EternalKnight
<聖賢復活>
<Interlude-聖五->――昼
すぐに俺が今まで戦いを傍観していた場所……学校の正面玄関に当たる部分にたどり着いた。
そこで抱き上げていた時乃をおろす。
「それで、協力して欲しい事って何ですか?」
「顔が赤いけど、どうかしたか?」
「あなたねぇ……言っとくけど恥ずかしかっただけだからね? それに、私には好きな人が――」
あぁ……まぁそりゃあんな運ばれ方をされれば勘違いもするか……
「……因みに俺には彼女がいる、別にお前を狙ってるわけじゃないさ」
「あぁ、そう。それで協力して欲しいことって何」
なんだかさっきまでと口調が違うが、おそらくこっちが地だろうな……
っと、そんな事はいいんだ。
「あぁ、あんたオーラって分かるよな?」
「……氣のことね、翼もそんな呼び方をしてたわ」
「それをコイツに――」
そういいながら純白の指輪をはずしてみせる。
「――込めて欲しい」
「……その指輪も聖具って呼ばれるモノなの?」
「その通りだ、翼も同じ方法をとったみたいだし、話が早そうだな」
「えぇ……でも聖具って人型をベースにするモノだと思ってたわ」
「って事は、翼の聖具は戦闘時以外は人型なわけだ……」
これはまぁ紅蓮の時に真紅ちゃんを見たから大して驚くことでもない。
「えぇ、あなたもよく知ってる子よ」
「……そうか、でも今はそんなことはどうでもいいんだ。早くコイツに力を込めてくれ」
「分かったわよ、どうせ今の私は戦力外だろうし……」
そういって、俺の渡した《聖賢》の指輪を握り締めながら、時乃は眼を閉じる。
【……】
[――ッドクン!]
声は聞こえないけれど、確かに感じる。
懐かしい、《聖賢》の力の流れを――
「これで……いいかしら?」
いつの間にか、時乃は瞳を開けてこちらを見つめたいた。
「あぁ……完璧だ」
そう言いながら、時乃から指輪を受け取る。
そういえば……発動するときの祝詞は前のままで良いんだろうか?
まぁ試すしかないか……
「開放されよ、解き放たれよ、叡智の力よ」
――瞬間。
俺の腕は、純白に輝き紫紺のラインの走る、懐かしい手甲に覆われた。
そして……懐かしい声が頭の中に響く――
(お久しぶりです、マスター。こうしてまた話が出来ると思っていませんでした)
ホントに久しぶりだな。
――あぁ、最初にこれだけ言わせてくれ。
(何ですか、マスター?)
ありがとな、俺を助けてくれて。お前が無理をしてくれなかったら、俺はあのときに死んでた。
(それは……当然のことです。マスターを守るのが私の役目ですから、巻き込んだのも私ですし)
それに関しては感謝してるぐらいだから気にするな。
……よし、それじゃあ今の状況を俺の心を読んででも良いから把握してくれ。
(分かりました、ちょっと待っててください)
出来る限り早く――
(終わりました)
――相変わらず早いな。
(結構大変なことになってますね……私の力でも及ぶかどうか……)
悪いな、起こしてすぐこんなことに巻き込んじまって。
(いいんですよ、マスターの力になるのが私の役目ですから)
「……一体どうしたの、黙り込んじゃって?」
突然、時乃に話しかけられる。
「あぁ、悪い。それで、どうした?」
「別になんでもないわ、ただ黙り込んでたから……」
「気にしないでくれ、ちょっとした作戦会議みたいなものだ」
「そう……にしても、聖具っていろんな形があるのね」
「そうだな、俺の知る限りでは手甲、剣、槍、盾、爪、手袋、杖……ぐらいか」
「へぇ……翼のは翼……分かりにくいから言い方を変えると羽型よ」
「……翼の聖具が翼……確かになんだか文章的に微妙だな」
(マスター、そんなことより……)
あぁ、そうだな。そろそろ行くか。
「それじゃあ、俺は行って来る。お前はここにいろ」
「言われなくてもそうするわ。私が行ったところで戦力になるわけじゃないし」
「そうか。それじゃあな」
そう言って、俺は地面を蹴って駆け出した。
後ろからの声はそれ以上無く、俺はひたすら煙の中を進んで行く。
この煙の中でも目的の場所……会長の位置はよくわかる。
移動をしているようだが、その速さもたいしたことは無い、すぐにでもたどり着く。
煙の先に人影が見える……誰だかは見えないが、確認の必要なんて無い。
頼むぞ、《聖賢》。
(任せてくださいマスター。戦術情報支援開始します)
脳内に数種類の戦術情報が走る――
脳内を駆けるそれらから自分に合っていそうなモノを瞬時に見繕う――
よし……これなら。
俺は地面を踏みしめ、力強く蹴り出した。
その勢いで放物線上に飛び、敵背後に勢いをつけたまま着地。
その勢いに任せて拳を叩き込む、という戦術。
それは、対象への到達時間、物理的な威力、攻撃そのものの速度を含めての自身の判断。
地面を蹴り浮き上がった体は、物理法則に従い、会長の元へとスピードを上げながら接近する。
瞬間、会長がこちらに気が付いたのか、こちらに振り向いた。
――だが遅い。
俺は拳を勢いに乗せて会長の顔面にまっすぐに叩き込んだ。

<Interlude-蒼二->――昼
気が付き、振り向いたときにはすでに遅かった。
目前まで迫ってきていたその拳を回避することは不可能だった――
――衝撃。次いで軽い浮遊感に見回れる。
理由は簡単、突如現れた《何か》に殴り飛ばされたのだ。
武器を持って僕と対立していた奴等は全員何かしらの武器を持っていた……それが格闘戦だなんて考えられない。
「誰だ!?」
すぐさま体勢を立て直して、僕を殴り飛ばした奴がいるであろう方向へ視線を向ける。
「久しぶりだな、会長……って言ってもあんたは俺のことを知りはしないか……」
誰だ?僕を《会長》と呼ぶという事は、少なくとも僕が生徒会長をこの学園でしていた時にここにいた奴なのだろうが……
「……そうだね、僕は君を知らない。でもまぁ……そんなことは戦いには関係ないことさ」
「確かにその通りだ……それじゃあ早速始めようか」
「そうだね……僕の勝利は揺ぎ無いだろうけど、少しは楽しめそうだ」
言い終わった瞬間に力を解放して、僕は爆ぜる様に地面を蹴った。
数メートル開いた距離を一瞬で詰めて、左右の剣を連続で叩きつける。
甲高い金属音が続けざまに響き、振りぬけるはずだった刃が止まる。
「期待通りの強さだ……さぁ、僕を楽しませてくれ」
「あんまり相手を見下してると……足元をすくわれるぜ?」
「やれるものならやってみるがいいさ」
「後悔……するなよ!」
そういって男は後方に跳躍した。
――煙で、相手の姿が見えない……
なるほど、この煙を使って戦う気か……
――だけど、小細工程度で僕は負けたりしない。

<Interlude-聖五->――昼
後方に跳躍して、会長から距離を取る。
未だ、濃厚な煙が視界を遮り、こちらから会長は見えなくなる。
――が、それは同時に向こうからもこちらが見えていないことを意味する。
そして、その上での最大の違いは、こちらは会長の位置が完全に把握できるという事。
――脳内に戦術情報が疾走する。
これなら……行けるか? いや、そんなもの、試すまで分からないか……
位置を調整しながら《聖賢》に呼びかける。
煙が薄くなり始めてる、完全に消える前にさっさと行くぞ《聖賢》!
(分かりましたマスター、サポートは任せてください)
左足で地面を力強く蹴り出して、一気に距離を詰める。
煙の向こうに人影が見えた瞬間に左肘を突き立てて、右足で地面を蹴り、さらに速度を上げる。
そのまま勢いに乗せて左の肘を叩き込む。
――甲高い音が響き、火の粉を撒き散らす。
次いで腕を引き起こし、裏拳を打ち込む。
――衝突音が響き、火花が散る。
着地した左足を軸に、右足で踏み込みながら右拳を叩き込む。
――火花を放ち、金属の砕け散る音が響く。
踏み込んだ右足で地面を蹴り、後方に跳躍する。
確かな手ごたえと、金属が砕ける音を聞いた。
よし、まずは一本……けど、同じ戦術はもう通じないだろう。
それ以前に、煙が無ければ今の攻撃では通用しない。
もうここからでも会長の姿を捉えることが出来るほどに煙は薄くなっている。
奇襲はもう無理……だろうな。さて、どうするかな?
ほとんど背後からの奇襲だったのに、よく対応してきたもんだ……
――にしても、剣一本を折ったのは大きいだろう。
これで向こうの対応能力は大幅に下が――
「……何?」
会長の手に握られる折れた銀の剣の先に蒼い光の帯が走っていく。
砕けた先を描くように光は模られて行く。
「冗談……だろ、おい」
一体何処にそれだけのエーテルがあるって言うんだ……
俺が見ている限りで、会長は何度致命傷を受けた?
それらをすべて回復してるのに……どうしてまだ聖具の修復に回せるだけのエーテルがあるんだ?
「――StartOfFlame」
無常にも力の名は告げられ、折れた銀剣は再生していく。
――っ……勝てるのか? 俺達はこんなバケモノ相手に……

<DREAM?>
黒い闇の中、漂う。昔のことを思い出しながら――
勝てなかった……兄貴に。
――勉強でも。
俺は、ずっと兄貴より下だった。
英才教育を受けて、育った兄貴と何時も比べられた。
――ゲームでも。
どんなゲームでも、俺よりも兄貴の方が上だった。
――喧嘩ですらも。
……それは当然の事だった。
中学1年生と小学4年生では、力が違いすぎる。
それでも、俺はそんな兄貴に何処か憧れていた。
いつからだろう?
その憧れが妬みになってしまったのは?
自分でもいつなのか分からない。
いつしか、兄貴も俺を見下すようになった。
――そして、殺し合いでも。
俺は負けたのだ。
完膚なきまでに兄貴に敗北したのだ。
……その結果、死んだのかな? 俺。
なぁ、叶? 俺って今、生きてるか?
返事は返ってこない。あぁやっぱり死んだんだ。
――守ることが出来なかった。
守りたかった人達を、裕太を、翔ねぇを……叶を――
俺は、どうして負けてしまったんだろう?
俺にもっと力があれば、もっと叶の力を引き出せれば……
畜生……『力が、兄貴を倒す力が欲しい』心のそこから力が欲しいと思った。
もう死んでるなら意味は無いけれど、せめて思うだけなら自由だろう。
【――そんなに欲しいか?】
声が、聞こえた――
……っ何?
【答えろ、欲しいのか?】
……欲しい。兄貴を倒せるなら、みんなを守れるならっ!
【ならば、受け入れろ。力を……我を】
受け……入れる?
【そうだ、受け入れろ。そうすればお前は我が力を得る事が可能だ】
でも、俺は死んで――
【いつ、誰がお前が死んだと言った? それはお前の勝手な妄想だ】
じゃあ俺は――
【お前は戦える。私を受け入れ新たな力を得られるのだ】
そうか、ありがとう……所でお前は何者なんだ?
【そんな事はどうでも良かろう? さぁ……もう行くが良い】
声がそう言った瞬間、黒い闇が消え去った。

<SCENE068>――昼
眼を開く、そこには見渡す限りの空が広がっていた。
仰向けで倒れてたのか……俺は。
……金属同士の弾きあう音が響いている。
誰かが兄貴と戦っているんだろう。
なぁ、叶? 誰が戦ってるか分かるか?
……返事は、返ってこない。
……ん? どうしたんだ、叶?
意識を……失ってるのか? 翼が展開されている以上死んではいないはずだし……
って、事は負担はあんまり掛けれないな。
『さぁ、あの男を倒すのだろう?』
――さっきの声が聞こえてきた。
『我を受け入れるのだ、さすれば、更なる力を与えよう』
――受け入れる、こいつの力も引き出す。
『良いぞ、もっとだ』
力を。
力を、力を。
力を、力を、力を――っ!
瞬間、全身が一度崩壊し、もう一度組みあげられた……気がした。
そう感じるほど力があふれている、圧倒的な力が……これなら勝てる。
(それでは今より新たな契約だ、我が名は《堕天》、汝の名を告げよ)
俺は、三枝 翼だ。
(そうか……では行くぞ翼、あの男を倒すのだろう?)
あぁ、そうだな……
仰向けだった体を引き起こし、次いで立ち上がる。
広がっているのは、いつもの校庭。
違っているのは、所々に、倒れている人がいて、誰か兄貴が戦っていることだけ。
――あれ? アレってまさか……聖五さんか?
かなりの速さで動いてるから、あまり詳しき分からないけど、聖五さんだ……
なんで……聖五さんに戦う力なんて無いはずだ。
じゃあ何で?
(何でも良いではないか……お前の目的は一人で、あの男を倒すことだろう?)
っ……あぁ、そうだな。兄貴との決着は俺の手で、俺一人で――
(知り合いなのなら、あの男に下がるように言えば良いではないか?)
もう行こう。
(了解した、我が力をさらに引き出してくれることを願うぞ、我が主よ)
あぁ、もっとお前を受け入れればいいんだな?
(その通りだ、分かっているなら良い)
瞬間、俺は駆け出した。

――to be continued.

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