Confusion!!(修正前)
2.
それから静雄さんは、再び「ノミ蟲殺す殺す殺す…」と呟きながら私の手をグイグイ引っ張りながら歩を進めた。
やっぱり掴まれていた手は痛かったけどーなんだかとてもあったかかった。
♂♀
「いーざーやーくーん。
あーそーびーまーしょっ!」
静雄さんが新宿の某高級マンションの扉を蹴り破ろうとした時ー
「なーんで、シズちゃんが俺のマンションの前にいるのかな?」
『苦々しい』という表現が似合う笑みを浮かべながら、私が今1番顔を合わせたくない人ー折原さんが苛立たしげに呟いた。
私は存在を気が付かれたくなくて、静雄さんの後ろにこそこそと隠れる。
「……お前を殴りに来たからに決まってんだろう」
静雄さんは口だけで笑顔を作り、その他の部分は全身全霊で怒りを満ち溢れさせている。
「なんで、殴られなくちゃいけないのかな?」
「ムシャクシャしたからだ」
「……いい年してそういうジャイアニズム100%な台詞は良くないよシズちゃん」
「うるせえな。
あえて言うなら……手前が怪しいからだ」
唐突な静雄さんの言葉に、折原さんは僅かに顔をしかめた。
「怪しいって何が」
「今、俺の街で騒いでる辻斬りの件……
手前は、どこまで絡んでる?」
ストレートな物言いに、折原さんは呆れたように首を振った。
「なんで俺が絡むのさ」
「わけがわかんねーで物騒な事件は、99%手前が絡んでるからだ」
「残り1%を信じてくれないかな……」
「1%でも手前が信じられる要素のある奴だったら、多分俺と手前はもっと上手くいってただろうよ。
なあ……イザヤ君よぉ?」
静雄さんの顔にみるみる血管が浮き出ていく。
何も知らない人が見たら何かの病気なのではないかと疑う程に。
「辻斬りの件が無かったとしてもよぉー、最近のブクロはなんか変だ。手前が原因だろ、ええ?一体何を企んでやがる」
「酷い言いがかりもあったもんだね」
折原さんはにこやかに笑いながらもー既に両の手にはナイフが握られている。
そして、彼はこう言った。
唐突に。
あまりにも唐突に。
「あれー?そこに隠れてるのってもしかしてさあ……
珠音じゃない?」
ビクンッ。
この流れでまさか自分に話し掛けられるとは露ほども思っていなかった私は、思わず肩をブルッと震わせた。
……バレてしまったからには仕方ない。
いや、もしかしたら解っていながらもわざと言わなかったのかもしれないけど。
私は静雄さんの背後から姿を現し、折原さんを真っ直ぐ見つめた。
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