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お手紙3
高野さんのいない部屋は、急に静かになった気がした。
あれから。
高野さんが俺に手を出してくることはない。
俺と晩ご飯を一緒に食べて、
少ししたら「おやすみ」と言って自分の部屋に帰る。
何がしたいのかがわからない。
いやまぁ、きっと、俺と。
俺とごはんを食べるためだけに、来てるんだろうけど。
最近高野さんがますますわからない。
高野さんは、
こんなに身の回りの世話を焼いて、
こんなに見返りのない、ことして。
俺をどうしたいんだろう。
俺とどうしたいんだろう。
わからない。
わからない。
わかるのは。
俺の家の合鍵は、絶賛使用中で帰ってくる予定はさらさらないということくらい。
あぁ、もう。
色々考えるのはやめよう。
「あ、そうそう…」
そういえば、今月の携帯電話の請求書が、届いていたんだっけ。
さっきとってきた手紙の束を鞄から取り出し、
ソファに居場所を確保する。
そこから携帯電話の請求書を漁りだして。
うん、今月も特にいつもと変わらないな。
まぁ、
携帯電話なんて通話機能くらいしか使わないんだから、そうそう高いことはないんだけど。
「あとは…」
こっちの白い封筒の方。
いったいこれは何だろう。
封もしてない様子を見ると、直接手で投函されたものっぽいけど。
手で投函って。
管理会社さんか何かだろうか。
いや、
だったら何かしら、宛名がある筈。
だとしたら。
まあ、
考えてもしょうがないよな。
考えすぎかもしれないし。
なんだか気味の悪いそれを。
恐る恐る開封してみた。
中には、小さなメモ紙が1枚入っていた。
「えっと…『いつもお前を見ている』、うん、そっか、なるほど」
ちょっと、思考が停止する。
「うわぁ…」
ちょっと、嫌な予感はしてたけど。
典型的だ、典型的すぎる。
嫌がらせか、脅迫か。
こんな手紙書かれるようなことした覚えはないけど。
この手の人って、些細なことがきっかけだったりするから、どれが引き金かなんてわかんないし。
でもこんなことするくらいだし、
俺、そこそこ恨まれちゃってるかもしれない。
これは
ちょっとばかり、厄介なことになってきた。

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