Long 『HUNTER×HUNTER』
6
「恋愛都市アイアイぃ〜?」
「そv」
・・・と、言う訳で;
地図に表示されてしまった恋愛都市とやらに行く事となってしまった。
笑いながら近寄ってくるヒソカを軽く睨もうかとも思ったけれど、情報収集を任せてサボっていた俺が文句を言うのも失礼な話しで…
ヒソカの口にクッキーを押し込むだけで我慢しておく。
「!?…なんだい、これ」
珍しく驚いたヒソカは、それでも害が無いと解ってそれを飲み込むと、不思議そうに俺の持つクッキーの缶を覗き込む。
くるっと回してヒソカに見せると、引きつった笑いで俺へと視線を向けた。
「…何のつもりだい?」
「んー…恋愛都市へのささやかな反抗?」
誤魔化すように笑って目の前にあるヒソカの胸板を押しながら立ち上がると、クッキーの缶に蓋をした。
まだ残っているクッキーが缶の中で音を立てて転がるのを聞きながら、それを鞄に仕舞った。
未だに文句を言い足そうなヒソカの手を引いて飛び降りると、そのままヒソカを引っ張って歩き出す。
こっそり振り返って覗き見ると、ヒソカは珍しくもむすーっと子供みたいにふくれっ面…ちょっと、面白い。
「もう一枚いる?」
鞄を揺らすと、からんっとクッキーが音を立てる。
とりあえず、機嫌を取っておこうかと笑いかけた。
返事が無くてどうしようかと思うと同時に、ヒソカに引き寄せられてしまって、ヒソカの腕に包まれた。
・・・作戦じゃないだろうな?
「覚悟しててよ」
・・・後悔先にたたずとはよく言ったものですね。
誰かついさっきの俺に言ってくれ!
巨大なハート(顔付き)が城のような建物の上から伸び、それをかこむ城下町のような街が恋愛都市アイアイ。
どこからともなくアイーンというある意味、耳馴染んだ言葉が都市から響いてくる。
「・・・恥ずかしそうな所だ」
「でも、いかないと他に情報ないよ」
知ってるよ!
ぴったりとひっつきながら尻を撫で回しているヒソカを押し返しながら、アイアイ言うてる街へと足を踏み入れた。
どっちみても美男美女の嵐・・・あれか、ギャルゲーと乙女ゲー(だっけ?)をリアルに体験しようって都市か、ここは?
きょろきょろと辺りを見回しながらあるいていたら、角から駆けだしてきた少女が俺にぶつかって倒れてしまった。
尻餅をついている彼女に手を差し伸べると、優しく抱き起こしてにっこりと愛想笑いを浮かべる。
「大丈夫?ごめんね。怪我してない?」
俺、女の子には優しいよね。なんて我ながら苦笑しつつ、立ち上がった彼女に首を傾げてみせた。
それでも彼女は不機嫌そうに俺を睨み付けると、服の埃をはたき落としてふんっと顔を逸らす。
「もう!どこ見てるのよ!…ああっ!おニューの服が汚れちゃったじゃないの!!」
初めてのリアクションで一瞬固まってしまった俺の横を走り抜けた彼女は、速攻で俺の斜め後ろに立っていたヒソカに突っ込んだ。
はっと我に返ってヒソカを振り返ったら、小さな彼女の両肩に手を当てて自分から引き剥がす。
「君がぶつかったんでしょ?」
ヒソカが冷たく言い放ち、彼女をとんっと突き放す。
後ろにつんのめった彼女を俺が抱き留めるけれど、なぜか彼女は頬を少し染めてヒソカを見やっている。
「うっ…あ、あなた達がちゃんと見てなかったのがいけないんだから!」
そう言い放った彼女は、俺を突き飛ばしてどこかへと走っていってしまった。
そしてなぜか、わざとらしく(?)名前と住所がバッチリ書かれた定期のようなものを落としていく……
こっち来る前に読んでいた少女漫画にも似た様な展開があったし…もしかして、こういうのってベタな展開ってやつ?
「あのキャラは口喧嘩しないと知り合えないキャラみたいだね」
「あー…つまり、俺はイベント失敗ってこと?」
「そうみたいだね」
でもさ、それって逆に言えば…
あの子はヒソカに惚れる可能性が出来たって事だろ?
・・・待て、俺!?
あの子はゲームのキャラだから!
それに別に…ヒソカとか……っ!!
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