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商い物
黒揚羽の花 上
【親衛隊s×巻き込まれ平凡】

幼稚園児のような転校生が来て学園は荒れ狂った。
人の話を聞かず、一方的な偏見で物事の価値観を押し付ける転校生に落ちたのは、学園を束ねる生徒会役員や風紀委員会の2トップ、それから人気投票では上位の生徒たち。
それぞれの親衛隊が怒り狂い、制裁を下そうとしては失敗していた。



それでも治まらない怒りに、その矛先は転校生が連れ歩いていた平凡な生徒に向けられた。
八つ当たりと分かっているからこそ、呼び出すだけで手出しはしなかった。
それがいつの間にか、怒り狂っていた親衛隊も沈静化してしまった。



流石に何かがおかしい…、そう思ったのは特に怒り狂っていた生徒会親衛隊を持つ生徒会役員たち。
最近は、廊下で擦れ違おうが食堂で食事をしていようが、以前のように黄色い声をあげるでもなく、嫉妬の目を向ける訳でもなく…そう、無関心なのだ。



最早、彼らの視界にすら入っていない。
情報屋にどういうことか探らせると、その要因はあの平凡にありそうだと告げた。
だが、それ以上は情報屋もわからないと言った。
わからない、と言うよりは探りたくない…もしくは、知っているが首を突っ込みたくないという感じだ。



生徒会役員たちは生徒会親衛隊の活動拠点である空中庭園のある部室棟最上階へ訪れた。



そこで目にしたのは、和やかにお茶をしたり、テーブルゲームに興じる親衛隊員たち。
こんな彼らを見たことがなかったが、男子高校生らしいといえばらしい。



「あ、生徒会長様!どうなさいました?」

「あ、いや…あまり俺たちが来ても騒がないんだな。」

「あー。あのね、会長様、僕らが親衛隊に所属するのは保身も兼ねてるんですよ。」



一親衛隊が紡ぐ言葉に驚いた。
たしかに親衛隊にいるのは、可愛らしい顔の生徒ばかり。
集団に属することで、襲われるリスクを減らしたのだ。
もちろん、所属するに当たって尊敬する生徒会役員それぞれを選んで入隊したが、ぶっちゃけ今は友達と遊んでる方が楽しいしね〜、と語ると、親衛隊の友達に呼ばれてそちらへ去っていった。



「ねぇ、君…この間までいた平凡を知りませんか?」

「…え?」



副会長が自分の隊員であった生徒に聞くと、その子は怯えた表情を浮かべた。
すると、親衛隊員が和やかにしている広間の奥にある部屋からガチャリと親衛隊総隊長が出て来た。
何度見ても圧倒される美を持ちながら、生徒会入りを蹴り親衛隊に属した生徒、秋永玲斗。



「ようこそ、生徒会の皆様。」



ほぅ…と恍惚の溜息を吐くのは親衛隊員の中にもいる。
艶やかな黒髪、切れ長だがキツくない女性的な目、右目の下には色香を放つ涙ボクロ、紅を差したような赤い唇が笑みを浮かべていた。
秋永は学園の制服である黒い学ランの上から、常に黒地の着物を羽織るという独特なスタイルを持っていたが、それすらも美しさを際立てるのに一役買っている。
その姿から黒揚羽の君と呼ばれることもある。



そんな彼だが、常ならば、きっちり上まで襟を詰めているが、何故か今は全開で、その下のシャツもボタンが3つほど開いている。
漂う色香は凄まじいものがあった。



「あぁ、これはお見苦しいものを…」

「あ、いや…」



白魚の如く滑らかな手がボタンを閉じ、ところで、と秋永は問う。



「その、あいつが転校して来て以来ずっと引っ付いてたヤツが見えなくなったから…」

「彼のことが気になりますか?」



ひたりと向けられる目に、訳もなく身体が震えた。
生徒会役員たちは出て来ない声の代わりに、頷くしかなかった。



「そうですね…。良いでしょう。ただし一つ約束をしていただきたい。」

「あぁ…。」

「アレのことに二度と干渉しないと。」

「別に構わん。」

「約束ですよ。では、こちらへ…」



そうして案内されたのは、秋永の出て来た奥の部屋。




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