F 「逃がさん……逃がさんぞ!ディセンダー……ムヨ!」 突如ムヨの目の前にウィダーシンが現れた。 「え?」 「ムヨ!!」 レッドが斧を持って走るが、間に合わない。 「……本当は、あなたは、」 ムヨがそう呟いて、剣が振り下ろされた。 その時、急に天井が割れた。 「なんだ!?」 慌てるレッド達。ウィダーシンも一瞬だけ動きを止めたが、すぐにまた剣を振り下ろした。 が、その剣がムヨを切ることはなかった。 「大丈夫か?ムヨ」 「ロイド!!来てくれたんだね!!」 「当たり前だろ!」 天井から現れたロイドがウィダーシンの剣を受け止めた。 その時、また天井が割れて赤い長い髪の人物が現れた。 「崩襲脚!」 「ぐっ!」 「ルーク!」 「簡単に捕まってんじゃねぇよ!」 ルークはムヨにそう言ってからロイドを見た。 「チッ。ちょっと遅かったか」 「悪いなルーク!」 そしてまた天井が割れて最後の一人が現れた。 「リオン!!」 「む、ムヨ……」 リオンは息切れしていた。 「だ、大丈夫?」 「そ、それはお前のほうだろう!僕は平気だ!」 「貴様ら……!!」 「秋沙雨!」 ロイドが剣を弾き返してから反撃に出た。 「牙連崩襲顎!」 ルークも反撃する。 「ボクだって!サイクロン!」 ムヨが風を巻起こした。 「今のうちだ!ムヨ!」 「あ、うん!」 ロイドがムヨの手を引いて走り出した。 「あっ!ずりぃぞ!」 ルークも後に続く。 「みんなも先に走って出口のほうへ!」 「ああ!」 レッド達も走り出した。 「任せたぜ!リオン!」 「リオン!」 ムヨがリオンのほうを振り返る。 「月閃光!」 「ぐっ!」 ウィダーシンが怯んだのを見てリオンも走り出した。 「みんな!ありがとう!」 走りながらムヨが笑って言った。三人もその笑顔を見て安心したように笑った。 「……で、だ」 リオンがロイドをにらんだ。 「へ?」 「いつまで手繋いでんだよ!」 ルークがムヨからロイドを引きはがした。 「ムヨ!!」 「あ、ルキ!!みんな!!」 ルキが走ってきてムヨに飛び付いた。 「もう!あまり心配させないで下さい!」 「ご、ごめんねルキ……」 「無事でよかった……」 「ルキ……」 「うわーん!ムヨー!」 「ぶっ!」 ムヨの顔に勢いよくモルモが飛び付いた。 「離れてよモルモ!」 「オイラ、心配で……」 「うん、ありがとう」 離れないモルモをアルクが剥がした。 「アル兄」 「急にいなくなるな」 そう言ってアルクはムヨの頬に触れた。 「心配、したんだ」 「……ごめんね、アル兄」 「それになんで呼んだのが僕じゃなくてレッドなんだ」 アルクがそう言ってムヨの両頬をつねった。 「いひゃい!いひゃいよあるにぃ!」 「「「(ムヨが呼んだのは俺(僕)じゃなかったのか!)」」」 そして今さら呼ばれたのがレッドだったと気付いたムヨバカ三人組。 「いひゃいってば!」 「うるさい」 「あ、あるにぃがおかひいよきちくだよ!」 「アルは拗ねちゃったんですよね」 「拗ねてなどいない」 「まあまあ!そろそろ離してやれよアル!」 スタンに言われてようやく手を離した。 「確かになんでレド兄だったかっていうとね、ちゃんと理由があるんだよ」 「理由?」 「レド兄はね、ボクのヒーローなんだ」 ムヨは少し照れながらそう言った。 「なんだかんだで頼りにしてるんだからね!レド兄!」 「ああ!任せとけ!」 レッドが嬉しそうに笑う頭を撫でた。 「あ、そうだ!」 ムヨはロイドに近寄った。 「危ないところを助けてくれてありがとっ!」 「ああ!レッドばっかじゃなくてちゃんと俺も頼ってくれよな!ちゃんと、守るからさ」 ロイドが少し照れながらそう言うとムヨも少し目をそらした。 「俺もだ!」 「ぼ、僕もだからな!」 「うん、ありがとう」 「さて、そろそろ戻らねぇか?カノンノが待ってるぜ」 チェスターがそう言った。 「うん!帰ろう!カノンノやみんなのところへ!」 ムヨがそう言うとレッドが勢いよく走り出した。 「レッド!?どうして走るんですか!?」 「早くカノンノにムヨは無事だって伝えてやらなくちゃ!」 「させねぇ!」 チェスターもレッドを追いかけて走り出し、仕方なくセネルも後を追った。 「大変だね、姉さん」 「いつものことよ」 ただ呆れるジーニアスとリフィル。リフィルは若干諦めているようだ。 「腹減った」 「もう!リッドったら!」 「それなら戻ったら私が何か作りますね」 「わーい!ルキの料理だ!オイラもむぐぅ!」 「このバカモルモ!」 アーチェがモルモを捕まえた。 「空気読みなさいよ!二人の邪魔しちゃダメに決まってんじゃないの!」 「そうだ。邪魔はダメだぞ、モルモ」 アルクがアーチェからモルモを受け取ってティアに渡した。 「モルモ……可愛い……」 「しばらくモルモを頼む」 「ええ!喜んで!」 「私なら、別にモルモがいても構いませんのに……」 騒がしい一同が前を歩く中、ムヨが少し振り返った。 「ウィダーシン……あなたは一度も本気を出さなかったね」 そして更に小声で呟いた。 「あなたは、ボクに助けてほしかったの?」 「ムヨ?」 「あ、ごめん!今行くよ!」 慌てて前を歩く仲間を追いかけた。 「私は……」 本気を出せば、ディセンダー達の攻撃をくらうことなどなかっただろう。 「何故、本気を出さなかった?」 何故、ムヨを殺せなかった? 「助け、て……レド兄」 「ロイド!!来てくれたんだね!!」 ズキン 「なんだ?傷が痛むのか?」 どうして、私と共に来てはくれないのに…… 「……そうか。私は、あの者が……ムヨが、欲しい」 そのためには、あのレッドというディセンダーは邪魔だ。 そして、あのロイドという男も早々に始末してくれよう。 「もう次は、加減などせん」 お前がその場にいようとも。 ま実はまだ終わらない← [*前へ][次へ#] |