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03:(鋭い瞳に捉われて)

「愛ー!このまま家来るでしょ?」


「わっ!う、うん」


いきなり後ろから抱きついてきた美和に、吃驚しながらも頷くと、直ぐに笑顔が返ってきた。


「まあ、帰るって言っても強制連行だけどねー?」


「それ聞く意味ないじゃん」


苦笑しながらさり気なく美和の腕をほどき、隣に並ぶ。何だか出がけ前の二人の言葉が頭の中をぐるぐるしてる。


「だってー最近、愛ったらやたら早く家に帰りたがるじゃない…」


「!そ、そんなことないよ」


「そうだよ。学校サボった時だってさ…」


ぷぅと頬を膨らまして、あたしを見つめる美和に妙な罪悪感が生まれた。まあ、確かにあの三人が来てからは、美和達との付き合いが悪くなってる。


学校サボったのだって、あの風邪を引いた時に優しくしてくれた三人に甘えたくて、取った行動だし。もう、あの三人はあたしにとって家族の一部になりかけてるんだよね…。


「そういや、まだあの従兄とかゆーのいんのかよ」


「え、と…」


美和とあたしの後ろからいきなり顔を出した颯斗が、ふいにそんなことを言うもんだから言葉に詰まってしまった。


今後、またあんな風にはち合わせる度に遊びに来てるだなんて誤魔化しきれる訳ないし…。


「愛?」


「え、あ…いるよ。海外にいる親から連絡きてさ、従兄に面倒頼んだみたいで…」


「ふーん…」


そう言って誤魔化したあたしを訝しんで目を細める颯斗にゾクッと走る悪寒。何この感じ…。


「ヤキモチ妬くなって、独占欲強い奴だなー颯斗は」


「なっちげーよ!離せ和磨!」


「愛愛されてんねー」


「や、やだっ何言ってるのよ!」


でもそれは一瞬だった。和磨が颯斗に飛びついた事で、その悪寒は嘘のように消えて…。だけど、やっばりあたしの頭には骸さんや白蘭さんが忠告してきた言葉が反響して消えなかった。




***

「よっしゃ始めるぞー!」


「「乾杯ー!!」」


その後、美和の家で用意されていた仮装ドレスに着替えてハロウィンパーティーの開始─。


実は美和ってすんごいお金持ちだったりする…。だから毎年、ハロウィンやクリスマスなどのイベントには、美和の家でパーティーと決まっていた。だってただでご馳走だよ?来なきゃ損だね、損。


「愛可愛いじゃん」


「そーゆーのは彼女の美和に言ってあげなよ」


ジュースを持ってあたしの側に来た和磨に、そう突っ込むと、真っ赤になって反論してきた。それを見れば和磨がどれだけ美和を好きなのかが分かる。


「クス、ホント美和には弱いんだから」


「つかアイツ何の仮装してんの?」


「へ?あたしも聞かされてないんだけど…和磨も?」


ちなみにあたしは、俗に言う魔女っ子ってやつです(※格好はご想像にお任せします)楽だからね、魔女っ子。


「んー、ま、美和のことだしお姫様ーとか言ってそうだけどな」


「はは、言えてるー」


「ピンポーン!」


「「美和?!」」


あたしと和磨が話している後ろにひょっこり顔を出した美和は、赤いドレスに、頭上にはキラキラ輝くティアラを身につけていた。お世辞なしに本当に可愛い。流石本物のご令嬢。


その証拠に、和磨ったらみとれてるし、周り中の注目だって集めてる。


「和磨、和磨!どう?」


「めっちゃ可愛い」


「えへへーっ」


二人のイチャツきぶりに、邪魔だと判断したあたしは、こっそりとその場から抜けるとテラスへと出た。風が気持ちい。


「うわ、暗くなってきちゃった」


沈んでいく夕日に目を向けながら、早く帰りたい気持ちに駆られる。心配だよ、いろんな意味で家と三人が;


それに、実は内緒で今日の為にカボチャ一個丸々買って冷蔵庫に保管してあったりする。


ツナは経験あるかもしれないけど、骸さんと白蘭さんはハロウィンなんてやったことないだろうから、皆で何かやりたいなって思ったらついつい買っちゃった。


♪♪〜♪〜♪


「!…も、もしもし」


夕日を眺めながらそんなことを考えていたら、いきなり携帯が鳴り出して、慌てて電話にでる。


(愛!!直ぐ帰ってきて!)


「ツ、ツナ?!どうしたの?」


(いいから早く!家が壊れる!)


「え?!わ、分かった!今すぐ帰るから!」


ツナの慌てようと、後ろからかすかに聞こえた雑音に、ヤバいと感じたあたしは帰ろうと勢いよく後ろに振り返る。


ドンッ────


「っと悪い」


「ごめんなさいっ!…颯斗…」


あたしがぶつかって謝ってから顔を上げるとそれは颯斗で─。


「何だ、お前か」


「あ、ごめん」


「いや別に…どうした、そんなに慌てて…」


「急用で直ぐに家に帰らなきゃならなくなって」


あたしがそう言うと、颯斗はあからさまに機嫌が悪くなった。雰囲気がいつもと違う。


「急用って何だよ」


「家で何かトラブったみたいで」


「……だから?」


「痛ッ」


グッと掴まれた肩に激痛が走って、持っていたグラスを落として割ってしまった。それに賑やかだったテラスが一気に静まりかえり、あたし達に注目が集まった。


颯斗は怖いくらいにあたしを睨みつけていて、いつもの彼の面影は何処にも見あたらない。何で、急に──。


「颯斗…?」


「ちょっと、ちょっと!何してるのあんた達!」


「颯斗!何してんだ!」


それを止めに入ってくれたのは美和と和磨で、和磨はあたしから颯斗を引きはがしてくれた。


「愛、何ともない?」


「う、うん…」


美和に肩を抱かれても中々引かない震えに、美和は心配そうに背中を撫でてくれる。


「離せよ!」


「どうしたってんだよ颯斗!」


颯斗はまだ落ち着かないのか、和磨を振り払おうと暴れていた。こんな颯斗初めて見た…。


颯斗に強く握られた肩を押さえながら、暴れる颯斗を、ただ見ていることしか今のあたしにはできなかった。




....
(彼らが言っていた気をつけろは)
(この事だったんだろうか──)


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あきゅろす。
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