NARUTO 十 自分から発する匂いで関係が崩れてしまうのが嫌で、シカマルの肩を強く押す。 『い、いま誰かから香水借りてくるか、らあっ!』 「は?何他の奴の匂い付けようとしてんの」 動こうとすれば押し戻される。 冴え冴えとしたシカマルの瞳から発せられる、ひどい威圧感に、ぐっと室内の空気までもが重たくなった気がした。 『匂いで変になったんだろ?だったら消すしか無いから!』 悲しい理由が分かった。 自分に対してではなく匂いなんだと。 昔から言われていた事で、人によってそれが違うと言われた事があったのに気付いた。 「なら香水つけるの禁止にしてやろうか・・・?」 『なに言ってんだよ!』 くすりとニヒルな笑みを浮かべ頬を軽く撫で上げた。 「俺みたく言われた事、あんだろ。」 『──・・・っ』 ─私この匂いだぁいすき! 小学校高学年になって、女子に言われた事があった。 ─ナルトの匂いってさ、なんかこうギューってしたくなるな。 中学時代、男の先輩に言われた事があった。 ─ナル君はフェロモン体臭なのかもね。 父親に相談したらそう返された。意味が解らなくて聞いたら優しく笑っていたのを思い出す。 ─きっとそれはね、そうなっちゃうのはナル君の──・・・ 『ふ、う・・・っん』 「くち、あけろ」 意識が違う方へ行っていたナルトは唇を奪われた事に目を丸くし、彼の低い声にびくりとする。 頑なに閉じている唇にシカマルは指を捩込んだ。 『う、うぅ・・・や、あっ』 口を開かせられるとシカマルの舌を含ませる。 逃げようとするナルトの腰を抱き、目尻から零れた涙を眺めた。 『シッ、シカ・・・マ、あ・・・ふっ』 舌を吸われ唇を舐められると、シカマルは涙を吸い取る。 『・・・っく、バカマルっ!』 「いっ・・・!」 潤みきった瞳で睨み、足で彼の臑を蹴った。 『シカマルは・・・匂いだけが好きなのかよ?!』 「いや、そうじゃなくて俺はおま・・・いてぇ!」 言葉を遮るようにナルトは彼の太股を叩く。 『俺は・・・シカマルが好きだってば。』 「無かったろ、そんなそぶり。」 最近だし、と気恥ずかしく俯いて返す。 「ふぅん、そうか。」 頭がくらくらしながら力の抜けた身体は前へと倒れると、さらうように抱きしめられた。 「ナルトが思ってるよかずっと、俺の愛はでかいぞ」 つむじに唇を落とし、嘘くさいと思う言葉が真摯を孕むから、どうしていいかわからない。 『そんなもん、見えてないから解らないし』 涙目でふて腐れたように返すと額を弾かれる。 『いた、・・・いっ、んん!』 またやられ何をするんだと言いかけた唇が塞がれる。 「ならこれから知っていけばいい」 『そ、・・・っ』 高い音を立てて直ぐに離れた柔らかな唇から シカマルの低い声が直接そこに触れる。 「俺の愛、受け取ってくれんだろ?」 『──・・・っ、うん。』 また重なり合い、何度か啄んだあとに、そろりと舌を這わせた。 まずは、ナルトが好きになるキスを 『ん?・・・ちょ、この手なんだってば!?』 「右手の冒険者」 とろんとしていた瞳は、もぞもぞ動くもので我に返る。 苦し紛れの言葉に口端が引き攣るのが自分でも分かるが、相手はナルト。 『冒険って・・・何もないけど』 「いや、まぁそうだけど・・・よ」 シカマルは目を瞠り目の前の光景に驚く。 まさかナルトが自分からワイシャツを捲るとは思ってもみなくて。 『──・・・音、すごい?』 胸に触れた鼓動ははやく、シカマルは余裕を持ったまま両手の親指で小さな乳首をこりこりといじる。 『ふあっ!や、あ、なに・・・』 「冒険、だろ?」 甘い声にシカマルはぞくりとさせる。 違うと頭を左右に振って首に腕を回して抱き着く。 (やべぇな。なんかぐだぐたにしそう) 『やだ、誰か来きたらどうすんだよ!』 それが無ければ良しと取れる発言にシカマルの口角が上がる。 「来たって鍵してる。」 だから、と続けるように巻き付いている細い腕を解く。 そのまま上半身のボタンを外して前をくつろげる。 『でっ、でも・・・んう』 「大丈夫だから、な?」 宥める声で頬を撫でるが、自分がどこか甘ったるい庇護欲を持っていたのか、と感じる。 いちいち言葉をかけるのも、宥めたりするのも面倒とは思わなかった。 加減も知らずいいだけ甘やかして、ぐだぐだにしてしまうかもしれない。 シカマルは少しだけ自分が怖いと思った。 [前へ][次へ] [戻る] |