NARUTO
五
虚ろな目でシカマルを見下ろすナルト。
『なんで・・・』
抑揚すら無い声で呟くよう言葉にする。
『違う・・・こんなの、違う』
「ちがわねぇ」
鎖骨に噛み付けば痛みで顔を逸らす。
新たに生まれてしまった言葉をナルトは告げた。
『好きって・・・言われてねえ』
「・・・は?」
『好きになれとは言わないって、それはもうシカマルの中で諦めてるから?』
もう好きじゃないの。
呟く声に感情はなかった。
「好きに決まってるだろ・・・」
目元についた涙を拭われ、発した声は優しかった。
「ただもう、無理だったんだよ。押さえ込むのが。」
苦く歪んだ顔で告げる言葉が痛かった。
何一つ気付けなかったのだから。
『だから、痴漢?』
わりぃかよ。抱きしめられてふて腐れた声で返すシカマルに、ナルトは喉を震わせて笑う。
『俺がどれだけ怖かったか、わかってんの?』
「・・・悪かったって」
『怖くて、でもシカマルに言えたのが嬉しくて、信頼してたのに。』
自分がした事はいいおこないでは無い事ぐらい彼だって解ってる。
わかっていても、もうどうしようも出来ない気持ちがあった。
『俺、昨日はあんなんじゃなかった・・・』
「・・・そうだな」
反応はしたものの、濡れもしなかった。
ふとナルトは思った。
シカマルに対して随分甘い自分がいる、と。
あんなに怖かった筈なのに。
『俺、初体験が駅のトイレって嫌なんですけど。』
さらりと出たとんでも無い言葉に、ナルトすら驚いて口許に手をあてた。
「へぇ・・・」
『いや、ちが、違う!俺じゃない!』
言ってない!腹の中まで熱くなって、じわりと汗が浮かんでくる感覚がした。
「なら、どこがいい・・・?」
『・・・っ!』
視線を合わせて告げた言葉の意味を、ナルトはただ口をぱくぱくさせた。
『ちょ、シカマル・・・』
二人はまた電車に乗って同じ場所に立って触れられていた。
「あと少しだから待ってろ・・・」
な?指先でまた高ぶった性器を弾かれ、びくんと震えた。
『・・・っ!ふ、う・・・』
口許に手をやり堪える姿に、シカマルはぞくりとする。
学校に行くはずが、逆戻りをして中心街の駅で降りる。
手を引かれて向かった先を見てナルトはぎょっとした。
『ちょちょちょちょちょっ、おま、馬鹿かっ!』
見上げた姿に見覚えがあり、有名高級ホテルと言われている所だったからだ。
「早くいくぞ」
『行くって、シカマルなに考えてんだ!』
気にした様子を浮かべずそのままロビーへ向かっていく。
「お帰りなさいませ、シカマル様」
丁寧なホテルマンはそう言った。
ナルトはもう何が何だか解らないまま引かれ、シカマルは受付をする事無くエレベーターホールへ向かう。
『いみ、わかんね・・・』
「あ?・・・お前知らなかったのか」
シカマルも驚き顔を浮かべた。
『な、なにを・・・こんな所・・・なんで・・・っ』
混乱し過ぎているナルトは、どう言葉にすればいいのかすら解らない。
知らないとは何に対してなのかも。
何故ホテルマンが彼をシカマル様と言ったのかも。
エレベーターが来ればシカマルはカードキーを差し込んでボタンを押していた。
軽い重力を感じた後に上昇する箱の中は、大振りな鏡がある。
『・・・っ、んあっ!』
突然刺激された性器にナルトははっとした。
ぐりぐりと膝で刺激をされ、尻を揉まれナルトはシカマルの肩を押す。
『い、やだ・・・人、きちゃ・・・っん!』
口づけもされ言葉を奪われる。朝から色々ありすぎて頭がずきずきしてくる。
肩を竦めながらもシカマルの口づけを受けるナルト。
『ふ、あ・・・や、だ』
いつ止まるのか解らない。こんな姿を見られたくなくて、ナルトは身体を捩る。
「・・・こねぇよ、誰も」
『ふぅ、あっ、あぁっ!』
直接触れられ扱かれた性器に顎が上を向く。
さっきから熱の放出をされないままだったそこは、すぐに湿り気を帯させた。
「へばんな・・・」
手を抜かれ、それを見せ付けるよう舐める彼にナルトは顔を逸らし赤らめる。
ぽん、と音がして開いたドア。
広いロビーと廊下に出てシカマルは慣れた足取りで部屋へ向かう。
上質な絨毯は柔らかく、包み込まれる感覚を感じながらも彼はカードキーでドアを開く。
「・・・ナルト」
『・・・え?』
入らずに立ち止まるシカマルの声は少し強張りがあった。
「お前は俺が好きか・・・?」
『・・・あ』
シカマルの気持ちは知った。
けれど自分は言ってもない。
怖い思いを沢山して涙を流した。
ならこれくらい。ナルトはシカマルをじっ、と見つめる。
『痴漢する勇気があるなら、俺を惚れさせる力はあんの?』
「・・・はっ、言うじゃねえの」
鼻で笑いシカマルは当然と言える顔で手を差し出した。
「まずベッドの上で確認するか?」
『・・・っ、はははははっ!』
どんな誘い文句だ。
ナルトは笑わずにはいられなかった。
けれどその手を掴みナルトは頬にキスをした。
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