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気まずい雰囲気





揺れる茶色い瞳を、
噛み締める唇を、
小刻みに震える肩を見て、



―ああ、僕がこの顔をさせているのかと酷く後悔した。







「……う、」

「……ぐおー」

「お、重た……」

ドサリという音と共に体が軽くなる。
僕にのしかかっていた変態……モーゼスさんを一蹴して、寝返りを打つと朝日がもう出ていた。目を細めると同時に、金色に光る細い線が目の端に映る。

なんだこれ?
無意識に手を伸ばし、触れるとさらさらと指をすり抜けた。
ぼーっとする頭の中、浮かんだ単語。


「……髪?」


「……ん、ぅ?」

誰の、と考える前に漏れた声に目が見開く。
彼女の紅茶色の髪がさっきより位置の高い朝日の光で金色のようなオレンジに光る。


「あれ…?……おはよ、ジェイ」

目の前で目を細めて微笑むシャイロさん。小さく欠伸をして、寒いのか体をすり寄せてくる彼女に、僕の頭は勢いよく一気に覚醒した。



「お、はようございます!」

「?」

顔が熱い。
この人は、馬鹿すぎる。
少しは自覚を持ってほしい。

はあ、とため息が漏れた。
今はこんなことしてる場合じゃないんだ。早くそう我の全てを知らなくちゃ。
顔を引き締めると、まだ寝ぼけているシャイロさんがぎゅっと僕の服を掴む。

「どうしました?」


「……な、ジェイ、」
それはまるで不安げな子供のように弱々しく呟く。






「1人で、背負うな」


あまりにも小さい声は僕に届くはずもなく、はい?と聞き返すと彼女は寂しげに笑っていた。














「な、んだ?」

海に浮かぶたくさんの塔。
何故か、少し怖く感じた。


「煌髪人達が何をしようとしているのか、今見えたのが答えですね」

「あんな塔、知らないよ?」

「僕達の知らない、秘密兵器かもしれません」

「そう我砲、みたいなのか?」

「どんな性能があるのだろうな」

「これから、明らかになるでしょう」


ジェイの答えを最後に、みんな足を進めた。




「遺跡船の周囲の海が光っているように見えた……」

「秘密兵器が発動する瞬間か?」

「可能性は高そうですね」

ウィルの問いにジェイが興奮気味に唸る。そしてまた次に進む。

「はぁ……」
「どしたの?ロロ?」
「……なんでもない」

……駄目だ。先に進むにつれて嫌な予感がする。
だんだんと足に力が入らなくなってきた。息をつくとグリューネさんと目があったので微笑むと、グリューネさん
が俺の横に来て、手を握ってきた。
うおぉ、グリューネさん積極的!
見上げるとグリューネさんに手を引っ張られた。

「だめよぉ、無理したら」

「……はい」

笑顔のグリューネさんに従うしかできない俺だった。







「う、わ」
すんごい津波だ。
遺跡船も、大陸も全てを飲み込むような津波。やっぱり、怖い。

「遺跡船の力で、あがあなでっかい波を、おこしたっちゅうんか?」

「だとすると、莫大なエネルギーが放出されたことになりますね」

ジェイの言葉に、自然にみんなの意識が集まる。

「秘密兵器の威力は、もしかしたら、そう我砲をはるかに上回るかも」

「そう我砲以上って……」

ガドリアのシンボルをぶっ飛ばしたヤツ以上って、かなりヤバいもんだろ。




「ここまで来たんだ。最後まで、見届けてやる」

セネルの言葉に、みんなが頷いた。








「どおもお〜〜っ!」

あたしら、ヘラヘラ同盟で〜す!
とお辞儀をするノーマとグリューネさんにみんなが顔を引きつらせる。
……こ、この馬鹿!!

「……は?」

「ふざけてる場合かよ」

明らかに怒気を含んだ声色のジェイとセネルに苦笑い。
でもノーマなりに盛り上げようとしてんだろうな。

「い〜からだまって見る!」
睨み返してコホンと得意げに笑う。


「え〜、グー姉さん!」

「何かしら」

「誰かの正体がそう我だったなんて、驚きましたね〜」

「そうねぇ」

「そんなわけで、そう我ちんに質問!」

……そう我ちん?
みんなが顔をしかめた瞬間だった。



「グー姉さんの今日の下着、何色ですか!」
「「「!!」」」

反応すんなよ、男達。



「なっ、何を聞いている!そう我を馬鹿にしているのか!」

「ナイスツッコミ、クー!それよ、そのノリよっ!」

「おっ!俺もノるー!」


「えーっとねぇ。今日は……。」

「あら?忘れちゃったみたいねぇ」

「あ、着るのをかっ!?」

「「「「!!!」」」」

だから反応すんなって。
あ、とうとうジェイもか。

「ナイス、ロロ!」

「こ、こら!」

「なんだよ〜、クロエだってそうだろ?」
「なっ、何をっ!?」

ばっとクロエが後ずさる。
おいおい。顔あかくすんなよ男共。




「そ、そうなんか?」

「お、おい!モーゼス!!」

「……何考えてるんですか?お願いします。死んでくださいモーゼスさん」

「……全くだ」

ウィルがはあとため息をつく。
ジェイと目があったので、苦笑いするとジェイはげんなりしていた。
「うひゃひゃひゃ!!!」

爆笑していると、ノーマが慌てて次は〜っ!!とあわあわする。

「……お前ら、」

まだ爆笑している俺とノーマに、ウィルがのしのしと近づいてきたからまた殴られると身構えた。



「気を遣わせて、すまんな」


初めて聞く優しく、小さな声に驚いた。
ウィルの優しげな顔に頬が緩む。


「そだぞノーマ。俺も協力するからな」

楽しくいきたいし、と言うとウィルが殴る替わりに頭を撫でてくれた。
あまりにも優しい手に少し心地よくて目を細めると、ウィルが微笑んでいた。


「別に、これくらいわねっ……」

ノーマもへへへ〜っと照れたように笑う。



今、セネルとジェイが衝突しているのはなんとなく気づいていた。
セネルは煌髪人、煌髪人って言われてイライラしてるし、メルネスの不安もある。
ジェイはセネルを試している。
なぜだかはよくわかるよ。
きっと、この先セネルを傷つける、大きな何かがあるんだろう。
だから、それはきっとジェイの分かりづらい優しさ。


「ちょっと?なにしてんの?」
ノーマが、俺の背をぐいぐい押す。
そういえば、ノーマの性格に救われなかったことはないな、とぼんやり考えた。






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