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君色に染まりたい(012 4`10)
 カオスの陣営でフワフワ揺れる金色の髪。
 その持ち主は自分の飼い主を探してカオス陣営内を歩き回っていた。

「セフィロス、どこいったのかな」

 金色の彼、ティーダはぴょこぴょことした足取りで保護者であるセフィロスを探す。
 セフィロスは出かける前に、『自分の持ち場から動くな』と言った筈だが、何時間たっても戻ってこなかったうえにティーダ自身が大人しく待てないという性質を持っている。

 とうとう、怒られるのを承知で痺れを切らして出てきたようだ。

 ティーダはしばらく歩いていると、セフィロス以外に自分に構ってくれる黒衣の魔人を見つけ、そのマントに飛びつく。
 飛びつかれた魔人、ゴルベーザはとつぜんマントにかかった重さに驚くが、その正体を見ると兜の下で微笑んだ。

「ゴル!」
「おお、ティーダか。…セフィロスはどうした」
「セフィロスはガーじいに呼ばれた。ゴルはなにしていたの?」
「私か? 私は本を読んでいた。ティーダも読んでみるか?」
「うー…。頭ぐるぐるする本みたいだからいい…」

 幼い物言いにくすりと笑ったゴルベーザは、セフィロスがいない今の間だけでも可愛がってやろうとティーダを手招きする。
 ティーダは何の警戒心もなくゴルベーザに近寄ると、その足の間にちょこんと腰かける。
 もちろん、可愛がるという意味は素直な意味の方で、ゴルベーザはティーダを膝に抱えながら読書を再開した。

「ゴル、この本には何が書いてあるの?」
「ああ、これは月の民が書いた書物だからな…。ティーダには読めないかもしれないな」
「うーん、内容は面白そうだから、俺も読んでみたい」
「…よし、私が音読してやろう。それならばティーダも読めるだろう」
「やったー!ゴル、大好き!」

 子犬のように自分にすり寄ってくるティーダに大人となってしまった実弟にはない可愛さを感じたゴルベーザは、大人しくしていなさいと頭を撫でると、自分が読んでいる所から音読を始めた。

 ゴルベーザの膝の中にいるティーダは彼の持つ純粋な輝きと同じように本の内容に一喜一憂しながら、とても楽しそうに聞いている。
 自分にとっては何度も読みすぎて飽きてしまった本を、こんな風に興味をもたれるのはとても新鮮な気持ちになる。

「(ああ、そうだな。ティーダは“特別な”戦士だからな…)」

 ティーダは元々、光に属する戦士であるということからも十分に特異性があったが、彼の持つ光の輝きは混沌や秩序の戦士たちの中でも異彩を放っている。

 もちろん、秩序の戦士たちの心は光で満ち溢れている。だが、彼らの心は完全な光ではない。それぞれの心の中には多からず、少なからず、闇が存在する。
 カオスに所属する者はその闇が大きくなりすぎたもの。現に、自分とジェクトは心の中に光を持つが、闇が大きすぎる故にカオスに属した。

 それと、元はコスモスであったティーダ以外に二人いるが、カオスに所属した時から闇を孕むようになり、僅かに残っていた光も今はくすんでカオスの操り人形となっている。

 だが、セフィロスによって連れられてきたティーダだけは、不思議と闇が見つからない。
 ほぼ全ての記憶を失っても、闇の軍勢に属しても、輝きを失わない幼子のように純粋な太陽。
 その光はティーダ本人の知らない間に戦士たちの指標となり、魅了し続けていた。

「ゴル、はやく次読んで! 俺、読めないんだから」
「ああ、分かった。すぐに読もう」

 ティーダがせかしたのでゴルベーザは慌ててページをめくり、音読する。自分の膝の上にティーダがいることで自分が光に染まれるのではないか。
 そんな錯覚を心の中で嘲笑すると、ティーダの要求通りに本を読み始める。

 その微笑ましい光景はセフィロスがガーランドの小言という愚痴から解放されるまで続いていた。

君色に染まりたい End お題配布元:猫屋敷

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あきゅろす。
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