EternalKnight
<旅立ち〜エピローグ〜>
<SCENE103>――昼
巨大な地下会議場……そのほぼ中央に、俺達は集まっている。
そこに居るのは俺、叶、聖五さん、紅蓮さん、真紅さん、クオンさん、時乃さん、武さんの八人。
春樹さんと冬音さんには事前に別れを済ませてきたので、ここには来ていない。
雫さんと蓮さんは退魔師の仕事があるとかで、もうここには居ないそうだ。
それにしても、思えば、長い様で短い一月だった。
一月前、時乃さんが転向してきたあの時は、こんな事になるなんて思っても見なかった。
武さんと出会って。
永十さんの墓参りに行って。
叶に告白されて。
兄さんが《同化》に取り付かれて、その兄さんと戦って。
クラスのみんなと雪合戦して。
叶の正体を知って、叶に告白して。
修行して。
《混沌》と戦って。
卒業式があって……ホントに大変だった。
――でも俺は、こうなった事を後悔していない。
兄さんはもう居ないけれど、最期に……和解する事も出来た。
そして何より……叶が俺の隣に居る。ずっと共に生きていける。
それだけで、俺には十分過ぎる。
だから……後悔なんて無い。みんなには、いつかまた会えるから、会いに来るから――
紅蓮さんが、《門》を創りあげ、その門がゆっくりと開く。
あの時、紅蓮さんがその向こう側へと行った門。今度は、俺もあちら側に行くのか……
「紅蓮……それに翼、次戻ってくるのは何時になる?」
突然、聖五さんがそう言った。
「さぁな、俺達にもわからない。けど……次はもっと時間がかかると思う」
紅蓮さんがそう言うのだからそうなのだろう、俺には今はよくわからない。
「そうか……まぁ、できるだけ早く来い、少なくとも俺等が死んじまう前にな」
「あぁ、約束する。必ず、せめて後一度は……お前等が死ぬ前に戻ってくるさ」
「オッケー、忘れんなよ?」
そう、互いに笑顔で語り合っている。
この二人は……やっぱり凄いと思う。互いが互いを信頼しあっている。本当に……最高の親友なんだろう。
俺と裕太との関係とは何かが違う……だけど、俺の親友は、やっぱりアイツなんだろう。
「あ〜それから翼。お前に伝えときたい事がある」
「なんですか? 聖五さん」
「簡単な言葉で悪いけど、達者でな。んで、お前も紅蓮と一緒にちゃんと戻って来いよ?」
「――はい、分かってます」
俺にも、戻ってこなきゃ行けない約束があるしな。
「ねぇグレン? 門開けたんなら、さっさと出発した方が良いわよ。持続させるのって結構消費しなきゃいけないでしょ?」
「あぁ、そうですね……んじゃ、行こうか翼?」
その紅蓮さんの問いかけに、俺は大きく首肯いた。
――が、そこで、時乃さんが声を上げた。
「待って! 私……二つお礼が言いたいんです」
時乃さんが……俺達にお礼?
「えっと、まず叶ちゃん」
叶にお礼って……一体、なんなんだろか?
「えっと……私に?」
叶にも礼を言われるような覚えが無いのか、困惑している。
「えぇ、あなたのおかげで、私は友達が大切だって事に気が付けた。あなたが強引に私を誘ってくれなかったら、私は友達の大切さがずっと分からなかったと思う」
強引に……時乃さんが転校して来た次の日に《春音》に行ったこと……だよな?
「なんだ、そんな事? アレは、ただ私が誘いたくて誘っただけで、御礼を言われるほどの事じゃないわ」
「例えそうだったとしても、私はお礼が言いたかったの……ありがとう……叶ちゃん」
そう言って時乃さんは叶に深々と頭を下げた。
「別にそこまでしなくていいよ茜ちゃん……友達を遊びに誘うのは普通のことなんだから」
「ありがとね……叶ちゃん」
「それで、もう一つのお礼って何よ、茜」
クオンさんが急かすように言った。
「はい、コレは事務的な事なんですが……クオンさん、素材の提供、ありがとうございました」
――素材? 一体なんの事だろうか?
「あぁ、アレね。今回の件で結構たくさん宝具が壊れたから、その代わりだと思って使って。元々私の居た世界だし、コレくらいのサービスは当然よ」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「うん、話はそれだけね? それじゃあ、行くわよ、グレンにシンクちゃん、翼に叶ちゃん?」
「「「「はい」」」」
見送ってくれる聖五さんと、時乃さんと武さんに背を向ける。
背中越しに聖五さん達の声が聞こえる。そして、視線の先には《門》……その奥には光が見える。
そうして、一歩前に踏み出し、《門》の中へ――
そこで、突然背中越しの声が途絶えた。それに驚き振り返るが、まだ《門》は閉まらずに開いている。
――まだ聖五さん達の姿は見えたままだった。音だけが途絶えている。
だから、振り返ったついでに俺も手を振り返す。声は、もう届かないけれど、俺は手を振りながら「またな」と、小さく呟いた。
呟いて、今度こそ《門》の入り口に背を向け歩きだした。
そして……背後で《門》が閉まる音がした――

EternalKnight-ChapterSecond-
――――TheEnd.

――Epilogue――
【西野聖五】
退魔師の抜けた穴を埋める為に黒崎家に応急の退魔師として雇われる。
クオンが残した新たな人造宝具の材料で、手甲型の宝具を創り、数年間退魔師として過ごす。
その間の撃破数はかなりの量で、他の退魔師、エクソシストと組んでだが、幻想種を二度撃破している。
また、鬼神を一人で合計十三体撃破している。
新たな退魔師が育つと共に、徐々に戦いから離れ、新たな退魔師を育成する側に回る事になる。
その仕事を定職として扱うようになり、そのさらに数年後、琴未と結婚し、それ以後は一度も人外とは戦っていない。
生涯、身内にも自身が退魔の仕事に関わっている事は告げず、非日常に巻き込むことはなかった。

【九門春樹&九門冬音】
店は潰れる事も無く、しかし繁盛する訳ではなく、最低限の生活を送りながら、店を経営し続ける。
数年後に娘が生まれ、気合を新たに仕事をすえるも現状維持を続ける。
さらに数年後、名物料理を開発し、一時的に繁盛するもその一年後には元の経営状態に戻る。
生涯、春樹のロリコンが治る事は無かった。
娘が小学校に上がった頃の春樹の溺愛ぶりは異常の域に到達していたとかなんとか。
冬音は冬音で娘を産んで以降、より春樹を尻に敷くようになる。
二人の掛け合いは、店の名物となり、常連の客の数は非常に多かった。

【西野翔子】
数年後、同僚と結婚する。
息子が生まれ、しばらく教職から離れるも、数年後には再び教職に戻る。
その性格から、多くの生徒に親しまれ、卒業後にも生徒に頼られる事となる。
定年まで教職を取り続け、定年後も、やはり卒業生などの相談役をしていた。
亭主に先立たれれるも。約束があると言い続け、かなり長生きをした。
誰もその約束が果たされたとは聞いていないが、その最後の寝顔はとても穏やかで、満足げだった。

【鏡裕太】
大学を一年で辞めて、バイトをしながら役者としての道を歩む。
数年後、とある事務所にその技量と美顔を認められ、俳優になる。
さらに数年後、初主演とドラマがヒットして、一気にその名は広まる事になる。
その後、十数年間で幾つもの作品を演じ、主役としてよりも名脇役として、さらにその名を広める事となる。
そして、インタビューで役者を目指した理由として親友との約束とだけ答える。
さらにその十数年後、彼は目的を果たしたとの言葉を残して、突如業界からその姿を消す事となる。
その後は、俳優として溜めた資金で質素に生活し続けた。

【時乃茜&黒崎武】
数日後、茜は時乃家の管理地に戻り、数年後に正規の退魔師となり黒崎の家に再び訪れる。
武は、数年間の修行で正規の退魔師となり、黒崎の家を引き継ぐ。
再び訪れた茜は武に告白し、付き合う事となる。その数年後に二人は結婚することになる。
茜は宝具を所持したまま黒崎家に嫁いだが、武がクオンに作ってもらった人造宝具の材料を時乃家に分ける事で、問題は発生しなかった。
その後、娘と息子が生まれ、彼等に自身の後を告がせるためにその技術を継承させていく。
その頃も退魔師として第一線で活躍し、他の退魔師やエクソシストと協力してではあるが幻想種の撃破に三度成功している。
十数年後、武は息子に《黒天月》を継がせ、それ以降も《草薙の剣》を握り退魔師として戦い続けた。
さらにその数年後、茜が娘に《流刻剣》を継がせ、それと同時に武も《草薙の剣》を息子に継がせた。
その後も、聖五と共に二人は退魔師を育てる側として活動を続けた。

【守護の永遠の騎士達】
広域次元世界を舞台に、守護の永遠の騎士としてその身を戦いに投じていく――

―――――to be continued
EternalKnight――NextChapter.

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