「よっし、ツナご飯食べて薬飲もうね」 「うん、ごめん…俺、迷惑ばっかで」 「こんなのが迷惑だって言うなら大歓迎だよ」 食卓に座ってる俺に気にするなと笑顔を向ける愛に気持ちがずっと楽になる。きっと愛だからそう感じるんだろうけど。 せわしなく動く愛の後ろ姿を見守りながら、ふと、昨夜のことを思い出していた。 *** 「ずっとついててくれたんだ…」 俺の手を握ったまま寝てる愛に、夜の騒ぎを思い出して、まだ怠い体を起こすと、近くに掛かっていたカーディガンをそっと掛けてやる。 「愛も少しは自分の体を労って欲しいものですね」 「え、あ、ありがと」 いつの間に入ってきたのか、俺に温かいココアを差し出してくれた骸に礼を言うと、それを受け取る。 「愛チャン寝てるから今から大事な話するよ」 「え─?」 「体が辛いなら横になったままでも構いませんよ」 二人が纏う空気から、それだけ重要な話なんだと悟るとそのまま、体を起こした状態で話すように促した。 「こんな時に何なんだけど、見つかったよ、帰る方法」 「え……」 持っていたカップを落としそうになるくらいの衝撃的事実に、目を見張った。 帰る方法……? こんな状況で愛を残して…帰る? 「九条夕吏より伝えられた確かな情報です。ただ、もう暫くは時間に余裕があるとのことで──」 「嫌だ……」 「「?!」」 俺は骸の言葉を遮って、否定した。けど本当は嫌なんて言ってらんないんだってことも知ってる。 俺は愛を助けたいけど、そう思う反面、自分の世界にいる仲間たちも守りたい、助けなきゃって思う。 だから一刻も早く帰らなきゃならない。本当は関係のない俺たちがここに留まる必要なんかないのかもしれないけど…。 でも、こんな大変なときにも関わらず、自分のことを後回しにして俺を最優先にしてくれる愛の優しさを無視して帰りたくなんかないっ。 それに俺っ、愛のこと──。 持っていたカップにギュッと力を入れて俯く俺に、ふってきたのは、罵声でも責めるような言葉でもなくて……。 「分かっています」 「え…っ」 ただ温かくて──、 「僕らも同じだからね」 「!…」 優しい言葉だったんだ──。 「愛に惚れたのは貴方だけではないんですから」 「好きな子を放っておけないのは当然でしょ」 「二人とも…」 溜息混じりに、苦笑しながら語る二人の声色は今までにないくらい穏やかで優しかった。 二人でも愛のことになると、人が変わったみたいに優しくなる。 それからの二人の話はこうだった。 愛と出会った日のような大荒れの天候で、近くに雷が落ちれば、非現実的な力の反動で帰れるのだ、と。 それから俺に話を聞く前に、九条さんには今の状態が片づくまでは帰れないと言っていたそうだ。 だけどそんな天候は滅多にあるものじゃないらしくて、起こってしまえば強制的に元の世界に帰ることになるだろうとも言ってた。 それまでに残された時間が二週間しかないということも──。 そう、丁度12月30日……、大晦日の前日、俺たちは帰らなきゃならなくなる。 .... (はっきり示された別れの日) (俺には受け入れることなんて) (出来なかったんだ…) |