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真皇帝物語
5
団長がシアに向かって不敵に微笑み、同じような表情でアルベラが同調する。
当のシアは、自分に告げられた言葉の意味がしばらく理解できず、異を唱えることもなくただ立ち尽くしていた。諸悪の根源。自分が?

「……っは! おい、貴様らはいったい何を言っている。こやつが諸悪の根源だと?」

アルベラの指からなんとか逃れた蒼竜が、険呑な光を紅い瞳に宿して真っ先に問い糾す。鋭い眼光を受けてなお、団長は薄い笑みを崩そうとしない。

「ええ。私がヴィオに与えた任務は、『一人で』野盗の頭目を倒すこと。それを…」

一旦言葉を切り、細長い人差し指をシアに突きつける。

「その子が邪魔をした。邪魔さえなければ、ヴィオはきちんと任務を果たせたはずよ。彼の実力を見極めた上で、私はそういう任務を与えたもの」

「だから何だというのだ。何が言いたい」

蒼竜が痺れを切らしたように語調を強める。
それに答えたのはアルベラだった。

「うちの規則ではね、新入りは初任務をきっちりこなして初めて正式な団員になれるの。それができなきゃ話にならないから、失敗したら即刻クビ。任務の途中で死んだら当然そのままさようなら。結構責が重いでしょ? だから、これを邪魔したやつにはそれ相応の報いってやつを受けてもらわなくっちゃいけないのよ。その命をもって」

「ふざけるな。我らがそのようなことを知るはずがなかろう」

蒼竜の言葉がシアの脳裏で反響する。
そう、知るはずがない。知らなかったのだから、仕方がない。
責を問われることなど、ない。

「大体、我らは客としてここに招かれてやっていたはずだ。それだというのに報いを受けろだと? 我らを謀ったのか」

蒼竜の長い尻尾が怒りを露にするようにテーブルを打つ。その表情は尻尾同様完全に怒り心頭に達していたが、アルベラは涼しい表情で言ってのけた。

「謀っただなんて。あなた達は今でも大事な『お客様』よ」

お客様、をいやに強調して発音するアルベラに、団長が楽しげな様子で続く。

「そうね。ただし、お客だからって手厚い待遇を受けるとは限らないの。あなた達は招かれざる客、要は邪魔者なんだから」

「貴様……っ!」

辛辣な一言で蒼竜が激昂する。身体から冷気が迸り、蒼竜が触れている部分からぴきぴきと音をたててテーブルが凍り付いていく。室内の気温も一気に下がって寒いくらいになるが、団長もアルベラもそんなことはおくびにも出さない。

「あら、意外と血気盛んなのね、レイゼノーガさん」

「短気の間違いじゃないかしら団長。でも、あんまり短気起こさないほうが身のためよ?」

「どういう意味だ。我が人間ごときに後れをとると思うのか」

アルベラがにっこりと微笑む。

「残念ながらここはアタシ達のアジト。つまりアタシ達の領域。いつだって準備万端なここでは勝算はいくらでもあるってわけ。ボーヤに絆されてのこのこついてきたあなた達は完全に檻の中よ」

「それがどうした。我を見くびるな。シアよ、お前はさっさとここを離れるがいい。まとめて永久凍土と化したくは…」


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あきゅろす。
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