NARUTO
二
白い雲が全てアイスだったのが、ぽつりぽつりと消えていく。それが不満で夢の中のナルトは、アイスアイスと叫んだ。
叫べば叫ぶほど消えていくアイス雲に、ナルトは呻き声を発した。
『ア・・・ッ、アイ・・・、ス・・・ッ!』
ぱちりと開いた目蓋。一度ため息を零し起き上がると、耳通りの良い声がナルトの肩を震わせる。
「アイスは鱈腹食えたのか?」
『は?な・・・っ!』
声を辿るとナルトに背を向けたままシャツを脱いでいるシカマルの姿に驚き、頬が熱くなった。
『なんで、いんだよ・・・』
俯き瞳をさ迷わせるナルトの胸は徐々に強く打ち始める。
引き締まった背中は無駄なものがなく、それでいてすらりとしているシカマルの背中。
どうして明日帰還する筈の彼が此処に居るのかも、ナルトには解らなかった。
「終わったからだろ、でも雨が強くなって此処に来たらお前が寝てたって訳だ。」
『そっ・・・か。』
知られていないと思っていたら、知っていたのか、と納得をする。
俯いたままなのをいい事に、ナルトはシカマルの背中を盗み見た。
(顔が熱い・・・)
何時も見る背中と違って、どこか艶めいて見えるシカマルの姿にナルトの胸は熱くなるばかり。
「アイスは、うまかったか?」
『・・・あー、雨当たったんだな、冷たかったのは覚えてる。』
ひやりとしたのが何度も顔に当たったのを。
だからそんな夢を見てしまったんだろう。どうせならもっと違う夢が良かった。
『・・・寒くねえの?』
「気持ち悪いよりはましだ。」
ナルトからすれば着てもらいたいのが本音。同性でも色香が漂っていれば刺激が強過ぎる。
「そうだった、ナルト」
『・・・なに?』
顔を上げると近くに居たのに驚くと、シカマルは小さな顔を両手に包むと深く、口づけた。
『んん?!』
不慣れなナルトの口腔はとまどうように震えて、口付けから逃れようと被りを振る。
それでも離そうとしないシカマルは、ナルトの舌を吸い上げてしまう。
『ん、あ、んー・・・っ』
舌を含ませれば、息苦しさからくる涙を浮かべ視線が重なると、シカマルの怪しく光るそれにぶるりと震える。
「・・・背中ばっか見てんじゃねえよ」
唇をつけながら告げると、ナルトの目は驚愕に震え肩を押しやろうと力を入れるが、呆気なくとられてしまう。
『んなの、しらね・・・変な事ゆってんな・・・っ』
知られる訳にはいかなくて、顔を伏せて誤魔化す。
そんな事をすれば、肯定しているのも当然で掴んだ手首を強く壁に押し付け顔を上げさせた。
『・・・いっ、て・・・んぅっ!』
噛み付くようにシカマルが口づける。どうして、と目を丸くしたナルトだったが口の中を掻き回されるうちに何が何だか分からなくなる。
ナルトからの力を奪うと、掴んだ手首はそのままシカマルの首へもっていかせた。
「・・・背中だけで、満足か?」
『ちが・・・あっ!』
強情な奴。こんなに顔を羞恥に染めて、強く打つ胸の鼓動にシカマルが気付かないはずもない。
今だけではなく、話す時は大抵顔が仄かに赤らんでいるのを知っている。
「寝てるときは、素直に指しゃぶったのにな・・・」
『ーー・・・っ』
耳元で囁く声が、ナルトの耳までも赤に染め、唇が震えた。
「ちゃんと、舌も絡ませて・・・吸い付いて離さなかったのに」
言葉に熱が集まり顔に力が入って瞳までもが潤み、頭がくらくらするナルト。
『なに、してんだよ・・・』
恥ずかしい事を。消え入りそうな小さな声はシカマルにも届き、口許が微笑する。
「なあ、背中だけで、満足か・・・?」
『・・・っ、くそ・・・っ』
言葉を区切って伝えれば、ナルトは奥歯を噛み締めてシカマルの首を強く引き込んで口づけた。
「・・・・・・」
言葉で返さず行動で返すナルトの長い睫は涙で震え、シカマルは目を細めて抱きしめた。
広くて逞しい背中が好き。
でも、もっと好きなのは・・・
色っぽくて引き締まった綺麗なシカマルの背中。
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