Confusion!!(修正前)
1.
「し……静雄さんッ……待って下さいッ……」
私は足早に歩く静雄さんにグイグイと手を引っ張られながら息も絶え絶えに言った。
でも、静雄さんは「ノミ蟲殺す殺す殺す…」と呟いていて私の話は全く聞いていない。
というか、静雄さんの握力が強すぎて手が痛い。
彼なりに抑えてはくれてるんだろうけど……手から静雄さんの怒りがひしひしと伝わる。
突然、静雄さんが立ち止まった。
「うわぁっ!?」
いきなり彼が動きを止めた為、今まで引っ張られていた私は見事に静雄さんの背中に顔が激突する。
「お前……」
静雄さんが話を始める。
「お前、何であの時無茶しようとしたんだよ。あぁ?」
……明らかに私に対する怒りだよね、これ?
でも……
「あの時……?」
「眼鏡の女の子が刺されそうになった時だよ……何で!何で自分を犠牲にしようとしたんだよ!?バカか!バカなのかお前は!」
私は、自分が何故怒られているのか解らない。
「だって……杏里ちゃんが刺されそうだったので……庇おうと思って……」
「ッバカ野郎!
だからって、お前が犠牲になるこたぁねえだろうが!下手したらお前死んでたかもしれないんだぞ!少しは自分をいたわれよバカ!」
「でも私……放っておけなかったんです。杏里ちゃんは私の大切な後輩だから」
「そうかもしれねえけど……
それでも!珠音が刺されたらッ……俺も、セルティも、門田達も、新羅も……みんな悲しむに決まってんだろうが!」
「そんな事ありま」「少なくとも!
少なくとも……俺は……俺はッ……すげー、傷つくんだよ……」
「静雄さん……」
気が付かなかった。
私の軽率な行動が、こんなに人を悲しませるだなんて。
だって、今まで私は1人ぼっちで、周りには味方なんて1人もいなくて、こんなに間近で私の事をちゃんと見てくれる人なんて存在し得なかったから。
「静雄さん……あの……
私……皆さんにとって必要な存在になれているんですか…?」
「あ?今更何言ってんだよ」
静雄さんが私にデコピンをする。
なかなか強烈な痛みが額を襲った。
ああ、頭がジンジンする。
「俺にもーアイツらにもーみんなお前が必要なんだよ」
「ッ……」
私の目から落ちる透明な雫が、ポタポタとアスファルトを濡らして行く。
「っ……悪りぃ、言い過ぎちまった」
「いえ、静雄さん。違うんです」
この涙の理由(わけ)はー
「私っ……嬉しくて……
こんなに、人に必要とされる事っ……無かったから……」
ダメだ。喋る度に涙がどんどん溢れ出てくる。
俯いていると、温かくて大きな手が私の頬を伝う涙を遠慮がちに拭った。
「……ありがとう、ございます」
そう言って小さく微笑むと、その人はそっぽを向いて私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「わっ」
顔はちゃんと見れなかったけど、ちょっと照れ臭そうにはにかんでいるのが見えた気がした。
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