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言わなかった理由


「ここだキュ!」


モフモフ族に連れて来られて来た海岸は、すごく綺麗で暖かかった。
俺は、モフモフの可愛さに癒されながら、とてつもない疲労感に教われた。




「疲れた〜。も〜あたし限界」



ノーマの声を筆頭に、俺らは死んだように眠りこける。


「「「キュッキュー!!!?」」」

キュッポ達の声が俺の頭に響いた。










「起きんかい」

「ぅ、」

「おーい、シの字?」

「……うわぁ!へ、変態がっ!?……あ、モーゼスか」

吃驚した。
いきなり目の前に立つなよ。
なにか言いそうなモーゼスは無視して、辺りをみると真っ暗だった。


「地上の状況が分かりました。」


ジェイの言葉に一気に覚醒した俺は、立ち上がりジェイを見据えた。

「今のところ、戦争は始まっていません」
……今のところ、か。
まぁ、団長半殺しにしちゃったし、さすがにクビだとは思うけど、やっぱ居づらいな。


俺はそそくさと、その場を離れた。










「っ!また、か」


いきなり見えた、さっきの所の白版。
すごく寒そうだった。
みんな見えただろうな、と空を見上げた。




「ここには、空がないんだったな」




夜風が気持ちよくて、結んでいた紐を解くと、赤茶色の髪が風に流れた。
ふと、上着を脱ぎ捨てアンダーシャツになると、ノースリーブからのぞく紋章。

「……また、広がってる」


はぁ、と息をつく。
最初は刺青みたい!と思っていたが、もう笑えない。
紋章は鎖骨辺りまで伸びていた。


「……どうしたら、いいんだよ」

「ここにいたんですか……って、ちょっと!!?」

「ジェイ??」

振り返ると、顔を紅くしたジェイが。

「なんていう格好してるんですか!?」

「……アンダーシャツじゃんか」

純情め、と笑うとジェイが紋章に目を細めた。

「……広がって、きてませんか?」

「!!」


ジェイの質問に、俺は肩を隠した。何も答えない俺に、ジェイは全く、と話を変えた。




「なんで、逃げたんですか??」
逃げたという言い方にムカついたけどその通りだと納得。

「居づらいだろ」

「……仲間なのに?」

「仲間?」

「……はい。違うんですか?」


「……あのな、俺はガドリアの騎士団長補佐。お前等とは一緒になれないんだ。
……お前等と出会ったのも、偶然だろうな。」
俺が天井を見上げると、ジェイが俺の腕を掴んだ。



「あのですね!」


珍しく声を張り上げたジェイに驚く。


「僕たちは、偶然出会ったんじゃない。運命に導かれたんだ」



「運、命?」

「僕、はそう信じたい」


「だから、僕らは皆集まったんだ」



ジェイの呟きに俺は目を閉じた。





「俺だけ、爪術が戻らないことも?」

「はい」


「俺が煌爪術を使えることも?」


「すべては、運命なんです」



「……だったら、俺は運命に嫌われてる」
「……大丈夫、ですよ。」


優しく言うジェイに、涙ぐむ。



「捨てないでくれ。お前、だけは、俺が使えなくなっても。」

怖かった。凄く怖かった。
ガドリアに居たときみたいに、駄目になったら捨てられる。
人が殺せなくなったら、捨てられてしまう。
だから、俺は強くなくちゃいけない。



「それが、言わなかった理由ですか。……馬鹿ですね」


「てめっ!?」





彼女の気持ちが、分かった気がする。


道具として扱われ、自分は必要とされているという錯覚を覚える。

だけど、本当は自分は殺しの道具だと思いしらされる。



何度も、何度も必要とされるために、まるで生きる意味を探すみたいに人を殺し続ける。





……まるで、昔の僕じゃないか。




キュッポ達と出会って、家族の暖かさを知る前の、僕。
ソロンの所で、苦痛に耐えていた時の僕だ。


だから、僕が彼女にこんな僕らしくない言葉をかけるのは、きっと僕と重なるからで、きっと同情。





「……ずっと、仲間ですよ。みんな同じ気持ちです」

彼女の目に、僕の偽善はどう映るのだろうか。









ジェイの呟きに、涙が溢れた。


「……っ、ごめ!!」




コイツは、強くなくても仲間だと言ってくれる。必要だと言ってくれる。

優しく言い聞かせるジェイが、随分大きく見えた。




ガキみたいだ。
ジェイに泣きつく自分が。





海岸から、俺とジェイを呼ぶ声に俺はまた涙するのだった。





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