NARUTO
下準備は万全に r18
季節は冬に替わろうとして、風は冷たくなり日が落ちるのも早くなってきた。
これから長い冬に向けての準備を始め、もう少しで来るイベントの話もあちこちで盛り上がる。
そんな中、季節関係なく明るかった者すらも、年齢を重ねると大人しくなったもので、口を開けば寒い寒いと身体を縮ませる姿があった。
『・・・もう無理、冬眠する。』
ぶるぶる身体を震わせながらでた言葉に、前を歩いていた仲間達が飽きれた顔で振り向く。
「ナルト、あんた本当に寒さに弱くなったわねー」
「あの元気だったナルトが今じゃこうだとはな・・・」
サクラとキバがそう言葉を返したが、ナルトは反論する言葉すら言わない。
『温もりが恋しい・・・』
「お前、そう言うならサスケに言えばいいだろ」
サスケとナルトはキバが言った通り恋仲ではあるが、最近お互い忙しくすれ違う日々を過ごしていた。
『サスケならまだ戻ってこねえし・・・』
唇を尖らせて不貞腐れるナルトの肩に、サクラがぽんと手を置く。
「もう少しの辛抱でしょ。帰ってきたら甘えればいいじゃない。」
『・・・・・・。』
サクラの言葉は嬉しいのに、素直に喜べない。
恋人になったからと言って何かが変わったとは思えず、いつもと変わらないサスケの態度。
本当に自分の事が好きなのかすらも分からないが、触れてくる彼の手は優しい。
優しくて、甘い。
言葉にしなくても、そういう彼の所為で感じる事が出来るようになった。
自分を見つめる瞳、触れる手、体温。
ぬるま湯に浸かっているかのように暖かく、甘い事を。
ぶっきら棒で何を考えているのかいまだに分からない所はあるが、ナルトはサスケが帰還した時は少しでも一緒に居られればいいな、と考えていた。
『早く帰って来い、サスケ。』
夕空に向かってナルトはそう呟いた。
場所は変わり、薄暗く湿気を帯びた洞窟の中にサスケは独りでいた。
吐いた吐息は寒さで白くなり、靴音を鳴らしながらその中を歩いて行く。
時々止まっては灯りで辺りを確認し、また進む。
何かを探しているサスケの背負うリュックは任務にしては随分と膨らんでいた。
「――・・・あの寒がりの事だ、毎日言ってんだろ。」
寒い寒い、と。
ナルトの事を思い出す時のサスケの表情は普段の彼と随分変わり、どこか妖しく、艶がある。
「・・・これか。」
奥まで進んだサスケはランタンを岩の上に置いて探していた物に近づく。
少し凹んだ所には岩から伝い落ちた水滴がゆっくりと落ち、水面を揺らしていた。
その水の中に咲いている苔は美しく仄かに光っている。
サスケは小瓶を取り出して水を掬うと、ポケットの中に入れていた薄緑色の液体を数滴垂らし入れる。
透明だった水は何かと反応して綺麗な薄いピンク色に変わった。
「これで揃った・・・」
瞳を細めてサスケは口端をあげて微笑んだ。
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