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煌我との対談






「かあさま?」


キョロキョロと辺りを見渡しても、母様は見当たらない。
不安になって、目いっぱいに涙を溜める。

「かあ……さまぁ」

しきりに目をこすり、我慢した。
泣くな、泣くな。
泣いたら視界がぼやける。
母様を見つけれなくなるだろ。
幼いながら言い聞かせ、人形を顔に押し当てる。


「……シャイロ?」

ふわりと細い腕が俺み包み、母様はここよと笑う。

「かあさま!」


俺の涙もすぐに消え失せ、顔に笑顔が映える。
母様はいつもこんな風に俺を驚かせる。
でも、あの日は違った。
母様が、いなくなった日は。
















「……ぅ」


目を覚ますと、辺り一面真っ白。
ここはどこだと考える前にそうか、と納得した。
俺、消えたんだった。
はあと息を漏らすと、さっきの夢が脳裏に浮かぶ。

紅茶色の髪を揺らし、片手にお気に入りの人形を持って、不安げに当たりを見渡す小さな女の子。

……あれは、俺か。





「お、気がついた?」

「!!?」

知らない声に身構えると、目の前にはニヒニヒと笑う煌髪人の青年が。

「……お前、誰だ?」

俺が眉間に皺を寄せるとつれないなー、と言い、うぅんと唸る。

「今、お前が一番求めてるもの?」

あはーと笑うコイツに、コイツはヤバいと後ずさる。

「ちょ、引くなって!えっとねー。……煌我なんだけど」

「……はぁ?」



思わずすっとんきょんな声を挙げた俺に苦笑いした煌我はなんだよーと頭を掻く。
……だって、こいつが煌我!?
こんな軽そうなヤツが?


「猛りも静も真面目なだけなの!」

眉をひそめると煌我が、俺心読めるからねーとウインクした。
少し落ち着いてきて、諦めの溜め息をついた。

「はぁ、……誰だよ?」


「あ、そっか。……お前等でいう、地上のそう我と静の大地のそう我だよ」

「……そうか。そう我は2つあるからな」
「特に猛りは固すぎなんだって!俺のこと大嫌い大嫌いってはねっかえってさぁ」

「……そう、なんだ」
ぶーぶーと愚痴る煌我に、俺は少し拍子抜けする。
なんだ、こいつらも普通の煌髪人なんだなと安心。


「じゃなくて!!」

「な、なんだよ?」

俺が真剣な顔をすると、煌我は姿勢を正し妙にかしこまる。
そわそわする彼を見て、真剣な雰囲気には慣れていないのかと頬が緩む。


「煌我って何なんだ?」

「……そーだなぁ、」
どう説明しよう、と唸るが煌我はすぐに口を開いた。


煌我曰わく、
煌我とは、空の力を司るもの。
煌爪術は、人間と煌髪人とのハーフだけが使うことができる。


「だから、俺は使えるのか」

「誇りに思えよ!煌我使えるヤツはお前ぐらいなんだからな!」

威張る煌我を横目に、前向きだなと関心した。

「……そーだな」

「シャイロ、……お前、紋章がだいぶ広がってきたな」

「!?」

ばっと肩を押さえると、煌我があちゃーと俺を呆れたように見る。
てかコイツいつみたんだ?

「早く契りを交わさないとなー」

「……契り?」

「……は?」
煌我はまさか知らないわけじゃあないよなと眉間に皺を刻ませる。

「えぇっと、結婚しないと蝶になるぞみたいな?」

「随分可愛らしい言い方だなぁ」

ちょっとイラっときたが、違うのかよと腕を組む。
煌我は嫌みたらしく溜め息を深くつく。



「そんなもんじゃないぜ。契りを交わさなければ、テルクェスとなって消滅する」

「なっ!!?」

「ハーフにはよくあるんだよ。そうなった奴らがたくさんいるんだ」

「そんな……」

小さく漏らした俺の声に煌我はすばやく反応した。

「なになに?恐くなった?」

「……いちいちムカつくんだよ、煌我は。」
俺が睨むと煌我はへへ、とペロっと舌を出した。

「相手分からないの?」

「いや、仲間だけど……」

首を振る俺に煌我は、わぉ!頑張ってと手を叩いて喜んだ。

「ん?そもそもさ、契りってなんなんだよ……?」

「ああ、そうゆうことー」

妙に納得している煌我に顔をしかめていると、煌我が少し照れたように言う。







「心から愛し合って、口付けをするんだよ」



「…………は、」


思わず浮かんだのはジェイの顔。
む、無理!恥ずかしすぎる!
てかジェイは弟だみたいなもんだし!!
頬を染めた俺に煌我は照れんなって〜と背中をバシバシ叩く。


「……まぁ、あと何年かは保つだろうから、せいぜい愛を育めよ〜」

「…………」

「おい、シャイロ?」
「……今は、仲間との時間を大切にしたい」
昔の俺なら全く考えないだろう発想に自分で少し気恥ずかしくなる。


「……そうだな。お前にとって、初めての仲間だしな」

煌我はにんまり笑って俺の頭をわしゃわしゃ撫でた。
煌我は髪に絡めた指を解き、静かに俺を見据えた。



「煌我?」

「……俺にも仲間が、友達がいるんだ。」


「おい、煌我!」

煌我の声はだんだん遠くなっていき、姿も薄れていく。

「頼む」

「煌、」





「猛りを、救ってやってくれ」






ぼやける景色の中、煌我の声だけはしっかり頭に残っていた。



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あきゅろす。
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