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雪舞う聖なる夜(紅蓮赤香さま誕生日プレゼント)

 平和を愛する神が生まれた今日。愛する人と共に過ごす今日。
 けれど愛する貴方には、もう私の手では届かないの?


 雪舞う聖なる夜


 へっぷしゅん!
 あ゙ー、だるい。本当にだるい。
 俺はマフラーに埋もれて、手袋をしてても冷えてしまった指先を擦る。……あ、思えば手袋もまた黒だ。うーん、無意識に黒系統買っちゃうんだよなあ。まあ、買ってしまったものは仕方がない。
 しかし今日は本当に寒い。雪でも降るんじゃないだろうか。
 この町は別に寂れても栄えてもなく、行き交う人も多くもなく少なくもなく。これがフィルミーだとかラスヴィルクなら、人の熱でもうちょっと暖かかったかもしれない。
「ずいぶんと色気のないくしゃみね」
「くしゃみに色気とか関係ないでしょ。それ以前にさ、色気あっても困らない?」
 俺は隣をあるくリースの言い草に、そうやって突っ込んだ。寒いので覇気がないのはあしからず。
「まあ、ガキだからな」
「関係ないだろそれは!」
 後ろを歩くユールの言い分は明らかにおかしい。
 俺はそれにいらいらとさせられながら、第一、と彼を振り返った。
「色気のあるくしゃみなんてある? いや、断じてない」
 あったら聞いてみたいものである。
「え、あるでしょう?」
 しかしなんと、リースは不思議そうに首を傾げた。事もあろうか、ユールを見て同意まで求めている。
 いやさすがにそれは
「ああ、あるだろ」
 そっか、そうだね、うんあるよね。
 俺はいつもどこかで通じ合っている二人からとぼとぼ遠ざかりながら、道の端を歩くことにした。二人ってどんな生活してきたんだ? ほんと。

 ◆

 しばらく二人から離れて道の端を歩いていると、路地の向こうから泣き声が聞こえて来た。
 俺は思わず歩みを止めて目を向けた。お店か何かの裏口なのだろうか――扉の脇に積み上げられたごみ箱の隣に、うずくまる少女が居る。気づけば、いつの間にか足はそちらに向かっていた。
 こつり。音を立てて立ち止まっても、少女は顔を上げない。
 薄汚れた白いワンピース。けれどもその肌は抜けるように白く美しく、そしてまた顔を隠す金色の長髪はまるで汚れを知らなかった。
「どうかしましたか?」
 俺は少女の前に跪き、そっとその面を伺う。
 すると肩を震わせ泣き声をこぼしていた彼女は、びくりと体を振るわせた。恐る恐る顔を上げた少女の瞳には、警戒と不安の色がありありと見て取れる。
 こんな日に女性にこんな顔をさせるのはよくない。俺はそっと笑みを浮かべ、肩を竦めた。
「こんな所であなたのように可愛らしい方が泣いているのを、どうにも放っておけません。だから僕と一緒に暖かい所へ行ってはくれないでしょうか?」
 ちょっと気障りな言い方だったかもしれない。でも仕方がない。だって今日は十二月二十四日という、聖なる日なんだから。
「可愛らしくなくてごめんなさいね」
 と、大通り側である右手から聞き慣れた声がする。
 俺の脳は瞬時に今の状況はやばいという結論を弾き出していて、自分の考えが及ぶ前にぶんぶんと勢いよく首を振っていた。
「い、いや……ごめん何も言わなかったのは悪いとおもっ」


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あきゅろす。
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