フェンス裏のトイレE
しょうじは人肌でどろりとした感触で目を覚ました。
はじめは何だかわからなかったが、思い当たってしまって絶望に落とされた。

「(うんこだ…)」

トイレの床のタイルの上にべったりと座り込んで、洋式便器にもたれかかった状態で気を失っていた。
立ちこめる強烈な臭いによって、嫌でも記憶がよみがえってくる。

「(うっわさいあく…)」

なにが最悪って、後始末を何一つしてくれないゆうたが最悪だ。
もともとそういう奴なのは承知だが。
そして問題のゆうたはというと姿が見当たらない。

「くっそお…どーすんだよこれ」

鉛のように重い腰を上げる。
身動きするたびに足元でどろどろと揺れる軟便が、ぞっとするほど気色悪い。
しかし、その非日常的なシチュエーションは、また興奮をも引き起こしているのは否めない事実だった。
なんとか両足で床をふみしめると、うんこがしり、ふともも、ひざ裏、すねを伝い落ちていった。
その感触に鳥肌が立つ。
ガタ、と個室のドアの向こう側で音がして、ふいにドアが開いた。
思わず身をすくめるしょうじ。

「お、しょうちゃん起きた?」

ゆうたが何食わぬ顔で入ってきた。
しょうじはフルチンで、しかも今ので少し反応してしまったというのに。
しかしそれ以前に疑問が浮かんだ。

「あれ?カギって」
「外からは掛けれんから、デッキブラシでつっかえ棒してたの。で、これ」

話を逸らされて、差し出されたのはちりとり。

「は?え、なんだよ」
「うんこ片付けなきゃでしょ。これですくって流しなよ」
「あ、ああ…」

妙に納得してしまった。
とにかくこの場をなんとかしないと帰るに帰れないので、ちりとりを受け取ってかがんだ。

「これから掃除でちりとり使うたびにうんこのこと思い出すね」
「ばっ!おまっ!」

そういう魂胆だったか。

「ほら、早くしんと帰れんよ。あんま遅くなると部活って言い訳もできんし」
「お、おお」

気を取り直してちりとりの先をうんこの泉に浸けるしょうじ。
茶色の汚濁をすくうと香りが鼻につく。
それを便器に注ぎ、またちりとりを床へ。
三度ほど繰り返すと、なんとも気恥ずかしいようないたたまれない気分になってきた。
この惨めたらしい姿は、できればゆうたに見られたくない。

「片付けひとりでできるからさ、堀井先に帰っていいよ」
「んー?やだ。居る」

さっきの話の流れから、帰ると言ってくれるのを期待したのに。

「な、なんでだよ」
「しょうじが自分のうんこ後始末してるとこ見てたいから」
「!!」

ゆうたはどこまでいってもどうしようもない変態だったらしい。
そして、そう言われて自覚してしまったのがくやしいが、しょうじも見られることを性的に意識してしまう。
もう真顔で続きをすることはできない。
ただならぬ胸のざわめきを抑えながら、しょうじはちりとりを握りなおした。

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