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Dear me, From me
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 家に着くと、そのまま玄関には行かず、庭の方へ回っていった。庭にはちょっとした倉庫がついていて、そこがちょうど死角になっていた。この場所なら、雨にも濡れないし、見つかりもしないだろう、と考えたのだ。
「おとなしくしててね。お母さんに見つかっちゃうから。」
秀也はそう言うと、子犬を倉庫の陰に降ろした。子犬はくりくりとした目で秀也を見上げた。雨に濡れた体は未だに震えている。秀也はポケットからハンカチを取り出すと子犬の水滴を拭っていった。
「今食べるもの持ってくるね。」
声をひそめて子犬にそう告げると、秀也は玄関に回って家の中に入っていった。

 子犬を連れ込んだことがばれてしまえば母親に怒られるだろうということは容易に想像がついた。何だかいけないことをしているような気もしたが、今の秀也は子犬を見捨てる気には到底なれなかった。彼を見捨てることはすなわち自分を見捨てることなのだと、何の根拠もなかったが、そう思えた。

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