EternalKnight
<託された想い>
#注意〈 〉の中は英語の台詞です#

<Interlude-武->――昼
思考が止まる――
「嘘……だろ」
俺の視線の先、高校のグラウンドのちょうど中心部に、その原因はあった。
黒い何かに踏まれている、片腕が切り落とされ、地面に倒れている体。それは――
「父……さん」
「やっと……仲間の到着かい?」
黒い何かが、こちらに顔を向けている。その顔には、見覚えがあった。
が……そんなことはどうでもいい。
「見たことのある顔が二人……だが、翼はいない……か」
「退けろ……」
呟く。そして、どうしようもなく昂った怒りが……爆発する。
「その足を、退けろぉ!!」
全身の氣が昂った感情に比例し膨れ上がる。
瞬間、俺は爆ぜる様に駆け出した。
疾風になりながら、黒天月に過剰に高まった氣を送り込む。
――曰くその斬撃は黒く、天を浮かぶ月の様だったとされる――
俺は、黒い何かに向かって刃を振りぬいた。

<Interlude-蒼二->――昼
振り下ろされる刃を軽く身を引いてかわす。
瞬間。かわした筈の刃の先から、黒い何かが打ち出され、僕の体を切り裂いた。
「なっ……」
今のは何だ?……斬撃が、飛んだ?
――あれがあの聖具の能力なのか?……いや、聖具の能力にしては威力が弱すぎる。
傷は決して浅くは無いが、致命傷には程遠い。故に、アレを使う必要も無い。
先程の複首竜の攻撃では砕けてしまった盾……アレなら簡単に無力化できるだろう。
「まさか、その程度の能力の聖具で僕に勝とうって言うのかい?」
僕の言葉を聴いているのかいないのか、先程の一撃を放った少年……黒崎武は地面にしゃがみ込んでいた。
その腕には、先程まで僕の足元にいた男が見える。
親子……だったか?
よく見れば似ていなくも無い。外見的な年齢から見ても間違いなく兄弟ではないだろう。
まぁ、そんなことはどうでもいいさ。
今は――
「幻想種よ、貴様の運命はここで尽きるのだ」
僕の周りを囲むようにいる。彼の仲間を先に始末するとしよう。
「ふん、真に最強になったこの僕に……勝てるはずが無いだろう?」
右手に《終末》、左手には銀の剣、背には白い翼、こいつ等の名は知らない。
だがしかし、僕の使っていた聖具と、僕を負かした聖具が併せて、三つもある。
勝てない理由が、否負ける理由が一体どこにあるのだろうか?
次の瞬間、僕を取り囲んでいた数人のうちの二人、銀髪と金髪の男がこちらに刃を持って接近してきた。
だが、今の僕にとって、あの程度のスピードのたかだか2対1など造作も無い事だ。
銀剣と《終末》で二人の男の刃を阻む。大した威力じゃない、十分に軽く蹴散らせる。
「――弱い」
一気に人数を減らすか……
両手の剣を振り、銀髪と金髪を押し飛ばす。
瞬間、地を蹴り、背に浮く翼を羽ばたかせ上空で停止する。
「さぁ、何人残るかな?」
黒い剣を地面にかざして力の名を紡ぐ。
「EndOfGlacier」
瞬間、凍てつく無数の弾丸が黒い剣の周囲に現れ、打ち出され、大地に向かって降り注いだ。

<Interlude-武->――昼
「た……ける」
「父さん!? 大丈夫なのか?」
否、大丈夫なはずが無い。
「こんな……身体で、無事……なはず……無い……だろ?」
その通りだ。見ればわかる程、この傷はもう手遅れだ。
「どうして、こんな……」
「お前……なら、知っている……だろうが……な、あの幻想種……は、龍次……の仇……だった」
――そうだった。奴は龍次さんを殺した鬼神クラスだった。
「それが……原因……と言えば……原因か、つい……柄にも……無く、熱く……なって……しまった」
そんなの当然だ。弟を殺した相手が目の前に居たんだから。
「まぁ、どちらに……しても、私に……勝ち目……など、無かった……がな」
「そんなこと、言わないでくれよ、父さん」
「武……私や……龍次……の、仇を打とう……と、考えるか……どうかは、お前の……自由だ」
そんなの決まってるじゃないか、俺はあの幻想種を倒す。
たとえ、倒せなくても……一矢報いてみせる。
「だが、命は粗末に……するな。お前は、黒崎の……剣を継ぐ、最後の……一人……なのだから……そして――」
父さんの声が途絶え、唇だけが動く。その唇が紡いだ言葉、それは。
――私の、自慢の息子なのだから――
そうして、父さんの動きは、止まった――
思考が停止して真っ白になる。
聞こえる、何かが聞こえる、何かが迫ってくる音。
「避けなさい!」
もうすぐそこまで来ている接近音をかき消す声が聞こえた。
次いで、迫って来た何かを誰かが斬り落とす。
「なんとか間に合った見たいね。武、ぼさっとしてないでさっさと武器を構えなさい」
そうだ、こんなところで殺られるわけには行かない。
「あぁ、そうだな」
父さんが自慢できるほどの男なんだ、俺は――
こんなところで、殺られて……たまるか!
左手で地面に落ちている、一本の剣を拾う。
すでに誰かに握られている剣を取る。
それを握っていた腕は簡単にそれを離し、その剣を握るのは俺の左手のみになる。
もとより握っていた、右手の剣。今、拾い上げた左手の剣。
両の手の日本刀をしっかりと握る。
握り締めた二本の剣の名は、右を黒天月、左を草薙の剣。
「アイツは、会長は俺が倒す」
「無茶よ、相手は幻想種よ!?」
「無茶でも、それぐらいするつもりで挑むんだ」
「……死ぬ気?」
「そんなつもりは無い、それより――」
俺は二本の剣を構えたまま視線を上に向ける。その先には会長の姿があった。
「えぇ、判ってるわ」
茜も上を見て、構える。
「次が、くるぞ」
「えぇ、同じ攻撃は何回しても無駄だって、思い知らせてあげなくちゃね」
俺は無言で肯いた。

<Interlude-蓮->――昼
「あら……」
氷で出来ているだろう弾丸を全て斬り落とすと、雫の声が聞こえてきた。
「どうした?」
そう言いつつ、雫を見つめると――
「なんだか妹が青春真っ盛り見たいで……」
――時果剣(じはかけん)で結界を張りながら暢気に妹の姿を見つめている。
「こんな状況でそれは無いだろ……」
「相手の子は黒崎の見習いさんみたいね」
コイツは何でこんな状況でそんな暢気なことを考えられるんだろうか?
幻想種に視線を移しながら思考する。
相手は仮にも幻想種だぞ? 実際に戦うのは初めてだが、今の技は手を抜いているようにしか思えない。
「何を難しい顔してるのよ、蓮」
「お前の気の抜けっぷりに驚いてんだよ……次、くるぞ?」
「あら、ほんと、敵さんもう次の攻撃の構え取ってるじゃない」
先程と同じ攻撃……のように見える。が……そんなことは無いはずだ。
俺はより一層意識を集中させ、次の攻撃に備えた。

<Interlude-ルーグ->――昼
複数の文字が折り重なって出来た球体が俺の周りを回る。
リタリエイターにエナジーを込め続ける。
俺の手に握られた短剣の周りに、氣に満ちた文字が浮かび上がり、解けていく。
解けた魔術文字は再収束して、球体を組み上げていく。
今ので、待機状態の力が4つ……まだ、こんな数じゃ足りない。
〈まだなのか? ルーグ〉
ノートゥングで上空より迫る何かを斬り落としながら、ジークが叫ぶ。
〈まだ4つだ……どうせなら最大数での一撃を食らわしてやりたい〉
ジョージとジークが降り注ぐ何かを斬り落としている間に、少しでも多くフラガラックの力を貯めていく。
そもそも、俺は一人で戦うことには向いていない。
俺の宝具……リタリエイター、現在確認されている中で唯一のカウンター型の能力を保持する宝具。
作り上げた幻想種は、恐らく太陽神ルーのフラガラックを幻想し、作り上げたのだろう。
事前設置型カウンター能力……同時に、味方に守ってもらえないと、設置することが出来ない宝具。
……だが、足を引っ張るだけ、活躍はみせる。
俺は、力をリタリエイターに込め続けた。

<Interlude-蒼二->――昼
「なんだ、全員残ったのか……なら――」
もう少し難易度をあげて見ようか。
さて、翼がくるまでに何人死ぬかな?
《終末》を再び地面にかざす。
「EndOfGlacier」
先程と同じ詠唱……繰り返される同じ力の行使。
しかし、今回はコレだけではない。
黒い剣の周りに氷河で出来た弾丸が浮く。
それが打ち出される直前。
銀の剣に力を込めて、言葉を紡ぐ。
「――Creation」
瞬間、氷河の弾丸と、十数本の剣が打ち出された。
「次だ……休む暇は与えないよ――」
もう一度《終末》を下にいる者たちに向ける。
「EndOfGlacier」
さらに先程と同じ動き。
「――Creation」
またしても十数本の剣と氷の弾丸が打ち出される。
アトは、休む暇を与えぬように、延々と機械的に同じ事を繰り返すのみ。
――少なくとも……何か反撃があるか、翼が来るまでは。

<Interlude-武->――昼
上空の会長が何かを打ち出す。
「さっきと同じ攻撃?」
「違うわ。何か……他のものも混ざってる」
「――剣?」
そう、それは剣だった。十数本の剣が、弾丸のような物と一緒に飛来してくる。
「武、全部叩き落すわよ?」
「そうしなきゃこっちが串刺しだろ?」
「――それもそうね」
俺は二本の刃を構え、神経を降り注ぐ弾丸と刃の迎撃に向けた。
雨のように降り注ぐ氷の弾丸と、それに混じって降り注ぐ剣。それを二本の刃でことごとく斬り落とす。
斬撃、斬撃、斬撃――
休む暇さえなく延々と降り続く剣と弾丸を斬り落とし続ける。
「っぁ――」
一瞬、茜の声が……聞こえた。嫌な予感がする。
「大丈夫か? 茜」
そう言いつつ、俺は迫る弾丸と剣を斬り落としながら、意識を茜にむける。
「大丈夫……」
そう言う茜の姿は……とてもこれ以上迫る弾丸と剣を打ち落とせる物ではなかった。
「そんな状態で大丈夫なわけあるか!」
そう、利き腕である右の肩に刃が深々と刺さっている。それでどうして戦える筈があるのだろうか?
「待ってろ、今そっちに行く」
そう言いながら、迫る刃を斬り落とすのを止め、茜の元に走る。
弾丸が当たる……冷たい。否、凍える。
それでも、それを無視してほんの少しの距離を走る。
女の子一人助けれない奴が、父さんの自慢になれるはずがない――!
たどり着く、茜の元に。
体の至る所が凍結しているが、間接は一箇所も凍っていない。
だから、まだまだやれる。
「茜、そこで休んでろ。俺がこの攻撃全部叩き落してやる」
出来る出来ないは問題じゃない。そんな事は関係ない。
「そう……でも出来る限りでいいわ。どうせこの戦いでは復帰出来ないでしょうから、いざとなれば見捨てて」
「見捨てない。俺は最後まであきらめない。お前が死ぬのは、俺が死んだ後だ」
命は粗末にする物じゃないけれど、いざとなればこの体を盾にしてでもそれを成し得てみせる。
父さんが自慢できる息子って言うのはそういう存在なんだと、俺はそう思ったから。

<Interlude-ルーグ->――昼
10個目の待機状態のフラガラックが組みあがる。
〈出来た!〉
コレで、大きなダメージを与えることが出来る。
〈やっとか……〉
剣と弾丸を斬り落としながらジークが呆れたように言う。
〈頼むぞルーグ〉
同じく俺を守りながら、期待を俺にかけるジョージ。
この二人が守ってくれたからこそ、今の俺の攻撃は成立する。
二人とも、一人で戦っても十分強いのに……
だから、その期待には答える!
〈ここからは俺の出番だろ?〉
そう言いながら、ジークが一歩下がる。
そう、フラガラックがもっとも効果的なダメージを出すには、敵である幻想種のより強い攻撃が必要なのだ。
ジョージが一歩前に出て、俺達二人を一人で守るような位置に立つ。
否、実際に一人でさっきまでの攻撃を防ぐのだ。
ジークが詠唱を始めると、圧倒的なエナジーがノートゥングに集まっていく。
その間にもジョージは一人で迫りくる弾丸と刃を斬りおとし、叩き落していく。
力が集う、集う、集う。
ノートゥングを巨大なエナジーの結晶体が蓋っていく。
そして、柄すらも結晶体に包まれ、ノートゥングは黒い筒となった。
結晶体には掴める場所が点在している……その突起のようなモノをジークは握り締める。
さらに結晶体に力が集い、集まり、一点に収束する――
〈ジョージ、準備できたぞ!〉
その声を聞いてジョージが飛びのく。
黒い筒は幻想種を捕らえ、展開していく。
〈我が敵を打ち砕け……グラム!〉
――神話に曰く、その剣は神の槍をも打ち砕く、神に抗う人間の象徴とされる――
ジークが叫んだ瞬間、黒い砲身より、圧倒的な黒い光が打ち出された。

<SCENE064>――昼
結界を解除して、学校まで全速力で飛ぶ。
叶、向こうについたらすぐに戦闘になるだろうけど、大丈夫か?
(えぇ、私は大丈夫。翼のオーラをエーテルに変換してるから余裕もあるわ)
そっか、なら大丈夫だな。
学校は目の前まで迫ってきている。そして、圧倒的な力も感じる。
が、その数が……二つ? 一体どうなってるんだ?
瞬間、天を貫く黒い光が地上から、空へと伸びた。

――to be continued.

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