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君にくちづけ(∞ 310)
 いつも、いつも、子ども扱いして。子どもだからって、馬鹿にするなよ?

「オーヴっ!」

 いつものようにティーダは後ろから自分よりも小さな体を抱きしめる。ティーダにいきなり抱きしめられた小さな体…オニオンナイトは一度驚きながらも、その正体を知って呆れた溜息をつく。

「ティーダ…暑いから離れてくれる?」
「うぉお! オーヴが冷たい―! 子ども体温なのに冷たい―!」
「喧嘩売ってんの? 僕、魔道書を読むのに忙しいんだけど」
「いーじゃん別に。それに、ほら、俺の膝の上で読めばいいだろ?」

 オニオンナイトはやんわりと断ったがティーダはそれに構うことなく、ほんの少し離れた位置に座り直すと「座れ」と言わんばかりに膝を叩き、それを見たオニオンナイトは大きな溜息をついた。

 オニオンナイトが心を許してからというものの弟分ができて嬉しいのか、ティーダは何かとオニオンナイトを構うようになった。
 年下ならばジタンやティナもいるだろうに、と言ったが、ジタンは友達、ティナは年頃の女の子だから、同じようには扱えないと言った。それきり諦めたのかオニオンナイトは何も言わなくなった。

「むー…。だったらいいッスよ。フリオやセシルたちの所に行ってくるッス」

 至極残念そうに呟いたティーダがソファから立ち上がろうとしたとき、オニオンナイトは間髪いれずにティーダの膝に座った。
 やはり、突っぱねていてもティーダの傍にいたいのだろう。

 素直じゃない弟分の可愛い甘えにティーダは嬉しそうににやけると、兜を取ったオニオンナイトの金髪を撫でる。
 オニオンナイトは「子ども扱いしないで」と言ったが、ティーダの手を振り払わない所が満更でもないみたいだ。

 しばらくの間、オニオンナイトは本に集中していたが、少しだけティーダが動いたことでオニオンナイトは本からティーダに意識を向ける。
 オニオンナイトが振り向いた時、ティーダは少しだけ眉間にしわを寄せていた。

「どうしたの?ティーダ」
「うぅ…足、痺れたッス…」

 それを聞いたオニオンナイトは呆れたような表情をする。確かに、ずっと自分が乗ったままでは足の血管が鬱血して痺れてしまうだろう。
 ほんの少し考えればすぐわかる事なのに、どうして分からなかったんだ。
 …まぁ、そんなおバカな所もティーダの魅力なのだが。

「よいしょ」
「うぎゃっ! オーヴ、動かないで欲しいッス…!」

 何気なく尻を浮かせてとん、とティーダの足を刺激すると、よほど痺れているのかティーダは涙目で抗議する。それが何とも嗜虐心を疼かせて、オニオンナイトはわざとティーダの足を刺激していった。
 そのたびに悲鳴を上げるものの痺れがよほどひどいのか、ティーダは涙目になりながらもオニオンナイトから逃げようとしない。
 これは好機、と思ったのか、オニオンナイトはティーダから見えない位置で意地の悪い笑みを浮かべた。

「…ねぇ、僕が子ども扱いしてほしくない理由って、何だと思う?」

 オニオンナイトの攻撃に必死で耐えていたティーダは突然の問いに目を瞬かせる。
 オニオンナイトはぐるりと体を反転させてティーダの膝の上にどすんと体重をかける。それにまた痺れが走ったのか、またティーダは顔をしかめる。しかめた顔のティーダにオニオンナイトは言葉を続けた。

「僕はね、ティーダの弟分で終わるつもりはないよ。僕は君に、一人の男として見てもらいたい」

 オニオンナイトの言葉に意味がわからないとでも言うように、ティーダは目をぱちくりさせる。
 「分からないのならば、分からせてあげる」と言ったオニオンナイトはティーダに跨ったまま、彼の唇に自分の唇を重ねた。

「絶対に振り向かせてあげるから、覚悟していなよ」

 その後、ティーダは顔を真っ赤にしたがオニオンナイトに乗られているために身動き一つ取れず、小一時間後に誰かが部屋に帰ってくるまでオニオンナイトからのキスに耐えなければならなかったという。

君にくちづけ End お題配布元:猫屋敷

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あきゅろす。
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