商い物 Just a Game 2 それからまた一月…。 進展のないまま淳さんとはズルズルと関係を持ったままだ。 洞察力に優れているわけでもない並スペックのオレには、本当に嘘を吐かれているのか、そうではないのかわからなかったから。 でも、一度珍しく勇気を振り絞って『好きだよ、ナツくんは?』と聞かれた時に、好き、と言ってみた。 そしたら、なんでかオレがウソつきにされた。 不信感がまた募った。 海さんには最近飲みに行くたびに、早く別れて僕のところはおいで、と言われるようになった。 海さんといるとドキドキするし、落ち着きもする。 そろそろ、潮時なのかもしれない。 「ねぇ、淳さん」 「ん?」 「今度外でデートしよう?」 「え、あ…いや。」 「忙しいですか?」 「そう、なんだ…。お客様の所へ行かなきゃいけなくて。あ、そうだ今度、得意先の方と飲むんだがお前も来い。」 「…はい。」 明らかに、オレと外を歩くのを避けた。 別に他人が見て恋人同士になんか見えないだろうに…。 オレの心はまた暗くなる。 そう言えば最初の頃は、オレが沈んでいるとすぐに気づいて、どうしたのか?と声をかけてくれた。 でも最近は、淳さんの愚痴しか聞いてない。 オレについて聞かれるのは、仕事の進捗と夜予定があるかどうかくらい。 わざとあからさまに沈んでる雰囲気を出しても、気がついてくれない。 …あれは、ただオレを落とすためにした行為だったのかな。 オレとの事は、ただのゲーム…だったのか。 「淳さん、」 「ん?」 良い上司だと思う。 目立つような功績を築いてないのに、可愛がってくれるし。 なんの取り柄もないオレなんかに構ってくれる。 でも、この人は悪い人だ…。 もう終わりにしよう。 「なんでもない、です。」 「そうか?あ、明日の予定は?」 「明日は1日外回りですよ。」 「直帰か。なら夜は空いてるか?」 「空いてますよ。」 「じゃあ、俺も仕事が終わったら連絡する。」 「はーい。」 脱ぎ散らかした服を着て、コンドームを捨てて玄関へ向かう。 「じゃあ、また明日な。」 「はい、気をつけて帰ってくださいね。」 帰る間際の触れるだけのキスがとても悲しく思えた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |