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Dear me, From me
9
 暫くすると、秀也は傘を手に戻ってきた。服の下はパンとミネラルウォーター。冷えた水が秀也の腹部を冷やし、体温を奪う。少し冷たすぎただろうか。それを皿の上にあけて目の前の友達に差し出した。パンはちぎって水で柔らかくして別の皿に置いた。子犬は皿にあけられたものを見るなり飛び付いた。勢いよく水が跳ねた。よほど空腹だったらしい。その様子を秀也はじっと見つめている。彼の頬は心なしか緩んでいるようにも見えた。
「・・・コロ」
秀也の口から音が零れた。ぽつりとつぶやかれた言葉に茶色の生き物は反応する。
「君の名前は、コロだよ。」
秀也はじっと目の前の子犬を見つめた。子犬と瞳がかちあう。ふわふわと尻尾が緩く揺れる。長く降り続いた雨はいつの間にか小雨に変わっていた。

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あきゅろす。
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