[携帯モード] [URL送信]

NARUTO


しん、と静まる室内。

サスケは本棚に寄りかかってナルトが読んでいた巻物に目を通す。

「・・・分かったのか?」

『さっぱり・・・』

戦い方なんてナルトは頭で考える方では無い。だから直ぐに飽きてしまう。

『てか、なんでサスケがここにいんの?』

「この巻物を戻しに来ただけだ」

懐から出てきた巻物をサスケはテーブルのうえに置く。

ナルトは話が出来ると思っても、言葉が上手く出てこない。

前は考えなくても出て来ていたのに。

自然と話して笑っていたのに。

どうして胸が苦しくなるんだろう。

『・・・サスケは・・・』

「あ?」

『いや、なんつーか・・・その、さ』

言葉を選んでいるのか、ナルトは中々言葉が出なくてサスケは溜息を吐く。

「お前が言いそうな事は大体見当がつく」

『・・・シカマルみたいな事言うなってば』

彼も聡く、少しの会話で理解してしまうから。

けれどナルトは俯いていて気付く事が出来なかった。

シカマルの名前が出た途端、彼の気配が変わった。

「シカマルが、なんだって?」

『・・・いや、俺はただ、サスケが・・・』

いなくなってしまわないだろうか。

この言葉が中々出てこなくて、ナルトは頭を掻く。

「俺が、またこの里から居なくならないか、だろ」

『・・・っ!!』

掻いていた手が止り、本人の口から出た言葉はナルトの瞳をジワリと潤ませる。


『だって、わかんねーんだよ、嬉しいのに前と違うから、だから・・・っ』

ぽたり、ぽたり、床を濡らす小さな雫。

なんの音もしないこの空気が苦しい。

「別に俺は居なくなったりしねえ。」

『だとしても・・・俺は不安なんだよ・・・っ』

もう、あんな想いをするのは嫌だ。

あんな別れをするのも、連れ戻せれなかった事も

なにより里の決定でサスケを始末する、と言われた事が、何よりも辛かった。

やっとできた繋がりが、絶たれてしまうんじゃないか

小さくたっていい、サスケとの繋がりがあるのならそれを大事にしたかった。

「此処にいるのにか・・・?」

『どこに居ようが、ずっと不安だったに決まってんだろ!!』

目の前にいたって、姿を消してしまうんじゃないだろうか。

ろうそくの火が簡単に消えてしまうように、サスケも見えなくなるんじゃないのか。

「だからお前はいつまで経っても、ウスラトンカチのまんまなんだ」

『・・・・・・?』

サスケからする強まった香りと、自分と違う温もり。

「これなら不安になんねえだろ」

『・・・これはまた違うんじゃねえの?』

こういうのは女にするべき事で、俺にする事じゃない。

なのに嬉しくかんじた。

「べつに間違ってはいない」

耳に届く滑らかな低音の声は柔らかい響きを帯びていて、ナルトはくらりとする。

声だけじゃなく、背中を撫でる手が、気持ちを落ち着かせてくれて、同時に気恥ずかしいきもちにもなった。

「俺はもう、居なくなったりなんかしない」

『・・・絶対?』

しない。

子供が親に聞くような声で尋ねるナルトに、サスケは苦笑を浮かべる。

彼もまた、暫く合わないうちにナルトが随分かわったものだと感じ取っていた。

「だからもう泣くな・・・」

『・・・ん。』

こくり、と頷くとサスケはナルトの頬を一撫ですれば、くすぐったそうに肩を竦める。

「ああ、そうだった、ナルト・・・」

『ん?なに・・・・むっ!?』

顔をあげれば、ちゅっ、と軽い口付けをされて目を丸くするナルト。

『おっ、おおおおっ、おまっ・・・』

驚き過ぎて言葉が出てこないで口がパクパクするナルト。

「酸素足りなくなるぞ」

『んーっ!!!』

口端を笑わせてサスケはまた口付ける。

何度も啄み、ナルトの手を握って指を絡めて。逃げないように腰を抱き寄せた。


『んっ、んん・・・まっ!』

更に踏み込まれて口づけを深めると、ナルトはそのままくたりと眠りの世界へと逃げ出した。

「――・・・ガキ」

ファーストが俺なら、セカンドも俺に決まってるだろ。

サスケはナルトを抱きしめたまま、同じように眠ってしまった。


******






誰かの方がブルブル震え、強く握り締めた拳はギリギリ音を出していた。

「どーいう事かしら、これ・・・っ」

人が心配して朝早くから来てみたら。

サクラはサスケの腕枕で眠るナルトと、それを抱きしめるながら眠るサスケをみて静かに呟いた。

「そうか、サスケはナルトが好きだった・・・ぐふっ!」

「うっさいわよ、サイッ!!」

どす、とサイの腹にサクラの重い一撃をくらわされ、もぞりと動くサスケ。

「・・・朝か」

「サスケ君、おはよう。」

引き攣る笑顔を浮かべるがサクラは我慢の限界にきていた。

「ああ、さすがに床で寝ると痛いな、身体。」

「もしかして此処で致したなんて・・・ぐっ!」

「サーイー・・・次言ったら潰すわよ」

ぎろり、と睨みつけるサクラ。

「・・・なに怒ってるんだ?」

『んー・・・、身体いてえ・・・っ』

起き上がったナルトに、サクラはどしん、と音を立てて目の前に立つ。

『あ、サクラちゃんおはよう!』

「ナルト、あんたいったい昨日の夜、此処でサスケ君となにしてたのよ・・・っ」

サスケに直接聞けばはぐらかされる事を知っているサクラは、ナルトに照準を合わせるが、明らかに動揺をして、頬が少し赤くなっていた。

「ナルトは黙ってろ、ややこしくなる」

『はあ!?ややこしくなるってなんだってばよ!』

「あんたサスケ君に何したのよっ!」

『したのはサスケの方で俺は・・・ぐはっ!』

「ややこしくなるって言っただろ・・・っ」

ナルトの胸倉を掴むサクラ

サスケの言葉に反応して文句を言うが腹を彼に殴られ、ぎゃいぎゃい騒ぐ三人。

それを眺めていたサイはくすりと笑う。

「こうだったんだろうね、きっと」

自分が来る前の、第七班というのは。

『だーから俺は何もしてねーってばよーっ!!』

「じゃあ何されたら顔が赤くなるっていうのよ、しゃーんなろーっ!!」

『ぎぃやあああああっ!!』

ドゴォ、と吹っ飛ばされたナルト。

この騒ぎは当然廊下にまで響き渡り、知っている者たちからは懐かしいとの声が溢れ、カカシもまた、目を細めていた。

「なんだかんだで、こうなるんだよね」

「カカシ先生・・・」

背後から聞こえた声にサイは振り向くと、彼はサイの肩に手を置く。

「頑張ってね。サイだって同じ第七班なんだから、あれを止められるように。」

「それは遠慮します」

サクラの拳は嫌だ。

素直な気持ち。

「ナルトの奴、心配するでもなかったんじゃねーかよ・・・」

「まあ、いつかはナルトがするだろうとは思ってたけど・・・」

「おい、その後のこれは・・・どうするんだ?」

「「第七班の連帯責任だろーな」」

ネジの呟きに、シカマルとキバが声を合わせて返した。

懐かしい光景と、懐かしいやり取り。

きっともう、大丈夫。

いなくなったりなんかしない。

だってもう、居なくなる理由なんて、無いのだから。








[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!