアホな情報が教師にまで伝わってんの!?てか信じるなよ…。

「とにかく!鮫島だけは勘弁してくれよ!つかうん、俺一人でやるし!超がんばるわ!」
「なに言ってんだよ、バカも休み休み言えよな?」
「アンタこそ、それが教え子に言う台詞か!?ふざけんなよまじで!ぜってぇやだ!やだやだやだ!!」
「鈴木、我侭を言うんじゃない」
「うわ、出た!!」

背後から突然気配もなしに現れた鮫島に心臓が止まりそうになる。

「だよなぁ、こいつ我侭が過ぎるな。鮫島、彼氏としてここはびしっとこいつに指導をしてやってくれ」
「はぁ…」
「はぁじゃねーよ!彼氏部分を早急に否定しろ!つか先生の存在意義ってなんだよ!?なんで鮫島に指導させんだよ!職務放棄!?」
「なーに興奮してんだよ、テレてんのか?はいはい、あとは若い者同士でよろしくどうぞぉ」
「まじでもう止めろや」

俺がすごむと「おー、こわ!」と全く怖がった様子を見せないアホ担任が、鮫島に後はよろしくーと声をかけながら出て行ってしまった。
まじかよ。
まじで放置!?


「…なぜそんなに嫌がる?」


絶望に打ちひしがれている(大げさ)俺を不思議そうな顔をして鮫島が見ている。

そして、奴は何を思ったのか俺の顔に掛かった髪を指でなでるようにしてかきあげた。
瞬間的に顔が沸騰する。
…そういうことをさらっとしてくるのが嫌なんだよ!!

「触んな!お前に借りなんて作ったら見返りとかいってなんか色々恐ろしいことされそうだろうがっ!」
「…俺を万年発情期の変態みたいに言うなよ」
「や、そこまでは思ってねぇけど」

こいつ、普段はストイックに振舞う癖になんか突然スイッチ入るから怖ぇんだよ。

「鈴木が嫌がることはしない。俺はただクラスメイトとしてお前を助けてやりたいと思っただけだ」
「…え?」

まじか。
それ本気で言ってる?
う、やべぇ、なんか鮫島から後光が差してるような気がしてきた・・・。
それと同時に罪悪感が襲ってくる。

「さ、鮫島、ワリィ、俺なんかお前のこと誤解してたかも」

鮫島の腕を掴んで詫びを入れる。
俺より上背がある鮫島を見上げると、奴は無言のまま俺を見つめ返してきた。

…ん?

「だがしかしお前が俺を煽るような態度をとった場合は、何をするかわからないな」
「は?ちょ、なんで目の色変わってんだよ!?俺今なんかしたか?」
「上目づかいで俺を見ただろう。扇情的で興奮した」
「はぁぁぁぁぁ!?」

がしりと腕を掴まれ、鮫島の顔が近寄ってきた時は恐怖で失神しそうになった。

ぎゃああああぁぁぁ…

校舎内を俺の叫び声がこだましたとかしなかったとか。


このあとめちゃくちゃ勉強した。


end.









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あきゅろす。
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