EternalKnight
<黒白の極光>
<Interlude-蒼二->――昼
突如地上から放たれた黒い光の柱が、目前へと迫ってくる。
……完全に、自分が攻撃される立場に立つことを考慮していなかった。
それが……致命的なまでに次の動作への動きを鈍らせた。
「しまっ――」
瞬間、僕は何の動作を起こす事も出来ずに黒い光の奔流に飲み込まれた。
黒い閃光が身を焼く。
――痛い。
このままじゃ、死ぬ――
そして、黒い閃光はその力を出し尽くしたのか途絶えた。
――痛い。
皮膚が焼け爛れ、爆発的なエネルギーの奔流に骨も何本か折られたようだ。
――痛い。
けれど、ただそれだけ。……死んではいない、僕はまだ生きている。
「あはっ……あはは、あははは、あはははははははっ!」
死なない、今のような圧倒的な攻撃の直撃を受けても、僕は死なないんだ。
「今度こそ、完璧じゃないか。僕は……不死身なんだ」
コレで絶対に翼なんかに負けはしない――
アイツが僕より強いなんて間違いは、もう起こらない。
そうさ僕は全てにおいて、翼より優れた存在なんだから――
否、それは当然の事だ。そうでなければ、わざわざ僕を殺したアイツと、翼の力を使う必要がない。
「さてと、翼がくる前に――」
この傷を治して、僕に恐怖を与えた彼らを……殺ろう。
「StartOfFlame」
――紡ぐ。
アイツが僕を追い詰めた技を使って、今度は僕が彼等を追い詰めようじゃないか。
瞬間、紅のオーラが僕の身を包んだ。
黒い光に負わされた傷が治っていく。
紅の光が、僕の体を治していく。
「今の僕に、勝てる奴なんていない――そうさ、いるわけがない」
全身の傷は完全に癒えて、ただ今までをさらに上回る力を、自身の内から感じる。
「まずは、彼等……違うな、彼からだ」
僕は、金髪の男を瞳に捕らえたまま、全速力で降下した。

<Interlude-ルーグ->――昼
幻想種がとてつもない速度で接近してくる。
この速さじゃ絶対的なダメージにはならない。
だけど、全身が……本能が叫ぶ。
『今やらなければ、殺られる』と、死の恐怖にただ本能が叫ぶ。
脳が……体が、考えるより先に動いた。
〈穿て! フラガラックッ!〉
――神話に曰く、その刃は歯向かう者に報復する、輝く十字の剣とされる――
宝具の力の名を叫び、言霊にした瞬間。
俺の周りを飛ぶ、全ての魔術文字の球体が解けて、十字型に収束し、刃となり動き出す。
そこまでの工程に1秒。
幻想種はまだ、決して遠くはないが近くもない位置にいる。
あの幻想種の速度なら、残り三秒も掛からないだろう。
だがしかし、幻想種がこちらに近づいてくるより、疾く――
十字の剣は弾丸となり神速で飛び……幻想種を穿つ。
肩を、胸を、足を、腕を、足を、腹を、大腿を、頭を、腕を、胸を光弾が打ち抜く。
「くっ……がぁ……」
高速で迫ってきていた幻想種は動きを止め、そのまま地面に落下する。
〈やっ……た、のか?〉
〈どっちでもいい、止まっている今がチャンスだ、止めを刺すぞ!〉
ジョージが叫ぶ、確かにその通りだが……俺のリタリエイターは能力の発動に時間が掛かる以上、後ろに下がるしかない。
ジョージの宝具とジークの宝具の周りに力が集っていくのが分かる。
程なくして、ジョージの剣の周りは、異常な大きさの鞘のような物にしまわれ、ジークの剣は突起のついた黒い筒となる。
〈我が敵を打ち砕け……グラム!〉
――神話に曰く、その剣は神の槍をも打ち砕く、神に抗う人間の象徴とされる――
〈我が敵を断ち切れ……ドラゴンスレイヤー!〉
――伝説に曰く、その剣は邪悪なる竜を滅する、聖なる者の剣とされる――
二人が言霊を紡いだ瞬間――
白と黒の極光が地面に倒れる幻想種に向かって放たれた。

<SCENE065>――昼
学校の上空にたどり着き、上空から現状を確認する為に下を見下ろしていた。
……アレが幻想種なのか?
(多分そうだと思う、かなりの量のオーラを保有してるもの)
だな、エクソシストの人達に対立するような位置に居る事から考えてもアレに決まりだな。
……ここからでは詳しいフォルムまでは分からないが、人間型のように見える。
それに、《飛翔》のように羽が生えてるように見える。
天使でもモデルにしたんだろうか?
(でも、最も強いモノを想像したときに天使が思いつく人って言うのも変よね?)
だよなぁ……何かおかしい気がするんだが。
(どっちにしても私達がこの戦いに参加する必要はあまりなかったみたいね)
だな……
そう、幻想種は地面に倒れ、エクソシスト二人の宝具の直撃を受けようそしているのだ。
大分追い詰めてるな……あの一撃で終わると思うか、叶?
(そうね……私の見立てでは大方終わるでしょうけど、もしもの可能性も捨てきれないって所かしら)
そうか……なら、いつでも戦えるようにしておかないとな――
瞬間、黒と白の極光があたりを包んだ。

<Interlude-グレン->
「なるほど……だから俺達が選ばれたんですね?」
話には聞いてたけど、コレがWorldCrossGateか……デカイな。
「そういうことになる、新米にはちょうどいい仕事だろうからな」
(初の仕事が故郷の世界なんてなかなか無いんじゃないか?)
確かにな、そう言う意味じゃついてるな。
そんなことを考えていると――
「って事は、私はやっぱりお守りな訳なの、キョウちゃん?」
しんどそうにクオンさんが言う。
「あぁ、お前以外には代役が居ないからな」
(確かに、今回の任務の移動方法では、贋作者以外は共に目的地にたどりつけんからな)
えっと、なんか理由があったよな? 相棒、何でだっけ?
(もうそんなことも忘れたのか、相棒?)
悪かったな、俺はそんなに記憶力はよくないんだよ。
(それでは説明してやろう、転送の門……WorldCrossGateとは、移動距離を無視して世界移動が可能なワープ装置のような物なのだ)
それくらいは知ってるっての。
(……で、だな。まぁそんな便利な物があれば普通なら多用する訳だが、そうも行かない理由があるのだ)
そうそう、俺が聞きたいのはそれだよ。
(それはだな、転送の門で移動する先の世界を知っていなくてはならないからだ)
……そういえば、確かにそんな理屈だったよな。
(そして、《世界を知る》とはすなわち、長時間その世界に滞在するということなのだ)
――あぁ、それで俺とクオンさんな訳だな?
(その通りだ、元々あの世界の住人である、贋作者や、お前なら、その条件をクリアしてるわけだな)
OK、説明ありがとな、相棒。
「おい、グレン。聞いてるか?」
「あぁ、はい。何ですか?」
「……今から説明を始める、いいか?」
「はい、お願いします」
相棒との会話のせいで話を聞いてなかったみたいだ……
(人が説明してやったのに、俺のせいにするな)
はいはい……
「まず、改めて今回の説明をするが、参加するのは、双極の星グレンと贋作者クオンの二名」
双極の星……いまだに気に入らないんだよな、この通り名っぽいの。
「二人には転送の門を使い、君達の故郷の世界に行って貰う、目的は先程話したとおり――」
「確認されたCクラス聖具と、Bクラス聖具並みのエーテル保有体の回収、または破壊ですね」
俺の答えにキョウヤさんは肯きながら答える。
「そうだ、SクラスとSSクラスが行けば十分対処できるレベルの仕事だ、しっかり頼むぞ」
「分かりました」
……WorldCrossGateが起動するまで、後一時間――

<SCENE066>――昼
轟音と黒白の閃光が周囲を包む。
……あんなに派手に攻撃して学校は大丈夫なんだろうか?
爆風で舞い上がった砂埃や爆煙のようなものが発生し、ここからでは何も見えない。
(降りてみましょ)
そうだな……まだ倒せていないかもしれないし、俺達が加勢した方がいいだろ。
そう思って、徐々に降下して煙の中に入っていく。
視界が悪いな……
周囲に意識を張り巡らせて、集中する。
この煙では敵も見方も分からない。
特に幻想種に翼が生えている以上、俺が間違って攻撃される可能性も――
(翼、左から――)
「――ElderSign」
叶の声に咄嗟に反応し、旧き印を展開する。
剣指を結んでいない為、構成は甘いが、飛んできた衝撃波の様な物を防ぐ事が出来た。
退魔師の宝具の力なのか幻想種の力か分からない以上、迂闊に攻撃できない。
(声を出して私達であることを伝えればいんじゃない?)
そうか……それで行こう。
「翼です。攻撃をやめてください」
これで攻撃してきたらそれは敵だ、ShiningRainでも叩き込んでやればいい――
「――翼君……か。遅かったな」
――と、思っていたが、さっきの攻撃は武さんのモノだったようだ。
……それにしても、武さんって二刀流だったっけ?
――煙の様なモノも少しずつ薄くなってきている。まぁ、さっきまでに比べてだが。
そして、薄くなった煙の先に――
(茜ちゃんっ!)
――右肩を刃で貫かれた時乃さんを見つけた。
「……現状を教えてください」
時乃さんがあんな状態である以上、他の人が無事だとは思えない。
「こちらの被害は戦闘不能の見習いと正規の退魔師だけだ、幻想種のダメージの大きさは分からない」
見習いは時乃さんとして、正規の退魔師は一体誰だろう?
「負傷した正規の退魔師って誰なんですか?」
「……負傷じゃない、死亡だ」
冷たく、武さんが言い放った。
「ぇ……」
「戦闘不能ってのは、単純に怪我して戦闘が続行できないだけじゃない、死んでても戦うことなんて不可能だ」
「一体誰が――」
「父さん、だ……一人で幻想種と戦って……」
「そう……ですか」
なるほど、虎一さんの剣を持ってるから二刀流なのか……
「あんまり気にするな。それが退魔師の宿命だ」
「……」
「だから気にするなって。それより、ひとつ話しておきたい事がある」
「なんですか?」
「出現した幻想種の正体だ。以前言ったよな、幻想種は未練、怨念のある人間の魂の集合体だって?」
「はい、聞きました。確か集まった中で一番強い未練や怨念を持った魂が核になるんですよね?」
「そうだ。それで、核になった魂がもっとも強いと思うモノになって幻想種として出現する……」
「それで、今回の幻想種の正体が何か分かったんですか? 上空から見たときには人型に羽が生えてましたけど、天使か何かですか?」
「いや、違う。ついでに言うと普通なら絶対に分からない幻想種の魂の核となる者も予測……といってもほぼ確信してるが、それもわかった」
なんでだ? そんなの誰か分かるはず無いのに……
(幻想種は人間とほぼ同じように喋れるから、それで話してて分かったんじゃない?)
そういう考え方もあるか……
「それで、幻想種がとってる形って何なんですか?」
「――三枝蒼二……だ」
「!? じゃあ核となる魂も……」
無言で武さんが肯く。
「……で、でも、それなら大して強くないんじゃ――」
自分が一番強いと思うなんてとんだ思い上がりだ、現に俺にも紅蓮さんにも負けてるのに……
「自分で言ったことを忘れたのかい? 羽がついてるってな」
「まさか……」
「前に見たのが地下会議室のジョージさんとの戦いで、確信は持てなかったが……今、確信が持てた」
「つまり、幻想種……兄貴の翼は――」
「君の《飛翔》を見てそれを元に構築されたんだろうな」
(そんな……)
「それだけじゃない、他にも先端が斧の様な形の歪な黒の剣と、逆にシンプルな銀の剣も持ってた、コレに心当たりはあるか?」
――先端が歪な黒い剣? シンプルな銀の剣?
その二つには見覚えがある。いや、紅蓮さんの剣は銀と紅が混ざり合った剣だった筈だ。
「銀一色の剣だったんですか?」
「いや、所々赤かったと思うが……」
「なら、あることにはありますけど、能力までは分かりません」
紅蓮さんの聖具、過去の自分自身の聖具、そして《飛翔》……
まさか……自分自身の力と、自分を負かした相手の力だからか?
確かに、それをすれば、自分の知る範囲では最強の存在になれるかもしれない……
まずいな……《飛翔》の力だけならともかく、他の聖具の力まであるなら手のつけようが無い。
(待って、翼。おそらく幻想種の法則的に、再現された聖具には最低でも一度見た力しか行使できない筈よ)
「そうか、自分の知る限り最強って事は見ていない力は使えないのか……」
「確かにその通りだろうけど、何が『そうか』なんだ?」
突然独り言を呟いた俺を不思議そうに武さんが見ている。
「そっか、叶の声は俺にしか聞こえてないんですよね……」
「その状態でも会話できるんだな……」
「会話って言うより俺の思ったことが叶に直接伝わって、叶の伝えたい内容が頭に流れ込んでくる感じですけど」
「へぇ……」
――と、そんな話をしている内に煙がかなり薄くなってきた。

――to be continued.

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