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煌爪術
血の匂い。ついでにみんなの声。
近づくにつれ、両方強くなることが分かる。
「な、んだよ!!これっ!?」
ジェイはすぐにみんなの所に駆け寄る。
「っ!!?」
うそ、だろ!?
俺は目を疑った。
血を流し倒れている、さっきのツインテールの少女。彼女に回復を唱え続けるノーマとウィル。
「お願いだよっ、フェモちゃん!早く、血、止まってよぉっ!」
「……ノーマ。もう、」
ポンとノーマをなだめるウィルに、ノーマは泣きつく。
……一体、誰が。
「シャーリィ!!シャーリィっ!??」
「シャーリィさん!しっかりして下さい!!」
セネルは、ぼぅっとしている金髪の少女の肩を揺すり、ジェイも必死に呼びかける。
360°見渡す。
ああ、在るじゃないか。
俺の居場所が。
「何故だ!?何故フェニモールを!?」
「ワ、レェェッ!!なんでじゃ!?殺す必要があったんか?!」
「団長、アンタ……」
バツが悪そうな団長に、転がる血のついた剣。彼を涙目で責め続けるクロエに、吼えるモーゼス。
考えなくてもわかる。
「おおっ!!やっと来たか、シャイロ!……早くコイツ等を皆殺しにしてしまえ!!」
嬉々とした表情で俺を迎え入れるアンタ。分かってる。
皮肉にも、俺を待ち望む時はいつも殺す時だけだった。
俺は、殺すためだけの道具。
そして、この場所こそが俺の在るべき居場所。
「……なんで、」
「どうした?!早くしろっ!殺すぞっ!!!!!!」
「……俺は、アンタを尊敬していた、のに……っ!!」
怒りで声が震えてしまう。
爪が光り輝く。
「俺は、アンタが到底理解出来ないっっ!!!!」
―ボトッ、
「ぎゃあああああっ!!!!」
アイツが剣を振り上げた瞬間。
俺はアイツの右腕を切り落とした。
「なっ?!」
ノーマ、ウィル、ジェイ、クロエ、モーゼス、メルネスに夢中だったセネルさえも声を上げた。
「死ねよ」
「貴、様ぁっ……!!」
「っ!」
押し倒されて片手で首を絞められる。
凄い力だ。
……死んだら、誰か悲しむだろうかと息が苦しいなかでぼんやり考えた。
「―待て、」
凛とした声がその場に響いた。
同時に団長が固まり、崩れ落ちる。
多分メルネスの力だろう。
「……メル、ネス?」
声の主は、全く光のない瞳の愛らしい少女だった。
「その爪の色……」
少し顔を歪めながら憎そうに呟く。
「……な、んだよ?」
「煌爪術、だな」
煌、爪術??
「なんなんですか、それ?」
声がでない俺を代弁してか、ジェイが待ちきれないと前に出た。
「ある人種だけが使うことの出来る爪術だ。」
「ある、人種?」
「私の一番大嫌いな人種だ。」
心底嫌そうに俺を睨み、俺の目の前まで瞬時にきた。
「っ!!?」
メルネスは俺に向き合い、振り返らずに煌髪人の青年に指示をした。
「―ワルター!やれ」
「ハッ!!メルネス!」
ワルターは少し嬉しそうに笑い、セネルに殴りかかる。
「ワルター!邪魔をするな!」
セネルを筆頭に仲間達が戦う。
「娘、」
びくりと体が反応する。
「煌我の力を持つ者よ」
「煌我、だと?」
じりじりと近付くメルネスを警戒し、剣に手をかけた。
「空」
そ、ら?
短すぎるメルネスの言葉に疑問符を飛ばしていると、メルネスは続けた。
「私と対等な力を持ち、似ていながらも正反対の存在。」
「煌、我」
ポツリと呟くメルネスは少し悲しそうだった。
「……メルネス?」
「ぐあっ!!!」
「おいっ……!!」
ワルターの強烈な一撃でみんなは倒れる。俺が駆け寄ると、かなりダメージを受けたのかうめき声をあげるだけだった。
それをみたメルネスはつまらなそうに空を見上げる。
「貴様らには、そう我の力を持つ資格などない。」
そう吐き捨て、俺達に手をかざす。
すると、碧色、蒼色の光が体から出る。
「小娘、貴様はもっと強くなくては煌我の力など無駄だ。」
俺を一睨みし、メルネスは宙に浮かぶ。
その光がメルネスに入った瞬間、体に力が入らなくなった。
「なに、これぇ?!」
ノーマが唸り、ワルターがセネルを嘲笑う。
「ふ、いい気味だな」
「クーリッジっっ!!!」
「くそっ!!」
ワルターがセネルにトドメをさそうとした瞬間だった。
「ぎひぃぃぃっ!!!」
「なんなんだ、この吹雪?!」
「むっ!?いかん!!」
「おわぁぁあっ!?」
突然吹雪が吹き、体がさらわれる。
俺の視界には真っ白な景色の中、寂しそうに見るメルネスしか見えなかった。
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