認められた立場を喜び、次なる役目を果たすことを──… ───認め事 隼人と久しぶりに迎えた朝、今日一日身体を休めるように言われたあたしは、部屋に外から鍵をかけられて軟禁状態(笑)隼人って過保護過ぎなんだよ。 「つまんなーい……」 あたしに何度も忠告してから部屋を出て仕事に向かった隼人は、朝から一度も連絡よこさないし、お腹すいたし。 「何で鍵かかってるの」 「愛が余りにも大人しくしないから軟禁状態だと聞いたが…、鍵は預かってきたぞ」 「いいよ面倒くさい。壊せばいい」 「おい雲雀!」 扉の向こうから聞こえてきた恭弥と了ちゃんの会話に耳を澄ましていれば、了ちゃんの制止の声も虚しく、ガキッと嫌な音をたてて鍵(多分)が壊れた。隼人が激怒する様子が頭に浮かぶ。 そんなあたしの心中も知らずに、扉を開けて中に入ってきたのは、少しご機嫌斜めな恭弥と、鍵を壊したことに激怒している了ちゃんだった。…何となく異色コンビ?まあ同窓生だしそんなもん? 「愛、お前からも何とか言ってやってくれ!物は大切にしろと」 「あー、うん。…恭弥、物を簡単に壊しちゃダメだよ。でも今のはナイス判断!」 「ん、」 了ちゃんに言われて説教モードに入ったあたしだけど、鍵が壊れたことで自由になれたから今回は恭弥に感謝しなきゃね。あたしが伸ばした手とさり気なく伸ばされた恭弥の手が重なり、パンッと軽快な音を立ててハイタッチ。 その後、了ちゃんからの叱責があたしにも飛んできたのは言うまでもない。 「それで二人は何しにきたの?」 了ちゃんの怒声がやんで暫く、あたしが備え付けキッチンで淹れてきた紅茶を飲みながらここにきた経緯を二人に尋ねた。きっと何かあったんだろうから。 そのあたしの問いに、紅茶の入ったカップを置いて真剣な顔になる二人に、あたしもカップを置き、姿勢を正すと、二人を見返した。 「愛の役職が回復したから、知らせにきたんだよ」 「回復…?」 最初に口を開いたのは恭弥で、あたしの前に一枚の書類が置かれた。それはあたしがボンゴレに迎えられてから作られた個人データの一部。 それを手に取りよく見てみれば、数週間前にツナさんの秘書から外されていたあたしの役職が回復していることが記載されていた。それから……、 『再任:沢田綱吉専属秘書』 『退任:仮婚約者の任』 『認可:獄寺隼人との関係』 「?!───」 書類を見て目を見張った。だって役職が回復しただけじゃなくて、仮婚約者の任からおろされてるし、隼人との恋人関係が許されて……、 「以前に沢田が何故、お前を選んだのかと、聞いたことがあった」 「え──?」 ─「え?愛を選んだ理由?」 ─「愛はいい奴だが、実績があるわけでもないだろう」 ─「守護者皆と分け隔てなく関われる子だと思ったから。あの隼人さえ口で勝てないなんて中々いないかなって」 ─「そうか、流石沢田だな。いい人材を見抜く目を持っている」 ─「そんな大したモノないです。ただ愛に惹かれただけだから」 了ちゃんは優しい笑顔をあたしに向けて、くしゃっと頭を撫でると、よく今まで頑張ってくれた。と囁いてくれた。とても安心する声色で──。 「これで君の恋愛は自由になったわけだけど、今回の騒動が生んだ被害はかなり大きいんだよ」 心落ち着く暇もなく、険しい表情をした恭弥が淡々と紡ぐ言葉の重みは、あたしが一番よく分かっていた。 「淋……」 「ああ、そうだったな…」 「綱吉はまだ心神不安定だ。彼女がボンゴレを抜けてすること、君は分かってるんだろう?」 淋がボンゴレを抜けたのはリボーンさんから聞いて知ってる。その穴が今のボンゴレに少し痛手だったことも。原因があたしと隼人であって、上層部にいらぬ混乱を招いたことも…。 そして淋が、彼女があたしを地獄に落とすためにどうするのかも、誰を狙うのかも分かってる。それを片づけなきゃならないのが、仮婚約者の任を降りるあたしの役目なんだろうから。 「分かってる」 あたしは真っ直ぐに恭弥を見つめて、頷いて返した。あたしが何とかするという意を込めて。 「それから愛、沢田が一度話をしたいと言っていたのだが…」 「これから向かうよ。──あたしも、ツナさんに話があるから」 「分かった。そう伝えておく」 あたしが何の躊躇いもなく頷けば、ホッとしたように笑ってくれた了ちゃんと、話は終わったとばかりに立ち上がった恭弥に、あたしも立ち上がり彼らに深々と頭を下げた。 「了ちゃんも、恭弥も、ありがとう」 「「──、何のこと(だ)?」」 あたしがお礼を言って直ぐ、全く同じ反応を示した二人から上がった声はほぼ同時だった。しかも同じこと言ってるしね。 「ちょっと、何真似してるのさ」 「それはこちらの台詞だ!」 「クスッ」 似たもの同士──、 それって二人のことを言うのかもね。 .... (まだ諦めきれた訳じゃない…) (だけど、こうでもしなきゃ) (諦めつかないから……) (心の中ではもう少しだけ) (君を想うのを許してほしいんだ) |