NARUTO
九
誰もが喜ぶ夏休み。けれどナルトはそうでもなかった。
おかしい。
自分がおかしい。
そう思うようになったのは、あのカカシと補習した日。
カカシではなく、シカマルに対しての自分がおかしい。
何と無く分かってはいるが、なんと不利なものか。
シカマルに恋をしてしまった自分がいた。
「ナルト、これ水泳部のな。」
『・・・泳ぎてぇ!』
さぞかし気持ちがいいだろうと感じながら用紙を受け取る。
『なに、この海合宿って。』
「まんまだろ、広いし力つけるのに打ってつけだ。」
こう暑いとそう言った部活が羨ましくかんじてならない。
泳がなくてもいいから水を頭から被りたい。
被りたいが着替えがない。
なんならいっそ帰りに泳ぐか、等ぐだぐだ考えていれば頭にこつりと軽く痛みを感じた。
『・・・叩いたな』
「何用紙睨んでんだ」
『水浴びしたいな、って思っただけ。』
「それ、俺だって思うし」
空調は稼動しているものの、節電な為設定温度は高い。
さっさと終わらせるぞ、と促されてナルトも仕事を始める。
暑さで集中力は以前より衰えてしまってはいるが、それでも終わらせていた。
「やべ、学園祭予算出してなかった。」
『は?』
いきなり何を、と思うが今から組んで置かないと間に合わないのはナルトだって知っていた。
「資料どこだっけ・・・」
『シカマル少しやすんでて。俺見てくるから。』
「あ?・・・わりぃ」
疲れが溜まったんだろうとナルトは資料が置いてある隣の部屋へ向かった。
『・・・うわぁ、あっつ!』
ドアを開けるとむせ返るような熱気に眉を顰める。
サウナに入っている気分になりながらも学園祭資料を探した。
『あれ、こっちじゃなかった?』
この前はこの棚に入っていたのに。
手前から一つずつ奥の棚へと探していく。
『・・・あっつ』
額から汗がでて腕で汗を拭った。
ワイシャツを上下に揺らして風を作り、やっと資料が見付かった。
『なんでここにあんだよ』
変な所に置くな、と呟いて戻った。
『シカマルー、あったっ。』
「サンキュー、茶入れたから飲め」
はい、と資料をソファーに座っていた彼に渡しお茶を貰った。
『ありがとう。てかあそこサウナだしー・・・』
ワイシャツを揺らしながらお茶を一気に飲み干して、シャツの袖で汗を拭った。
「ハンカチどうしたよ」
『あー・・・かばんの中』
意味ねえ、と一人笑うと額にひんやりしたのが触れた。
「それで冷やしとけ」
『あ、りがと・・・』
かちこちになったおしぼりだった。
その冷たさに目を細めてそのまま熱を冷ます。
「頬っぺたも赤いぞ」
『っ、暑いのが悪い』
頬に触れた手が少し冷たかったのと、驚きで微かに肩が揺れる。
「なぁ、今日香水やってるのか?」
『だから俺はしないしゅ・・・っ!』
呆れ顔で向くと、首筋に顔を近付けていたシカマル。
「なんか・・・匂い違うんだよ。」
『俺本当にわかんな、ひぅっ!』
ちろ、と首筋を舌先で舐められ慄くナルトの身体。
「味、しねぇな・・・」
『するか!何アメみたいになっ、舐めてんだ!』
ばくばくする胸の動悸と羞恥で吃る。
『暑さで頭ぶっ飛んだ?!』
こんな行動が初めてでそうとしか思えなく、苦しかった。
「あー・・・かもな」
『ほ、ほら、これでも当ててスッキリすればいいって・・・んうっ!』
悪辣な笑みをを浮かべるシカマルに、ナルトは額に当てていた物をとって渡そうとすると、首筋に柔らかいものが小さな音を立て、声を漏らした。
『ちょ、み、水っ!み・・・っ』
「うるさいって」
発しかけた唇を塞ぐと、硬直したかのように動きを止める。
「変わってくんだ、お前の匂い」
『だ、だからって・・・っ』
自分の知らない匂いが悪いのだろうかと考え、された事に苦しくなって瞳が滲む。
「麻薬みたいに、嗅いでいたくなってくんだ…」
『・・・っ』
じっと目を覗き込んで告げれば、ナルトは黙り込みじわじわと赤くなった。
『しょっ、消臭スプレー持ち歩きます、っ』
その瞳を見ていられなくて反らした。
ずくずく痛む胸と、速まる鼓動の音が相手に届いていそうで息苦しかった。
自分の匂いでシカマルを変にしてしまった事に、ショックを受けるが
痛くて涙が出そうだった。
[前へ][次へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!