小説 wish -願い事- 絶対なる者との会話(1) . 香澄は、自分に現在の日々を与えた人物とのやり取りを反芻していた。 「人」といっていいのかどうかわからないが。 溶けることのない深雪から生まれた氷河のような白い膚、通った鼻筋、眼鏡の奥の鋭い眼差し。 いかつさや荒々しさとは程遠い風貌ではあるが、その人物が放つ圧倒的な威風。 決して逆らうことのできない存在。 「いいか。自分の立場をわきまえろ」 その人物は立てた人差し指を香澄に突きつけた。 「運命を変えることは許されない」 . [*前へ][次へ#] [戻る] |