Eenie,meenie,miney,mo.
生徒会室。そこは萌えのパラダイス。
めくるめく妄想の世界へようこそ。
と言うわけで。只今生徒会室にお邪魔しております。
え?何がどうなったか?特別なことはしてないよ。がっつり関わってるだろと言われればそれまでだけど、一歩ぐらいは引いたところにいたいから。
ただもうすぐ新歓だねと言っただけ。
それに食いついた転校生君。企画を行うのが生徒会だと知って副会長達に質問ぜめ。そんでもって忙しいだろうという話になり、気づけばなぜか手伝いをすることに。
もちろんオレも一緒に。
一匹狼くんと爽やか君も。
できることは限られていて、量は多いが難しいことはないので気が楽。でもこれ、本来ならば親衛隊が手伝っているはずのことなんだよね。色々と大丈夫なのか心配。
会長は何も聞いてなかったらしく、来た瞬間に目を見開いて驚いていた。でも、すぐにそっぽを向いただけで追い出されはしなかった。
生徒会室というものは、一般生徒立ち入り禁止なのだとずっと思っていた。けれど違ったらしい。特に禁止されているわけではないとは副会長から聞いたこと。
現に親衛隊が差し入れなり、手伝いなりに来るとか。
親衛隊。
結局お呼びだしは、転校生君と関わりのあるところ全制覇した。それぞれの主張が結構異なっていて少し面白かった。
というか、親衛隊じゃない一般生徒にまでお呼びだしされたのには正直驚いた。
転校生君の見た目をもうちょっとでもいいから身綺麗にしてくれ。今のままであの人達といるのは目の毒だ。といったと陳情から、少し声のトーンを落とさせろという苦情まで。
果ては先生から転校生君の勉強を見てやれという命令も。
………ここまでくると自分が巻き込まれ平凡ポジなのか保護者ポジなのかわからなくなってきた。
まぁ、この前リンチしかけられたし。巻き込まれ平凡でいいはずだ。
制裁。そう言えば、不思議なことにこれだけの親衛隊がいて、お呼びだしが被ったことは一度もない。ダブルブッキングしたらどうしようとも思っていたのだけれど。
それともこれはあれか。あれなのか。親衛隊間で話し合って今日はどこが呼び出すか決めているのだろうか。かなり気になる。
そんなことを考えながら、渡された書類をトントンと整える。
役員でない四人は真ん中の応接セットに腰かけて作業している。オレの隣に転校生君。転校生君の向かいに爽やか君。爽やか君の隣に一匹狼君。
集中力の途切れた転校生君を一匹狼君が叱り、爽やか君が励ましてる。そしてその様子を役員全員がチラチラと見てる。
それを横目に、グッと大きくのびをしたら骨が鳴った。
「………中臣先輩」
「………何か用ですか。水瀬君」
「そろそろ休憩にしましょう」
「やったぁー!」
「わかりました」
おぉ、ナイスタイミング。結構疲れた。
「じゃあ、オレ、飲み物いれてきますね」
「あっ」
腰をあげた瞬間、なぜか大きな声を出した会計。何事かと見ると、目をさ迷わせた。
「何ですか?」
「………え〜と、その、確かクッキーあったから、それもお願い」
「あぁ…はい。わかりました」
首をかしげながら給湯室に向かう。どうも、副会長には嫌われてるけど、会計には避けられてるってか怖がられてる節がある。なぜだ。
一匹狼君には憐れまれてるし。書記と爽やか君にいたっては眼中にないって感じだけど。
因みに、飲み物のリクエストを訊かなかったのは不要だから。ここしばらくずっと一緒に過ごしてたせいで、各人の好みはしっかり頭に入ってる。
転校生君はジュースだけど、なかったので会計と同じココア。副会長と爽やか君は紅茶をストレートで。一匹狼君はコーヒーのブラック。書記もコーヒーだけど、砂糖とミルクはその時の気分で入れたり入れなかったり。そして会長は………
「お待たせしました。………あれ?」
準備を終えて給湯室を出ると、座る場所がなくなっていた。
オレのいた場所に会計。転校生君を挟んで副会長。そして一匹狼君の隣に書記。ソファは一杯。
「おい!どうすんだよ!壬允の場所なくなっちまったじゃねぇか!」
「えー、さっきまで真行ちゃんの隣にいたんだからもういいじゃん。オレだって真行ちゃんの隣にいたい!」
「仕方がないのです。誰かには犠牲になってもらわなくては」
「でも…っ!」
「………オレのことは気にしなくていいよ」
むしろ少し離れたところからの方が、萌え観察しやすいし。ふふふ。
クッキーとそれぞれの飲み物を置いて、一旦会長席に向かう。
「会長もどうぞ」
「っ………あぁ」
近づいた瞬間、肩がビクッと跳ねた。カップと小皿に取り分けたクッキーを置いても、顔を上げもしない。
さて、どこに座ろうかと踵を返そうとしたら、会長が勢いよく顔をあげた。しかも驚きに目を見開いて。
「………な…なん、で?」
「………何がです?」
わずかにどもった会長に首を傾げれば、うっと言葉を詰まらせる。なぜか震えている指が示したのは、今置いたばかりのカップ。
「違いましたか?」
「………違わ、ねぇ……でも、どうして……?」
ぼそぼそと、必死に言葉を紡ぐ様子の会長が何か……可愛い?あれ?何か心なしか瞳が潤んでるようにさえ見えてきた。幻覚か?
これ完璧受けっ子だよね?めちゃくちゃおいしい。あれ?でも何で今?
カップの中に入っているのはミルク多めのミルクティ。砂糖も一つ添えてある。
一緒に遊んでいなかった会長の味の好みを知っていた理由は単純。会長の親衛隊だ。先日お呼びだしされた際に、いつのまにかいかに会長は素晴らしいかという話になった。
その時に聞いたのだ。
けれど、口をついて出た言葉は別のモノ。
「……知ってますよ。会長のことですから」
「っっっ!?」
にこやかな笑みでこの台詞は完璧気のある素振り。転校生君に対してなら絶対にしない…んだけどヤバイ。ほとんど無意識だった。
会長の顔が一気に紅潮した。切れ長の瞳からは涙が溢れそうになってるし、唇はわなわなと震えていて言葉になっていない。なのに、目を逸らすこともできずにじっと見つめてきて。
何これヤバイ。めちゃくちゃ可愛い。ヤバイヤバイ。例えるならズキューン!だ。てかこの会長の反応って疑いようもなくそうだよね。何で。いつのまに?そんなに接触してなかったはずだけど。
あぁ、でも思い起こせば最初からそうだった。
食堂に現れた時から会長は妙にそわそわしていた。特に会話をしたわけでもないのに、転校生君に興味を持ったのはオレの親友だと言っていたからか。
目が合うと眉間にシワを寄せたり、そっぽを向いてあまりこちらを見なかったりしたのも、今の様子を見る限り極度の緊張と照れからくるものだったのだろう。
今だって、ちょうどオレの作業が一息ついたところで休憩にしようと言い出したし。
それに、これは考えすぎかもしれないけど、風紀に匿名の通報をしたのも会長じゃなかろうか。
親衛隊同士、横の繋がりというかなんというかはやっぱりあるのだろう。そこで会長の親衛隊が副会長の親衛隊の情報を得て、そこから会長に話が伝わったとしたら。
勘繰りすぎな気もするけど、でもそうだったらいいな。
手をのばしてそっと頬に触れると、ビシリと固まる。
普段、檀上や遠目で見ている姿とはかけ離れていて物凄く可愛く感じる。これがギャップのなせる技か。
転校生君がなにか叫んでるけど、それどころじゃない。
「会長。隣で休憩してもいい?」
「っ!?」
一瞬、目を見開いてそれから急いで何度も頭を縦に振る。あぁ、もう。そんなにしたら目が回るってのに可愛い。可愛い。
さっきから、可愛いとしか出てこない。自分がなるとしたら溺愛攻めの自覚はあったけど、まさかここまでとは。
何かをするなら、誰かのためと決めていた。
その相手を、やっと、見つけた。
会長さん。君に決めた。
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